こんな旅行はイヤだ!『スピーク・ノー・イーブル』に通じる、「旅先でひどい目に遭う映画」たち

ハリウッドのホラーシーンをリードするスタジオ、ブラムハウスの最新作『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』(公開中)。ロンドン在住のアメリカ人一家が旅先で出会ったのは、イギリスの田園地帯に暮らすある英国人一家。アメリカ人の家族はイギリス人家族の誘いに応じ、彼らの家に遊びに行くが、それはやがて悪夢の週末旅行へと変貌する…。


ダルトン家を自宅に招待したパディ家(『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』) / [c]2024 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.
楽しいはずの旅行が楽しくないどころか、恐ろしい事態へと突入していく戦慄。映画の世界では、そんなストーリーが多く語られてきた。そこで本稿では『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』に負けず劣らず凄まじい、旅行残酷物語をセレクト。映画ファンならば一度は観ておきたい怪作ぞろいなので、ぜひチェックしてほしい。

■若者たちが迷い込んだのは殺人一家が暮らす屋敷!『悪魔のいけにえ』

まずはホラーの定番中の定番『悪魔のいけにえ』(74)。車でテキサスを旅行中の若者5人組がガス欠の不安を抱え、人里離れた屋敷にたどり着く。ところがそこに住んでいたのは、クレイジーな殺人鬼一家!とりわけ一家の四男坊レザーフェイスはその名のとおり人皮マスクを装着し、巨体でチェーンソーを振るう壮絶キャラ。5人の若者たちは瞬殺されたり、生きたままフックに吊るされたりと、大惨事に見舞われる。車で旅行をする際は、面倒くさがらずにガソリンのチェックを頻繁にしておくことをオススメしたい。


【写真を見る】人里離れた屋敷に住んでいたのはクレイジーな殺人鬼一家だった…!(『悪魔のいけにえ』) / [c]MCMLXXIV BY VORTEX, INC.
■バックパッカーの若者が拷問にかけられる…『ホステル』

ホラーの鬼才、イーライ・ロスが手掛けた『ホステル』(05)でも、悲惨な目に遭うのは若者たちだ。ヨーロッパを旅行中の若きバックパッカーたちが色事に目がくらみ、美女が集うというホステルに身を寄せる。それが彼らの運の尽き。拉致された若者たちは、金持ち相手に拷問や殺人を楽しませる極秘レジャーの標的となってしまった!サディストの餌食となり、アキレス腱を切られたり、指を切り落とされたりなどの拷問は、まさに生き地獄。旅先では開放的かつ奔放になりがちだが、下半身の節度は保っておきたい!?


旅行中の若者がサディストの餌食になってしまう『ホステル』 / [c]Everett Collection/AFLO
■スウェーデンの夏至祭を訪れた若者が笑えない状況に…『ミッドサマー』

若者たちのトラベルストーリーをもう一つ。21世紀の定番ホラー『ミッドサマー』(19)は、スウェーデンからの留学生に誘われ、夏至祭を控えた彼の故郷の村に遊びに行ったアメリカ人大学生たちの恐怖奇談。その村には特殊な信仰があり、村人は一様に白のセットアップやワンピースを纏っている。夏至祭に向けて様々な儀式が行われるなか、ヨソ者たちは一人、また一人と消えていく!最初のうちは儀式を茶化したりしていた大学生たちも、しだいに笑えない状況に追い込まれていくのだからたまらない。まさに“好奇心が猫を殺す”という状態に陥っていく。


スウェーデンの夏至祭で行われる恐怖奇談を描く『ミッドサマー』 / [c]Everett Collection/AFLO

■急速に老いるビーチを訪れた家族の運命は?『オールド』

次に家族旅行でとんでもない目に遭うパターンを。M.ナイト・シャマラン監督による怪作『オールド』(21)の舞台は、風光明媚なリゾート地。2人の子どもを連れてこの地を訪れた夫婦はホテルのマネージャーの勧めで、岩壁に囲まれた美しいプライベートビーチを訪れる。数組の観光客と共に、はじめは海水浴を楽しんでいたが、異変はすぐに起こる。身元不明の死体の発見、老女の急死、そして子どもたちの急成長。実は、このビーチは24時間で50年の時が経過する特殊な場所だった!来た道からは帰れず、岩壁を登ることもできず、ここはまさに大自然の“密室”。急速に訪れる死を待つしかないのか!?旅先ではくれぐれも甘い言葉に用心を。


ビーチで正体不明の死体を発見(『オールド』) / [c] 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.
■休暇中の家族が生死を懸けたゲームを強いられる『ファニーゲーム』

最後にミヒャエル・ハネケの問題作『ファニーゲーム』(97)。休暇中の家族の別荘に、2人の若い男が「卵を分けてほしい」とやって来る。2人は一見爽やかなのだが、挙動は少々不審だ。やがて本性を露わにした彼らは暴力を振るって一家を人質に取り別荘に立てこもり、朝までに生きていられるかどうかという恐ろしいゲームを強いる。家族の善意に乗じて支配的な行為に走る男たちの悪意。いや、家族の間にさえ本当に善意があるかどうかは怪しい。そんな疑心暗鬼と暴力性が観る者の心理を擦り減らす。ちなみに、『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』の元ネタであるデンマーク映画『胸騒ぎ』(22)のクリスチャン・タフドルップ監督は、本作に影響を受けて『胸騒ぎ』を撮ったことを公言している。


人質となった家族が生死を懸けたゲームを突き付けられる『ファニーゲーム』 / [c]Everett Collection/AFLO
■旅先で意気投合した家族にまつわる真実とは?『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』

ほかにも悪夢的な旅行映画はたくさんあるが、これらの作品で描かれる極限状態は緊張感が尋常ではなく、大いにゾワゾワ、ヒヤヒヤさせてくれる。もちろん、『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』も同様だ。イタリア旅行中のロンドン在住のアメリカ人、ベン(スクート・マクネイリー)とルイーズ(マッケンジー・デイヴィス)、娘のアグネス(アリックス・ウェスト・レフラー)のダルトン家。旅先でイギリスの郊外で暮すパディ(ジェームズ・マカヴォイ)とキアラ(アシュリン・フランチオージ)、その息子アント(ダン・ハフ)ら3人と出会い、すっかり意気投合する。旅行から帰って来て数週間後、パディ家から「ぜひ遊びに来て!」の招待はがきが届く。少し迷いながらも一家が暮らす人里離れた農場へ向かうベンたちだが、歓迎を受けつつも用意された部屋は汚れており、ベジタリアンのルイーズに半ば強引に七面鳥を薦めるなどどこか違和感が…。やがてダルトン家はパディ家にまつわる驚愕の真実を目の当たりにしてしまう。


帰ろうとしても引き止められてしまう(『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』) / [c]2024 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

旅先ではなにが起こるかわからないもので、最悪の事態を想定しておくに越したことはない。これらの作品は、本当の意味での旅の”最悪”を教えてくれるに違いない!?

文/相馬学