最近、防衛・安全保障の専門家の間では、来年以降における日本の安全保障を危惧する声が広がっている。様々な意見があるが、とりわけ米国、韓国との関係を危惧する声が多い。

 米大統領選挙から1カ月以上が経過するが、依然としてトランプ次期大統領と石破茂総理との会談の予定すら決まっていない。石破氏は11月の南米出張の帰りにトランプ氏との会談を打診したが、政権発足前は外国の首脳には会わないと拒否された。しかしトランプ氏は、カナダのトルドー首相をフロリダの自宅に招き、フランスを訪問してはマクロン大統領やウクライナのゼレンスキー大統領と会談。安倍晋三元首相の妻、昭恵さんとの面会の後、ようやく石破総理との会談に前向きな発言をしていたが、やはり少数与党という状況のなか、石破政権は長持ちしないとの予測なのか、後回しにされているとの見方が強い。

 この事態は、安全保障を事実上米国に一任する日本にとって大きな損害となる。トランプ氏は防衛費をGDP比で3%以上にすることを同盟国に求めており、日本の1.6%は不満材料以外の何物でもない。米軍と自衛隊との一体化を進めたいなら、まず防衛費を増額しろと要求される可能性は高く、対応によっては日米同盟が停滞するだろう。

 また、韓国・尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権の崩壊による影響への懸念も根強くある。「韓国のトランプ」こと、最大野党「共に民主党」代表の李在明(イ・ジェミョン)氏が大統領となれば日本に牙を向け始めることは間違いなく、正常に戻ったGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)が再び機能不全に陥るだけでなく、対北朝鮮での連携も崩壊する可能性が大だ。李氏は最悪の日韓関係と言われた文在寅(ムン・ジェイン)大統領以上に強硬な反日派であるだけでなく、政権を担えば北朝鮮と融和路線となる可能性が極めて高く、こうなると日本にとっては負の材料しかない。

 一方、中国は米国や日本との経済、貿易関係を重視しつつも軍拡を押し進め、武力によって台湾を制圧することを依然として否定しない。北朝鮮はロシアとの軍事的結束を強め、いつかは北方領土でロシア軍と合同軍事演習を行う時がやってくる。

 中露朝という対立国家を周辺に抱える日本として、トランプ氏と“韓国のトランプ”を味方に付けなければならない状況は非常に厳しい。特に韓国とトランプ氏は相性が合わないので、冷え切った5年間の日韓関係を覚悟しなければならないだろう。来年以降、そこでヘタを打てば日本は安全保障上のパートナーを失い、孤立する恐れがある。

北島豊

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