虹の橋に来たハムスターは、天国の面接を受けています。名前を聞かれ、「カワイイ……?」と、よく言われていた言葉を言い……。しらほし卯乃さんがX(旧:Twitter)で更新中のマンガが「泣ける」と反響を集めています。作者のしらほし卯乃さんにお話を聞きました。



天国の面接を受けるハムスター(しらほし卯乃さん提供)

【マンガ本編】「飼い主さんはどんな人でしたか?」天国からの質問にハムスターは…「涙が止まらない」

ハムスターと飼い主の温かい日々が伝わる

 虹の橋に来たハムスターは、天国の面接を受けています。「あなたのお名前は何ですか?」と聞かれ、「カワイイ……?」と、よく言われていた言葉を言い……。

 しらほし卯乃さん(@ponchimint)がX(旧:Twitter)で更新中の創作マンガ『天国の面接』シリーズが話題です。飼い主との日々を想起させるハムスターの言動に、読者から「泣いちゃうって」「かわいすぎる」「うちの子を思い出す」などの声があがり、初回投稿には16万いいねの反響が集まっています。

 作者のしらほし卯乃さんに、お話を聞きました。

ーー 今回の作品は、ハムスターのひまちゃんが虹の橋に来たところからお話が始まります。あえて飼い主と別れたあとからのお話を描こうと思ったきっかけを教えて下さい。

 うさぎを飼っていたことがあり、今でも思い出して泣いてしまうことがあります。ペットと暮らし、別れた経験のある方々に優しく寄り添えるようなお話を作りたいと思って『天国の面接』シリーズを描いています。……というのは現在のコンセプトです。最初は単発の4コママンガとして描いたつもりだったのですが、 想定以上に反響があり、「泣ける」という声も多かったため、続きを描くことにしました。

 ペットがたくさんかけられた言葉を名前だと思っているのなら、天国には「カワイイ」という名前の動物があふれているはず……というお話が好きだったので、そういう愛すべきおバカ加減を描くならどんな動物がいいだろう、と考えてゴールデンハムスターを主役にしました。

 作品の舞台である「虹の橋」は、海外の詩に描かれているペットの死後の世界で、ペットを飼っている人たちにとっては広く知られた概念です。天国の入り口にあるとされ、人より先に生を終えたペットが飼い主を待つ場所。空前のペットブームのなか、虹の橋ではどんな日常が繰り広げられているのだろう……と想像を膨らませながら物語を作っています。

ーーひまちゃんの言動から飼い主の愛情が伝わってきました。このマンガを描くうえでこだわったポイントや心がけたことなどを教えて下さい。

 飼い主にしてもらったことを、虹の橋で自由になったひまちゃんがなぞっているようなイメージで話を組み立てています。出会った人に好きな食べ物を分けてあげたり、いっぱい食べて大きくなって、いつか飼い主が天国に来たときにハグしてあげたいと考えていたり。

 生きている動物は人間の言葉を話さないので、ファンタジーとはいえ「大好き」などと言わせてしまうことは、少々抵抗があります。好きではなかったかもしれない、というより、一緒に生きた日々のなかで、言葉がなくても愛は十分伝わっていたと思うからです。わざわざ言葉にするのは、人間が安心するための答え合わせにすぎないと私は考えています。一応、今後の展開次第でそういう場面もあるかもしれませんが……。犬や馬などの賢い動物はもしかしたら、好奇心で人と言葉を交わしてみたいと思っているかもしれませんしね。

 ひまちゃんは虹の橋で人の言葉を少しだけ話せるようになりましたが、「大好き」のような直接的なセリフの代わりに、飼い主との温かな日々を想起させるような行動を描いています。最近は虹の橋に慣れてきたのか、飼い主からもらった優しさ以外にも、ハムスターらしいちょっとしたワガママさも表れてきていますね。

 また、虹の橋ではほのぼのとした時間が流れていますが、遺された飼い主の悲しみや寂しさも正面から描きたいと考えています。ひまちゃんの飼い主もまだ悲しみの最中にあり、ひまちゃんは夢に出てきて飼い主に寄り添うこともありますが、言葉を交わすことはありません。実際にペットを飼っていた方の夢にペットが出てくることはよくあります。あくまで人間側は現実に即した範囲で、ペットとの別れから立ち直っていくまでを描いていければと。



ハムスターを見送った飼い主は…(しらほし卯乃さん提供)

ーー作品に寄せられた感想で、特に印象に残った読者の声について、教えて下さい。

 続編の、ハムスターと人間の寿命差を示す場面で「3年も100年も頑張ったことは同じ」というようなセリフがあります。ハムスター側の生きた時間を肯定する意図だったのですが、「自分の人生を認めてもらえた気がする」というお声がいくつかあったのが印象的でした。人間も100年近くある時間のすべてを意味のあるものにするのは難しいと思います。1日1日、自分なりに頑張りを積み重ねていけるといいですね。

 もうひとつ、「自分もハムスターを亡くしたが、ペットロスになったと言うと周囲から冗談のように受け取られてしまい、悲しかった」という声もありました。確かにハムスターなどの小動物の寿命は、犬猫などのメジャーなペットと比べると短いのかもしれません。感情の表現も、一緒に暮らしたことのない人からすれば分かりづらいかもしれません。

 私もうさぎを飼っていたと言うと、「うさぎって何を考えてるか分からないよね」とよく言われるのですが、一緒にいれば気持ちは強く伝わってきます。どんなペットもかけた愛情は同じですし、失った悲しみも差はありません。ハムスターを主人公にしたことで、小動物を見送った方々の心を少しでも支えられたのなら幸いです。

ーーX(旧:Twitter)では続編も公開されています。今後のお話の展開について教えて下さい。

 当初予定では、ひまちゃんのお話を「ハムスター編」とし、その後はうさぎや犬など別の動物が主人公になるオムニバス形式を検討していました。しかし、ひまちゃんが思ったより話を展開してくれるうえ、読者の方々にも愛されているので、このままひまちゃんの目線で虹の橋の動物たちを描いていければと思っています。少し時間をかけるつもりではありますが、いつかジャンガリアンハムスターも出したいですね。

 また、マンガ本編の話からは少しズレるのですが、現在ひまちゃんのLINEスタンプを作成中です。かわいく使いやすいものになると思うので、お楽しみに!