FIAのガバナンス再編にコ゚ーサイン。モハメド・ベン・スレイエム会長への”集権化”進む

 ルワンダで開催された総会でFIAの規約変更が認められ、FIAの倫理委員会と監査委員会の役割に影響が及んだ。

 以前motorsport.comが報じたように、新たな案では倫理委員会がFIA会長と議長に報告を行なうことになる。つまり、FIA会長と議長が倫理調査に関する権限を握ることになる。

 また、監査委員会が独自に財務問題を調査する権限も削除され、現在は「議長から要請があった場合」のみ必要とされる形に変更された。

 FIAは規則を変更する主な動機として3つの理由を挙げ、その中にはメディアへのリークを阻止するためという理由も含まれている。

 倫理委員会に関連する変更についてのFIAの声明は次の通りだ。

「第一に、倫理委員会の運営におけるFIA管理部門の関与を減らすことで、倫理委員会の独立性を維持・強化することだ」

「倫理委員会は以前は会長にのみ報告していたが、現在は会長と上院議長の両方に報告している」

「委員会は現在、調査を開始するかどうかを独自に評価する権限を有している」

「第二に、倫理委員会報告書を含む機密事項のメディアへのリークが続いた結果、倫理委員会報告書の配布を制限することが提案された」

「これは会長または議長が、議員やFIAの他のメンバー、あるいはそのスタッフを巻き込んで、倫理委員会からの勧告について議論したり、実施したりすることを妨げるものではない」

「最後に、倫理委員会の報告書には、犯罪や保護に関する問題を含め、機密事項が含まれていることが多い。したがって、この情報を複数のメンバーやFIAスタッフと自動的に共有することを制限する必要があった。報告書の配布を制限することは、申立人と調査対象者を保護することにもなる」

 監査委員会についてFIAは、「議会の諮問機関」として機能すると述べた。

「今回の改正の目的は、監査委員会が議会の諮問機関であり、FIA規約の範囲内で運営されることを明確にすることである」

「提案されている改正案は、監査委員会が議会の支援機関であり、監査委員会の内規は将来的に議会によって承認されることを明確にするだけである」

「監査委員会は議長から要請があれば、それを支援し調査する権限を保持する」

 この改正案は複数のチーム幹部から批判を浴び、世界モータースポーツ評議会のイギリス代表を務めるデビッド・リチャーズと、オーストリアのモータースポーツ連盟のトップであるオリバー・シュメロルドも、FIAの指導者が悪質なガバナンスの責任を問われないようにするこの提案に懸念を表明していた。

 一方でFIAの財務状況は大幅に好転。2021年の営業成績がマイナス2400万ユーロ(約39億円)だったのに対し、2024年には220万ユーロのプラス。べン・スレイエム会長はこれが組織改革に取り組んだ成果だと謳っている。

「この成果は、ガバナンスと財務の分野で組織改革に取り組んだ結果である」

 そうベン・スレイエム会長は語った。

「FIAの新指導部は、2022年に持続不可能な財務状況を引き継いだ。我々は多額の赤字を削減するために懸命に働き、連盟の全体的な財務状況を安定させた」

「FIAをより持続可能な財政基盤に乗せ、加盟クラブを支援するという本来の目的を果たすため、コスト抑制策と収益創出策を実施してきたんだ」