若者の間で「界隈」という言葉が流行っているらしい。
様々な行動や嗜好をまとめるフレーズらしく、例えば「風呂キャンセル界隈(風呂に入らない人々)」「自然界隈(都会から離れた場所でのんびり過ごしたい人々)」ってな具合。
世の中にはいろんな界隈があるようだが、今回筆者が出会ったのは「鉄道界隈」。
気軽に鉄道グッズを買える自動販売機を観察してみたところ、即完売の人気アイテムがマニアック過ぎてビックリ。界隈の奥深さや知識欲を垣間見てしまったのだ……!
・鉄道グッズの自販機
それは近畿日本鉄道「近鉄難波駅」を利用した時のこと。ホームを歩いていると、自販機コーナーにこんなポスターが貼ってあったのだ。
「鉄道グッズ 自販機にて販売中!」
ほほぉ? と思って覗いてみたところ、確かにそれらしい自動販売機が置かれていた。
要冷蔵のアイテムがないため当然のように冷却をされず、自販機内温度が21度というのが面白い。
興味本位で近づいて観察したところ、気になる注意書きを発見した。
運転スタフ表(第3弾)をご購入のお客さまへ(以下要約)
・人気商品なのですぐに売り切れてしまう場合があります
・商品の交換、返品はできません
・全108種類で構成されていて、ランダムで購入できます
・「A仕様 特 T9-No.4」のスタフ表は含まれません
なるほど。「スタフ表」ってヤツが、この自販機で一番人気の商品なのね。
……って、そもそもスタフ表って何よ? いくら筆者が鉄道にまったく詳しくないとはいえ、見たことも聞いたこともないアイテムが一番人気なの?? ってか108種類も入ってるのにランダム販売って一生コンプリートできないじゃん!! あと「A仕様 特 T9-No.4」って呪文か!?!?
なにからなにまでワケがわからないが、どうやらスタフ表とは乗務員用の時刻管理表のことらしく、この自販機では運転士用と車掌用の2種類がセットになっているらしい。
自販機内に貼られた見本を見てもなお、素人目には時刻表と思えない不思議なアイテムだ。これを手に入れた鉄道界隈の皆さんは、鉄道会社職員の業務を想像して楽しむのだろうか? それともコレクションアイテムとしてただ集めるのだろうか??
よくわからないけど、バイク界隈に生きる筆者の世界観で例えるならば、愛車の開発秘話や設計図を求めたり 製造された工場へ聖地巡礼をする行動に近いのかもしれないな。
もちろん、当然のようにスタフ表はこの日も売り切れ。
よっぽど人気なんだろうなぁ……!
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・おすすめアイテムは「ミニミニ方向幕」
さて、そんなマニアックな商品を取り扱う鉄道グッズ自販機だが、初心者にとっても物欲を刺激されるものがたくさんある。
中でも個人的に一番ビビッと来たのが、こちら。
「ミニミニ方向幕 ひのとりLED」(1760円)
近鉄に馴染みがない方のためにご説明すると、『ひのとり』とは 2020年より運行しているワンランク上の特急電車。
深みのあるメタリックレッドとスピード感のある車両デザインが特徴で、高級感あふれるシートに座れば料金以上の価値を感じるに違いない、贅沢な気分に浸れる。
筆者も何回か利用したことがあるのだが、アレは単なる「移動」というより「移動もできるラグジュアリー体験」であった。
このミニミニ方向幕は、ひのとりのLED式方向幕をアナログで再現したおもちゃのようなもの。
表側にはひのとりの車両を模した装飾が施されていて、
裏側には電車の行き先をプリントしたロール紙と2本のシャフトが組み込まれている。
シャフトを手動で回すことで、クルクルクルクル……
全33種類もの表示を切り替えることができるのだ!
驚いたのが、各行き先とその英語版だけでなく「試運転」「貸切」「試乗会」といったイレギュラーな表示まで混ざっていること。
ひょっとすると鉄道界隈的には常識なのかもしれないが、素人的には「そんな珍しい表示も見られるなんて嬉しい!」と得した気分になれちゃったのだ。
とはいえ、一番好きなのはやっぱり「HINOTORI」の表示かな。
表示を出す面白さに加えて ひのとりの乗車体験を思い出せるので、一石二鳥な幸せな体験だ。
これまであまり馴染みがなかった鉄道界隈。今回は自販機を通してほんの入り口を覗いただけではあるが、界隈の皆さんの知識欲やマニアックぶりに刺激をもらった次第だ。
なお近鉄の鉄道グッズ自販機に関しては、近鉄難波駅以外にも近鉄名古屋駅、近鉄鶴橋駅などのホームに設置をされている模様。電車の運行時間中はいつでも購入できるので、ぜひ気軽にチェックしてみてほしい。
執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.