FIAはドライバーによるいわゆる“Fワード”の使用を今年厳しく取り締まってきた。ドライバーからは反発もあるが、メルセデスのトト・ウルフ代表はこの取り締まりには賛成のようだ。
2024年にF1パドックを騒がせてきたこの問題は、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がシンガポールGPの木曜会見で放送禁止用語を使用したとして、FIAから社会奉仕活動を行なうよう罰則を科されたことが始まりだ。なおこれにはFIAのモハメド・ベン・スレイエム会長の意向もあると見られている。
これを不服としたフェルスタッペンはその後のグランプリで、FIAの記者会見を最低限の回答で終えるという対応を取り、ドライバー達からもこの取り締まりに対する反発が発生した。またドライバー組合のGPDAも声明を発する事態となった。
とはいえ、Fワードのような汚い言葉使いを取り締まることに賛同する声もある。意外なところではメルセデスF1のトト・ウルフ代表がその人だ。
ウルフ代表はスレイエム会長と全ての問題で意見が一致しているわけではないが、個人的な経験からも、ドライバーの発するメッセージを良くすることには、価値があると考えている。
なおウルフ代表とスレイエム会長は、最終戦アブダビGPで会った際、この問題についても言葉を交わしていた。
「私には、ゴーカートをやっていて様々なモノを見聞きしている7歳の子どもがいる」とウルフ代表は言う。
「数ヵ月前、うちの子が『What the f**k!(なんだよ!)』と言っているのを聞いたんだ。『どこでそんなの聞いたんだ?』と聞くと、ドライバー達からだと言うんだ」
「私はモハメドと衝突することもある。とはいえ、ドライバー達は皆が手本になっているんだ。彼らは映像に出る特別な存在で、影響を与える力があるんだ」
「彼とは多くのことで意見が合わない。しかし『f**k』という言葉は、私の母国語でもあなた達の国の言葉でも、翻訳すれば相当失礼な言葉だろう。私はそんな言葉は絶対に無線では使わない」
「(チームのドライバーの)ジョージ(ラッセル)とルイス(ハミルトン)と私とでこの件について話もしたし、彼らは私がこうした言葉を嫌っていることは知っている。だから私はそれを制限することには、全く問題はないと思っている」
「ネガティブに思っているドライバーもいれば、口に出すドライバーもいる。だが私としては、この制限は喜んで受け入れられるものだ。ただの私見に過ぎないがね」
最近motorsport.comのインタビューに応じたスレイエム会長は、汚い言葉遣いにスポットライトを当てたことは、正しいことだと確信していると語った。
論争が巻き起こっていたとしても、戦う価値があると考えているのかと尋ねると、スレイエム会長はこう答えた。
「戦う? それがスポーツを綺麗にするということなら、イエスだ」
「しかし罵倒や下品な言葉についてのルールを書いたのは私なのか? それらのルールを敷き、取り締まったのは私だろうか? こんな風に言うのは、そうしているのはスチュワードだからだ。私ではない。だからあなた達はスチュワードに聞くべきだ? 違うだろうか?」
「我々は様々な年齢の若者にメッセージを送っている。そして失礼だが、コマーシャルも映画も、なんであれ評価されるものだ」
スレイエム会長は、現世代のスターは、過去の象徴的なヒーロー達がどう振る舞っていたかから、学ぶ必要があると感じている。
「正直に言って、そんな汚い言葉を使う必要があるのだろうか?」
「ミハエル・シューマッハーは言っていたか? モハメド・アリは? 彼はビッグマウスと言っていたが、そんな言葉を使ったことがあったか? ペレが言ったか?」
「我々は唯一無二のスポーツを行なっている。そして、悪い言葉からは守る必要があるんだ。私はそういった言葉には同調しない」