「マドリー上層部は冬の補強を見送る方針」と現地紙報道、来夏にスビメンディ&アレクサンダー=アーノルドを獲得か?

 今シーズン前半戦におけるレアル・マドリーの苦戦の背景にあるのが、青田買いとキリアン・エムバペの獲得を最優先してきた近年の補強戦略だ。怪我人の続出という不運が重なったことは事実だが、開幕前からいくつかのポジションにおける選手層の薄さは不安視されていた。現地でも、一般紙『エル・パイス』のように「戦略の過誤が招いた亀裂の入ったチーム」とその点を指摘するメディアは少なくない。

 突き詰めて言えば、縁の下の力持ち役となれる中間層が不足している。今のマドリーに昨シーズン限りで退団したナチョのような経験豊富なマルチDFがいれば、どれだけカルロ・アンチェロッティ監督が助かっていたかを考えれば明らかだろう。

 それでも『マルカ』と『AS』のマドリー寄りの2大スポーツ紙によると、「マドリー上層部は冬の補強を見送る方針だ」という。その是非については置いておいて、そこで俄然注目が集まってくるのが来夏の移籍マーケットでの動きだ。

 『AS』紙の重鎮記者、ホアキン・マロト氏は、来夏の補強ポイントにSB2枚、CB1枚、センターMF1枚を挙げている。SBは、先日のラージョ・バジェカーノ戦では右がルーカス・バスケス、左はフラン・ガルシアが先発で出場したが、いずれも力量不足を露呈。本来右SBの不動のレギュラーであるダニエル・カルバハルは怪我で今シーズン中の復帰が絶望と言われ、左のその一番手であるフェルラン・メンディも現在、怪我で戦線を離脱中と状態がなかなか上がってこない。CBは、エデル・ミリトンがカルバハルと同様に今シーズン中の復帰が絶望となる重傷を負い、ダビド・アラバが同じく膝の靭帯断裂からの回復が遅れ、アンチェロッティ監督は、カンテラ上がりのラウール・アセンシオの抜擢と中盤が本職のオーレリアン・チュアメニのポジションを下げることで急場を凌いでいる。センターMFは、今夏に現役引退したトニ・クロースの後釜としての位置づけだ。
  このマドリーの補強ポイントを踏まえて、『ラジオ・マルカ』の人気番組のMCを務めるミゲル・キンターナ氏は自身のYouTubeチャンネルで、「マドリーの来夏の最優先ターゲットは誰?」というテーマでディベートを繰り広げている。名前が挙がったのが各メディアで実際に補強候補として取り上げられているレアル・ソシエダのマルティン・スビメンディとリバプールのトレント・ジョン・アレクサンダー=アーノルドだ。

 前述の『ラジオ・マルカ』の番組の共演者でもあるアドリアン・ブランコ氏が推したのはスビメンディ。アーノルドを選んだキンターナ氏と意見が割れたが、面白いのは、双方ともにビルドアップの改善を重要視している点では同じであることだ。もちろん欧州を代表するアンカーに成長したスビメンディはその役割を担ううえで理想の人材であるが、キンターナ氏は、中盤に加えて、来月33歳になり、コンディションがどこまで戻るか不透明なカルバハルとの併用、あるいは代役として右SBもこなすアーノルドのポリバレント性を評価する。

 最後にもちろん両獲りするのがベストと付け加えたいところだが、現地のアナリストが、手薄なDFよりも人員的な余裕がある中盤の強化にプライオリティを置いているのは、低い位置で長短のパスを緩急自在に操るという点においてフェデリコ・バルベルデやエドゥアルド・カマビンガといった現有戦力のパフォーマンスが現時点では物足りなさを露呈していることと関係している。

 もちろんカルバハル同様、昨年8月の左膝に続いて11月に今度は右膝の前十字靭帯を断裂したミリトンの回復次第では、CBの補強の必要性が高まってくる。まだシーズンは半分以上残っており、不確定要素はもちろんある。そんな中、ひとつ確かなのは、マドリーは来夏の移籍市場で、近年の補強戦略のツケを取り戻す必要に迫られているということだ。

文●下村正幸

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