〈HIKAKIN進化論〉カップラーメン好きの「ビートボクサー」がYouTubeの帝王になるまで…進化とともに「長尺化」する動画の秘密

エンタメ要素の強化と多様なジャンルへの拡大(2014年〜2017年ごろ)

2014年以降、HIKAKINの動画にはさらにバラエティ要素が強まり、DIY、ガジェット紹介、旅行、食べ物など多様なジャンルに挑戦していく。

なかでもHIKAKINが幼少期に影響を受けた「コロコロコミック」的なホビー文化の反映、そしてテレビ番組的な企画構成と演出が強まっていく点に注目だ。

YouTuberへの注目度が高まるにつれ、HIKAKINのテレビ出演も増えていくことになるが、この時点でその片鱗は十分に見えていた。というか、そもそも彼のスタート地点には「ハモネプ」があることを忘れてはならないだろう。

 「風呂で氷漬けになってみた!ロッテ爽キャンペーン!」は、そんなHIKAKINのスタイルと、当時流行した「メントスコーラ」的な体当たり感がミックスされたヒット動画だ。

そして動画の尺だが、ロッテとのタイアップである本動画は8分超え。

同時期の「ガリガリ君リッチナポリタン味でナポリタンスパゲティ作ってみた!」は13分超の動画となっている。

これは視聴者が「一緒に楽しむ」ようなエンタメ動画が増加したことも影響しているだろう。あのカラフルなソファーが象徴するように「HIKAKINと共に過ごす時間」そのものがエンタメであるというフォーマットへと進化していったのだ。

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YouTube Kids市場とファミリー層へのアプローチ(2017年〜2020年ごろ)

2017年前後から、YouTubeではキッズ向け・ファミリー層向けのコンテンツ拡充が進み、HIKAKINもその波に乗る形でファミリー層へのアプローチを明確化していった。

これまでも親しみやすい印象を築いてきた彼だが、この時期にはより「家族がリビングで一緒に楽しめる」エンタメの方向性を強調。言動や表現は過激さを抑え、安心感のある語り口や企画構成で、小さな子どもから大人まで幅広く受け入れられる空間を作り上げていくことになる。

特にこの時期に伸長したYouTube Kidsという専用アプリの存在や、子ども向けクリエイター支援策など、プラットフォーム側の後押しも大きかった。

こうした環境の中、HIKAKINは「子どもが真似したくなる」小ネタや視覚的にわかりやすい演出、そして親子でほほ笑みながら見られる工夫を組み込み、視聴時間そのものをエンターテインメント化。ファミリー層との「共に過ごす時間」の創出によって、ますますチャンネルの存在感を高めていった。

その延長にあるのは、それまで家族団らんの時間/リビングの中心にあったテレビ番組だ。