「国がもっと全力でサポートしてくれるような姿勢を見せないと厳しい」
続いて話を聞いたのは、ミナさん(仮名・25歳)だ。
ミナさんは3か月前に結婚したばかりだというが、子どもを持つことについてはパートナーと話し合い、現状考えていないという。
「子どもが欲しくない理由としては、経済的な余裕がないということが大きいですね。いまの稼ぎでは夫婦二人で生きていくことでやっとなので…。
私は親のお金で私立の大学に通わせてもらって、パートナーも大卒で、留学経験もあり、不自由ない暮らしをさせてもらいましたが、自分たちがそういった子育てをできる自信がないんです。
加えて、最近は子どもに対する性犯罪も多いですし、競争社会も激しくなっているなかで、子どもを幸せにしてあげられる自信がないというのも理由の一つですね」(ミナさん)
またミナさんは、現在の国の政治の在り方にも疑問を感じるという。
「私みたいに経済的な理由から子どもを産むことを躊躇する人たちはたくさんいると思いますが、現在の国の子育て政策はちょっと見当違いだなって感じることが多いんです。
もっと国が全力で子育て支援のためにお金を使ってくれるような姿勢を見せてくれないと、子どもを育てたいっていう若者は増えないんじゃないかな。
あとは、男女ともに育休を取りやすい職場環境を整えることなど、制度的な部分の改善もしなきゃいけないと思います。
子育てしている友人の話を聞いていると、大変そうで、自分は体力的に無理だって感じてしまうので、男性も育児に積極的な社会になって欲しいです」
そんなミナさんは、若者の意見をもっと政治に反映させて欲しいと、選挙では欠かさず投票に行くそうだ。
若者の投票率が低いことについて「同世代として悲しい」とも語ってくれた。
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子どもの大事な学校行事も参加できない…
日本で子どもを産んで育てることの難しさ
最後に話を聞いたのは、付き合って3か月目だというミレイさん(仮名・22歳)とシュンさん(仮名・23歳)の二人。
二人はいつか結婚して、子どもを育てることに憧れがあるという。
「もともと子どもが好きで、自分の子どもならもっとかわいいと思うし、いつか欲しいですね。
女性なら30歳までには子どもを産みたいなって、なんとなくの理想みたいなものがある人も少なくないと思うんですけど、私もいまは仕事を頑張りつつ、20代後半になったら産みたいなって考えています」(ミレイさん)
夫のシュンさんは台湾出身で、台湾の親戚や友人の多くが若くしてすでに子どもを産んで育てているそうだ。
「僕は24歳ごろには父親になりたいという明確なビジョンがあるんです。子どもがいる周りの親戚や友達の様子を見ていると幸せで楽しそうだし、自分も早く子ども欲しいなって考えに自然となりました。
自分のこれまでの経験を尽くして、自分の手で子どもを育てたいです。だから育児は僕が積極的にするつもりです」(シュンさん)
若くして子どもを育てたいと考える二人だが、自由な時間がなくなることや、お金が必要になるといった、子育てにおける苦労についてはどう捉えているのだろうか。
「お金を稼ぐのも、子どものためなら苦労に感じないんじゃないかな。逆に子どもがいるからこそ、いまの何倍も頑張れると思うし、子どものために頑張ること自体が幸せなことなんじゃないんですかね」(シュンさん)
一方、ミレイさんは日本における子育ての大変さや嫌な部分についてこう語ってくれた。
「日本だと男性が仕事で育休を取りづらい雰囲気がありますよね。
例えば、運動会など子どもの大切な学校行事でも、仕事を優先させるお父さんってけっこう多くないですか? 子どもの行事は1年のうちでその時にしかない大事なイベントなのに…。
私はバリバリ働きたい派なのですが、本当に理想なのは仕事も子育てもバランスよくできて、夫婦でお互い助け合う子育てができること。
でも、今の日本だとそれが難しいのかなって感じてしまいますね」(ミレイさん)
――全員に共通していたのは、日本が子育てしづらい環境だという意見だ。経済的な部分も含め、根底にある性役割や職場環境などを改善しなければ、明るい未来は見えてこないのかもしれない。
取材・文/瑠璃光丸凪/A4studio