86年、三遊亭円丈が上梓したのが「御乱心 落語協会分裂と、円生とその弟子たち」。落語協会分裂騒動を赤裸々に描いた本作は名著として名高い。

 読みどころは進路の決断を迫られて師匠・三遊亭円生とおかみさんに「恩知らず」「義理知らず」と交互に罵られた件と、円生の一番弟子・五代目三遊亭円楽の「自分は絶対に間違っていない」という全知全能の神っぷりだろう。

「『御乱心』は面白い本ですよね。円丈さんとはテレ朝の『プレステージ』で一度だけ共演したことがあります。頭の切れる方で、ファンキーで媚びない姿勢を見て落語家を目指した人は多かった。落語協会の分裂はプロレス団体の分裂騒動と似てますよね」(亀和田氏)

 プロレス本でディープなインパクトを与えたのは、タイガーマスクとしてプロレス界に一大旋風を巻き起こした佐山聡(67)が書いた「ケーフェイ」だ。発売と同時に購入した亀和田氏が振り返る。

「まずその刺激的なタイトルですよね。プロレスラーが聞かれるとマズい会話に他人が入って来ると〝ケーフェイ〟と合図して話題を変える。フェイクの逆さ言葉のプロレス界の隠語です。実際に佐山がザ・タイガー、スーパータイガーと名乗っていた第一次UWFの試合を見に行きましたが、ロープに走らないんですよ。日本のプロレスは変わったと思いましたね」

「ケーフェイ」の中で佐山は〈プロレスの専門誌で読んだが『ロープに飛ばされると一種の催眠術にかかったような状態になる』と馬場さんは言っていた。新日本でプロレスをやっている時はそうだった。でもそれは催眠術にかかったわけではなくて、自分からロープに走ったんだ。自分の意志でね〉と綴っている。

「佐山さんは今もプロレス界にいるし、あの頃、一番輝いてたプロレスラーだからね。革命児やもん。『ケーフェイ』を書いたからってタイガーマスクの功績は消えない。ミスター高橋さんは『流血の魔術 最強の演技 すべてのプロレスはショーである』を書いたけど、それによって猪木さんがどうなることでもない。『猪木VSアリ』がある限り何があっても揺るがないのよ。アリ戦に勝るものはないから」(マグナム氏)

 ボンバイエ! これぞ観衆を虜にした猪木マジックだった。

(つづく)

【写真ギャラリー】大きなサイズで見る