「これでPG12指定なの?」「えっ? G指定なの?」と驚くも、確かにその理由も本編を見れば納得できなくもない3作品を紹介しましょう。さらには「殺害現場を映してもG指定」「残酷描写のないファミリー映画なのにPG12指定」な例もあるのです。



映画『他人は地獄だ』ポスタービジュアル (C)ヨンキ/LINE Digital Frontier・2024 映画「他人は地獄だ」製作委員会

【画像】え…っ?「この子たち中学生にしか見えないんですが?」 こちらが「R指定」以外ありえなかった衝撃実写化映画です(9枚)

エグさから逃げずにPG12止まり

「これはR15+指定では?」と思うほどの流血や殺傷などの残酷描写があっても、映倫の審査でPG12(12歳未満の年少者の観覧には、親または保護者の助言・指導を必要)指定止まりになる映画はいくつかあります。

 2024年も『マッドマックス フュリオサ』や『十一人の賊軍』など、はっきりとした人体破壊がありつつPG12で済んだ作品が話題になり、また原作がかなりグロいマンガの実写化映画でも「これでPG12指定?」と驚く作品がありました。さらに、数年前にはまさかのG指定(全年齢OK)になった1作もあります。

『他人は地獄だ』

 2024年11月15日から公開中の『他人は地獄だ』は、韓国のWebコミック(作:ヨンキ)を日本で実写映画化した、格安シェアハウスで不気味な住人たちに遭遇するサスペンスホラーです。「刃物による殺傷・流血の描写がみられる」という理由でPG12指定がされていますが、SNSでは「こんなにエグいのにPG12で大丈夫なんだろうか」「R15+レベルの描写があるように感じた」といった声が多々出ています。

 実際に見ると、確かに「ナイフで刺される」「拷問で流血する」などの暴力描写が随所にあるものの、確実にR15+またはR18+になる「頭部が破壊され肉片が吹き飛ぶ」といった「完全に死に直結する人体破壊シーン」はほぼないように見え、指定理由通りのPG12指定にも納得できました。

 しかしながら、日常生活に侵食してくる狂気、さらには仕事でのモラハラ、「蠱毒」を作りたいという理由で出てくる気持ちの悪い虫が詰まった瓶など、精神に負担を与える描写が目白押しでした。その不快指数の高さはもちろん意図的なものですし、二転三転する展開のスリリングさや、狂気に飲み込まれていく主人公の心理描写もキツイため、「PG12でいいのか」という意見が多くなったのかもしれません。

『ゴールデンカムイ』

 原作ファンから高い評価を得た2024年1月公開の映画『ゴールデンカムイ』(原作:野田サトル)では、「多くの殺傷流血がみられる」ほか、「暴力的な物語」であることもPG12指定の理由になっていました。なるほど、そもそもの「金塊に関する暗号が彫られた囚人の刺青の争奪戦(もしくは殺し合い)」という設定からして暴力的です。

 そのなかでもPG12指定のいちばんの原因と思われるのは、「ヒグマが第七師団兵士の顔面の皮を剥ぐ」シーンでしょう。しかしながら、映画では兵士たちがヒグマに殺されていく場面は「巣穴のなかの主人公『杉元佐一(演:山崎賢人)』の視点」で描かれ、めくれた皮そのものは映るものの、決定的な描写は避けられています。杉元から見えていないというだけで、起きていることの残酷さは変わらないですし、むしろ「その場所を見続ける」映画という媒体ならではの緊張感にもつながっていました。

 さらには、玉木宏さん演じる「鶴見中尉」が、杉元の顔に「団子の串を刺す」シーンも再現され、ここはやはり実写にしたことで痛々しさも増していました。その際の「ロウソクボリボリしちゃおうか」というセリフは、玉木さんの満面の笑顔のおかげもあってトラウマになりそうです。

 R指定になってもおかしくない描写だらけの原作を上手く料理し、冒頭の日露戦争の場面もしっかり描いた本作は30億円近い興行収入を上げ、WOWOWのドラマシリーズに続いての続編映画も決まりました。



映画『他人は地獄だ』ポスタービジュアル (C)ヨンキ/LINE Digital Frontier・2024 映画「他人は地獄だ」製作委員会

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子供による車の運転があるとPG12?

『ミュージアム』

『ミュージアム』(原作:巴亮介)は雨の日だけ起こる猟奇殺人事件を追うサイコスリラーで、劇中では「縦に真っ二つにされた」「頭部だけ」の死体がはっきりと映ったりもしていましたが、なんとレーティングはG指定でした。確かに劇中ではそれらの死体の「切断面」は見えないようになっているものの、かなりショッキングです。他にも性行為寸前の場面がセリフや行動から、「匂わせる」程度で示されています。

 配給側もそのレーティングが予想外だったためか、チラシにはPG12指定の映倫のマークになぞらえた「危険!鑑賞注意」とともに「どなたでもご覧になれますが、刺激の強い描写もございますので、ご注意ください」と書き添えられていました。

 本作監督の大友啓史さんは、公開時のインタビューで映倫の判断に驚いたことを語り、死体があってもそれに至る過程が描かれなければ大丈夫なのではないか、という旨の持論を語っています。

 筆者個人としてはPG12指定は鑑賞の絶対的な制限をかけるものではなく、あくまで観客の判断に委ねている、残酷描写が性描写あるという注意喚起にもなると思うので、本作での死体の描写を鑑みればPG12指定でも良かったようにも思います。

 余談ながら、凄惨な殺害現場が映された『夏目アラタの結婚』はG指定でしたが、『正体』では「殺害現場の流血の描写がみられる」という理由でPG12指定がされていました。映される死体や血糊がいかに残酷に見えても、その場所で新たに「血が流れる」シーンがなければG指定になる、ということなのかもしれません。

 さらに、最近では『ゴーストバスターズ/アフターライフ』『シング・フォー・ミー、ライル』など、明らかにファミリー向けの映画が「年少者の車の(無免許)運転の描写がみられる」という理由でPG12指定になったこともありました。PG12指定という表記そのものではなく、その理由を映画倫理機構(映倫)の公式サイトで理由を調べてから、子供と観てもいいかを判断するのもよいでしょう。

※山崎賢人さんの「崎」は「たつさき」