画像はAIで生成したイメージ
江戸時代に庶民の憩いの場として栄えた床屋(=理髪店)が、経営者の高齢化により閉店ラッシュに見舞われていることは以前からいわれてきたが、ここにきて理髪店から顧客を奪い増加してきた美容サロン(=美容室)でも、倒産が続出していることが判明した。
【関連】忘年会シーズンも居酒屋業界は悲鳴…個人店中心に倒産件数“コロナ超え”の異常事態 ほか
帝国データバンクによると、2024年1〜8月の美容室の倒産件数(負債1000万円以上、法的整理)は139件で、前年同期比の約1.5倍。これは年間で最多だった2019年の166件を上回るペースだ。
「美容や健康に対する意識が高まり男性や子供の利用者も増えた結果、美容サロンの数が倍増。現在全国に約25万店とコンビニの5倍弱もあるのです。しかし、美容サロンの増加と反比例して、美容師数は減少傾向にある。というのも、平均年収が約300万円と低いうえ、1998年に理美容学校が1年制から2年制に変わってから、どこにも属さないフリーランスの若手美容師が増えた。美容業界における働き方や考え方に変化が起きたんです」(流通ジャーナリスト)
現在、美容師の雇用形態は大きく分けて2パターンに分類される。
サロンに所属する直接雇用型とフリーランスとして働く業務委託型だ。
業務委託サロンではフリーランスの美容師に高い歩合や好条件を提示することが多いため、人件費が高くつくのが一般的だ。
「高い人件費は経営を圧迫します。一方の直接雇用形態サロンの多くは平均離職率が3年で7割と高く、どこも人手不足に陥っている。そのため、新規店舗が増加し続けている一方で、既存店はどちらのサロンも厳しい現実に置かれています」(同)
人件費、光熱費、資材高騰の三重苦
もう一つの大きな問題は、美容師の独立だ。
「美容師は会社員と違い年齢と共に収入が増えることはまずない。結婚や住宅購入などの人生設計を考える30代前後の美容師は、独立に踏み切ることが多い。皮肉なことにこれが美容サロン増加の一因でもあるのです」(同)
ちなみに、2020年からのコロナ禍では飲食業界同様、美理容業界も客足は遠のいた。
業界の事情に詳しい美容系ライターは、「いまは水道、光熱費、美容資材の高騰、人件費増の三重苦が重くのしかかっています」と語るが、倒産にさらに拍車がかかれば、そのうち散髪難民が出てきそうだ。
「週刊実話」12月26日号より一部内容を変更