〈甲斐FA人的補償〉巨人・小林がソフトバンク移籍すれば三方よし…巨人ドラ1の呪縛から解放されるとき

福岡ソフトバンクホークスから国内フリーエージェント(FA)で読売巨人ジャイアンツに移籍することになった甲斐拓也捕手(32)。その穴埋めとして巨人の小林誠司捕手(35)に白羽の矢が立っているという。

実質「甲斐=小林+金銭」トレードに?

球界を代表する捕手、甲斐の穴を埋めるのは、小林…という実質、大型捕手トレードが実現するかもしれない。その鍵をにぎるのが、甲斐のFA流出が決まった直後のソフトバンク・三笠杉彦GMの言葉だ。

 「ダメージはあります。どういうふうにカバーしていくか…(巨人からの)プロテクトリスト次第だと思いますので。情報をそろえて検討したい」

三笠GMはソフトバンクの黄金時代を陰ながら支えてきた、正捕手流出による戦力ダウンが大きくないことを認めている。扇の要をどう補強するのか。その解決策として、最も手っとり早いのが甲斐の人的補償として巨人から捕手を補強すること。

そこで、白刃の矢を立てられそうなのが今季出場42試合に止まった小林誠司だ。

もちろん巨人から届くプロテクトリストから外れていることが前提となるが、小林がプロテクトされない可能性は高いといわれている。

「今季の小林は大城卓三、岸田行倫に次いでチーム3番手でした。最優秀バッテリー賞をともに獲得した菅野智之もメジャー移籍して有望な若手も多い今の巨人では、小林は決して優先順位は高くないはずです」(セリーグスコアラー)

小林は2017年のWBCでは侍ジャパンの正捕手として全7試合に先発出場。同大会ではチームトップの打率.450、本塁打1、打点6で、WBCベストナイン候補に名前が挙がり「世界の小林」と呼ばれるほどの活躍だった。その後、2019年のWBSCプレミア12でも代表に選出され、同大会の初優勝に貢献した。

一方の甲斐は2017年に侍ジャパンに初選出されると、その後も主力として2020年の東京五輪で金メダル獲得。同大会を通じてチームトップの打率.385、準々決勝のアメリカ戦でサヨナラ打を放つなど、ベストナインにも選ばれた。その後、2023年のWBCでも世界一の原動力となっている。

国際大会での実績豊富な2人だが、NPBでの通算成績を比較してみると、

小林:通算808試合出場、打率.204、375安打、16本塁打、150打点、盗塁阻止率.360
甲斐:通算1023試合出場、打率.223、587安打、62本塁打、290打点、盗塁阻止率.371
(※盗塁阻止率は2023年までの通算成績)

打撃成績こそ甲斐に少し分があるが、守備面では小林が2016年~2019年まで、甲斐が2018年、2021年に盗塁阻止率でそれぞれリーグトップとなるなど、遜色ない成績となっている。

強肩の守備型捕手という共通項のある2人だが、対照的なものがある。

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巨人の過去10年間のドラフト1位で活躍したのは2人だけ

小林が2013年、社会人野球の名門・日本生命からドラフト1位で巨人に入団したのに対して、甲斐は強豪校とはいえない楊志館高校から育成ドラフト5位でソフトバンクに入団している。

伝統ある巨人のドラフト1位という看板のもと野球エリートとして踏ん張ってきた小林。
地元球団で育成ドラフトから無名選手として這い上がってきた甲斐。

これまで国際大会の経験も豊富で多くの修羅場をくぐり抜けてきた2人だが、小林が入団当初から背負った重圧は計り知れない。

「今年から数えて過去10年間の巨人のドラフト1位で、その指名順位にふさわしいといえる成績残した選手は吉川尚輝と大勢の2人だけです。これだけ少ないと『巨人ドラ1の呪縛』があるのかとまで思ってしまいます。

逆にいえば、それだけ巨人のドラフト1位というのは重い。小林がこれまで背負ってきた巨人軍のユニフォームを脱いだときに、フレッシュな気持ちでもうひと花咲かせることができるのでは……」(球界関係者)

さらに、ソフトバンクは今季開幕時点の球団別支配下選手の平均年齢で25.91歳と12球団で2番目に若いチームだ。ポジション別の平均年齢で捕手部門ではさらに若く25.00歳となっている。甲斐というチームの中心であり、ベテランが抜けた若いチームにとって小林はうってつけの人材といえるだろう。

「甲斐が抜けた後のソフトバンクの正捕手候補は27歳の海野隆司です。今季は出場機会を増やして51試合に出場しましたが、まだまだ一人で担えるほどの選手ではありません。ソフトバンクにとって甲斐が抜けた後に大ベテランの小林は願ってもない選択肢なはずです。

小林は来季で36歳になります。いくら捕手の選手寿命が長いといっても、現役生活はそう長くはないでしょう。引退後のキャリアを考えても、セリーグ以外の野球、巨人以外の球団での野球を知ることは、小林にとっても球界にとっても大きな財産になると思います」(前同)

はたして、球界を代表する捕手の移籍はあるのだろうか。

取材・文/集英社オンライン編集部