今年の秋から冬にかけて感染拡大しているのが、マイコプラズマ肺炎だ。子供がかかりやすい細菌性の感染症だが、まったく同じ名称の性感染症が存在するのをご存じだろうか。どんなに人肌恋しい季節だとしても、せめて0.01ミリのディスタンスは確保してほしい。後で泣きを見るのは自分なのだ!

 まず断っておく。マイコプラズマ肺炎とマイコプラズマ性感染症はまったくの別物である。東京・渋谷にある性感染症専門クリニック「ペアライフクリニック」の永井良総院長が解説する。

「人体に感染するマイコプラズマは数種類存在します。肺炎の場合は『マイコプラズマ・ニューモニエ』という細菌が肺や気管支に感染して発生したもの。一方、性感染症は『マイコプラズマ・ホミニス』と『マイコプラズマ・ジェニタリウム』の2種類に大別されます。いずれも、性の器官周辺に感染して炎症を起こしてしまうのです」

 そもそも性感染症としての知名度は、HIV、梅毒、クラミジア、淋病に比べるとはるかに劣る。

マイコプラズマ自体は100年以上前から存在する菌ですが、ホミニスで約90年、ジェニタリウムで約40年の歴史しかありません。特にジェニタリウムは90年代頃からようやく研究論文が出てきたぐらいで、あまり治療のデータもない。医師の中でも、その存在をきちんと認識できていない人が少なくありません」

 その代表的かつ最悪な症状が尿道炎である。

「男性の器官にジェニタリウムが感染してしまうと、体内の免疫との闘いによって炎症が生じます。最初はムズムズする程度ながら、4~7日の間に違和感がチクチクとした痛みに変化。排尿のたびに焼けただれるような感覚を覚えてしまい、排尿障害にまで発展してしまいます。淋菌やクラミジアなどの尿道炎の症状と同じです。免疫の戦いで生じた白血球の死骸として出る膿の粘度は、淋病のドロッとしたものとは違って、サラサラした透明色の膿になります」

 厄介なのが「無症状」のケースもままあること。とはいえ、そのまま放置しておいてもいいことは何ひとつない。

「男性の場合は『急性細菌性前立腺炎』『急性精巣上体炎』のような不妊につながる疾患になりかねません。同様に感染がすなわち『精の運動能力を低下させる』という研究結果もあります。ただし健康保険の縛りで、淋病やクラミジアと同時に検査ができません。そのため、いずれも陰性という結果が出てしまえば、性感染症は完治したと認識すると思います。繰り返しになりますが、医師の中でも馴染みの薄い感染症だけに、スルーされてしまう可能性も否定できません。とりわけ、違和感や痛みが生じたとしても、軽度か無症状なので、無自覚なままに感染していることも珍しくありませんからね」

 そのまま数カ月から数年放置されてしまうケースも‥‥。一方で、悲しい思いをするのは男性よりも女性かもしれない。

「子宮から卵巣まで感染症が到達してしまうと『PID』という骨盤内の重篤な炎症が広がってしまいます。もちろん、こちらも不妊につながるデータがあります」

 絶対に最愛のパートナーに持ち込んではならないのだ。

【「マイコプラズマ性感染症」チェックシート⑨】

セルフチェックで5点以上は近くの医療機関へGO!

①不特定多数と性行為をしている 1点
②何だか男の器官がムズムズする気がする 1点
③ピンク店でゴムを付けない 1点
④男の器官周辺に痒みが生じる 2点
⑤おりものが多い(女性の場合)2点
⑥“タマ”が痛い 2点
⑦淋病あるいはクラミジアに感染している 4点
⑧性の器官から膿が出る 4点
⑨尿道が焼けるように痛くて排尿もできない 5点

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