「これを断るヤツはおらん」
──それで、今回はなぜ福島第一原発に行くことになったのでしょうか。
僕がこうして科学に興味を持っていることを知っているので、黒ラブ教授がときどき声をかけてくれるんですよ。「こういうのがあるんですけど、興味ありますか?」「行ってみますか?」って。だから、いつも黒ラブ教授の声かけ待ちなんです。今回もそんな始まりでしたね。
──黒ラブ教授さんは、いろいろなところにせいじさんを連れていきたいって思っているんですね。
喜ぶから嬉しいんちゃいます? 科学的にすごいものを見たりすると「何やこれ!」ってリアクションがええから(笑)。
──今回は、大きな損傷には至らなかった5号機の見学がメインですが、そこでも使用済みの核燃料プールや、完全防備のうえで原子炉の真下、格納容器の内部にまで入り込んでいます。こんなに内部まで入れるという話は事前に聞いていたんですか?
いや、そこまではっきり言えるわけないじゃないですか。内部のスケジュールとかすべて機密ですもん。見たことがないセキュリティでしたよ。世界がほしがる技術があるわけですし、また、燃料がまだ残っているという危険もあります。ここを攻撃されたら終わりですからね。
──今回、かなり内部まで見られたというのは、経済産業省資源エネルギー庁の担当者の立会いも大きいんですよね。
あの方が一緒に行ってくれたから、いちばん奥のほうまで行けたんだと思います。あの人がくると、現場がすごくざわつくんですよ。「なぜ、あの方が」って(笑)。
──芸人のYouTubeで動かせるレベルの方ではないんですね(笑)。今回、黒ラブ教授から最初に福島第一原発の内部に入れるという話があったときは、率直にどう思いましたか?
いや、これを断るヤツおらんやろって。
──たとえば、“危険”みたいなことはよぎりませんでしたか?
危険なわけないでしょう! 事故から何年経ってるんですか。まあ、もちろんそれぞれ考え方はあるのでね。でも、僕は全然気にしないタイプなんで。
出典: FANY マガジン
(広告の後にも続きます)
震災時の光景が鮮明によみがえった
──実際に現地を巡ってみた感想は?
先ほども言いましたが、鮮明に事故当時の記憶がよみがえってきました。事故のニュースが流れて、福島の知り合いや、福島に関係する人たちからバンバン状況連絡があって、このあと、どうなってしまうんやろうなって……。
僕は震災の2日後にアフリカに飛んだので、震災の状況はフランスのニュースで見ていたんです。日本ではカットされるような場面も、フランスではバンバン流していて、それは衝撃的でした。女性キャスターが泣きながら何かしゃべっていたり、そういうことがどんどんよみがえりましたね。
それから、事故の暴走を止めるために尽力しはった人たちの話も聞いたので、その方たちのことを思うと、いたたまれない、ありがたい気持ちでいっぱいになりました、その方々がおられたから、最小限の被害に抑えることができたわけで、心からありがとうございますしかないです。
あんなに狭くて暗い現場で、人力でバルブを開けに行ったっちゅうねんもん。信じられへんわ。「僕が行きます」って名乗り出る方が何人もいたっていうんです。皆さん責任感が強くて、本当にすごいなって思ってね。