岸田前政権は22年、アメリカなどの要望に応じ2023~27年度の5年間の防衛費を従来の28兆円から1.5倍の43兆円に増やすと決めた。しかし「増税メガネ」との世論と党内反発を受け、大筋での方向性は示したものの「実施時期などは景気や賃上げの動向などを踏まえて」として結論を先送りし、曖昧のまま辞任している。石破政権はそんな岸田内閣が放り出した防衛増税の具体化で、一気に動きだした。なぜ石破首相は防衛増税を急ぐのか。

 まずは防衛増税の政府具体案を、霞が関関係者が解説する。

「政府は法人、所得、たばこの3税を増税し、27年度までに1兆円超を確保する方針を決めた。そのうち法人税は税額に税率4%を付加する防衛特別法人税(仮称)を26年4月に新設する。たばこ税も26年から29年4月まで3回に分け、1本当たり計1.5円引き上げる。そして所得税についても。現行の東日本大震災復興資金としている『復興特別所得税』の税率を1%引き下げ、代わりに27年から税額に1%を付加する防衛特別所得税(仮称)を新設する予定でした」

 しかし所得税増税については、いま議論されている「103万の壁撤廃」との整合性を公明党が嫌い、時期は凍結、当面、法人税とたばこ税の値上げを先行させる方針だという。

「来年は都議選と参院選がある。都議選は公明党の命綱だけに、所得税増税でこれ以上の逆風を招きたくない思惑もあるのでは。来年の選挙が終われば動き出すでしょう」(政治部記者)

 それにしても、石破内閣の防衛増税への動きは急ピッチなのだ。シンクタンク関係者がこう明かす。

「北大西洋条約機構(NATO)の欧州加盟国各国の国防費は国内総生産(GDP)比で2%とするところが多い。しかし、トランプ次期米大統領は欧州の軍事負担が少なくアメリカにおんぶに抱っこ状態に怒っている。英フィナンシャル・タイムズが12月12日に報じたところによれば、NATO各国はトランプ氏のこうした強い意向を踏まえ、来年6月のハーグでの首脳会議で、主要国が国防費をGDPの2.5%~3%にまで引き上げる合意を目指し話し合いを始めたという」

 翻って日本は、いまだ2%の具体案でもモタモタする有様。先のシンクタンク関係者はこう言う。

トランプ氏の側近らは日本に対し、『中国の脅威が迫っている中で日本もアメリカにすべてを頼るということではダメだ、今すぐ国防費をGDPの3%にすべきなどと、圧力を強めている。当然、その側近の言葉はトランプ氏の意向にそったもの。石破政権にそうした覚悟が見えない限り、トランプ氏は石破首相と会っても意味がないと考えているのでしょう。だから安倍昭恵さんとの会談は行っても石破首相は無視の姿勢ということになる。石破首相としては、まずは2%の決断、さらには3%への方向性も迫られ、焦っていると思います」

 トランプ氏と会える日はいつになるのやら。

田村建光

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