F1メカ解説|RBがシーズン最終戦に投入した”2025年に向けたテスト”用フロントウイング。その狙いは?

 RBは2024年のF1最終戦アブダビGPに、新型のノーズとフロントウイングを投入した。この新型パーツは2025年に向けたテストという位置付けのモノだが、一体どんな意図があったのだろうか?

 年間の予算上限が決められている昨今のF1では、シーズン最終戦にアップデートパーツを投入することは稀である。基本的には、それまでの段階でシーズンの開発予算はほぼ使い切っているのが常だからだ。

 しかしRBは、アブダビGPに新型のノーズとフロントウイングを持ち込んだ。チームの説明によれば、2025年用のアイデアを先取りしたモノだという。

 この新型ウイングとノーズは、金曜日のフリー走行で短時間だけ使われ、巨大な計測装置をマシンに取り付けて従来仕様との比較データを収集していた。当初は決勝でも使う可能性があるとされていたが、実際には使われず。土曜日以降従来仕様のウイングとノーズに戻して走行が続けられた。

 さてこの新型ウイングとノーズは、かなり大きな変更が施されたものだ。チームは様々な条件下でウイングとマシンのパフォーマンスを向上させるため、多くの設計変更を実施。バランスの向上を図った。

 フロントウイングの一部を変更するためには、ノーズの変更も必須だった。

 従来型との最も大きな違いは、フラップがノーズの側面で接続するスペースが広くなったため、フラップの車体中心側の部分の設計が完全に見直されたことだ。ただメインプレーンの形状も変更。メインプレーンの中央部分の前端は、これまでは上方に持ち上げられていたが、新型では下に下がる形になった。

 フラップの前後長も長くなり、以前はメインプレーンが占めていたスペースにも侵入。ただそのメインプレーンの前後長は、翼端部分では維持されており、代わりにこの部分の2番目フラップの前後長が短くなっている。

 この変更は、翼端板との接続方法を変更することに関係している。この翼端板との関係で言えば、3枚のフラップはほんの僅かなエリアでしか繋がっていないが、メインプレーンはしっかりと接続されるようになっている。

 フラップの翼端板との接続は、形状こそ従来のモノに似ているが、気流を車両の側面に向けて導く”アウトウォッシュ”効果を発揮することが目指されているようだ。特に最も後方のフラップの接続箇所の形状は外向きの傾向がより強調されていて、アウトウォッシュ効果を増大させているように見える。

 なお従来仕様では、翼端板の内側に小さなカナードが存在していたが、新型ではこのカナードが削除。メインプレーンとフラップによって、気流のコントロールができるようになったようだ。

 翼端板自体の形状にも変更が施された。従来型は、非常に角ばったデザインだったが、新型ではこれはより丸みを帯びた形状となった。

 翼端板外側に取り付けられているダイブプレーンは、シンプルな半円形の形状から、S字型の少し複雑なデザインに変更になった。さらに赤外線カメラの位置が以前よりずっと後方かつ低い位置に変更されている。