今日も誰かが悩んでいる。そして自分も悩んでいる。古今東西、たくさんの悩みにたくさんの賢人がアドバイスを贈ってきた。大量の人生相談本をめくりつつ、同じ悩みに対するさまざまな回答をピックアップしてみよう。今回のテーマは「ハゲ」。本人にとっては深刻で切実な訴えに対して、いかなる対処法が示されてきたのか。
ビートたけしの回答は
人間の値打ちは、毛髪の量とは関係ありません。男性としての魅力もしかり。それは誰もがわかっています。しかし、とくに若い男性の場合は、毛髪が減っていくことをハゲしく恐れるのが常。「気にしなくていいよ」という無難な慰めは、毛の先ほどの説得力も持ちません。賢人たちのありがたいアドバイスを聞いてみましょう。
最初に登場する賢人は、その独特の視点がピカリと光るタレントのビートたけしさん。薄毛に悩む26歳の青年が「このままでは30歳ぐらいで激しくハゲてしまいます。育毛や植毛をするお金もありません。カツラも嫌です。どうしたらいいでしょうか?」と救いを求めます。たけしさんの回答は、非常に?シンプルでした。
〈坊さんになれ! 以上(笑) 出家しなさい。出家しといて、儲かるから、ある程度、金儲けできたら遊び出しなさい。京都の坊さんなんかカツラだらけだからね。(中略)あるいは、「7:3」の入れ墨したらどうだ。きれいに「7:3」に分けた入れ墨。「浅草のアトム」がそうだから。1回入れれば、一生、床屋に行かなくて済むんだから。〉
※初出:ビートたけし責任編集ネットマガジン「お笑いKGB」。引用:ビートたけし著『たけしの人生相談 悩むの勝手~伊集院さんに聞けなかった話』(徳間書店、2019年刊)
さすが「毒舌」で名を馳せたビートたけしさん、悩みをきちんと受け止める気はまったくなさそうです。ただ、仮にたけしさんが心に響くアドバイスを授けたところで、この青年の毛量が画期的に増えることはありません。そもそも、たけしさんに相談している時点で、有益なアドバイスはたぶん求めてはいませんよね。そういう意味では、相談側のニーズにきちんと応えた誠実な回答と言えるでしょう。
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「エロいことを考えると毛が抜ける」??
女性の意見も聞いてみたいところ。タレントの光浦靖子さんが、育毛剤のイベントで自分の頭頂部が薄くなっていることに気づいて絶望している31歳男性の悩みに答えています。「もう女性から相手にされないのでしょうか」という訴えに、光浦さんはこう答えます。
〈友達が言ってました。「エロいことを考えると毛が抜ける」と。アナタのように、女のことばかり考えているエロスな人間は、毛が抜けて当然ですよ。(中略)アナタの手紙をもらった後、友人とハゲについて話しました。友人は「何だかんだ言っても見た目だしね~。ハゲかあ……。男に全く縁のない超ブサイクな女を狙うんだねッ」と言ってました。その友人は『ハイスクール! 奇面組』の一堂零に顔がそっくりで、アダ名が「奇面」という女です。どうです? 女ってヤでしょ? 女が嫌いになるでしょう?〉
※初出:雑誌「TV Bros.」(東京ニュース通信社)の連載「脈あり?脈なし?傷なめクラブ」。引用:光浦靖子著『傷なめクラブ』(幻冬舎、2009年刊)
実際に「エロいことを考えると毛が抜ける」かどうか、真偽は定かではありません。光浦さんは、一堂零に似た女友達のコメントを紹介することで、相談者をさらに絶望のどん底に突き落とします。しかし、突き落としっぱなしではありません。「あなたが女嫌いになった時、必然的にエロいことを考えなくなった時、抜け毛がくい止められますよ」と希望らしきものを与えています。……うーん、光浦さんも悩みを解消してあげる気はないかも。