当時32歳だった2019年6月に自身初のトップ10入りを達成し、これまでに9度のツアー優勝を挙げている男子テニスの大ベテラン、ファビオ・フォニーニ(現91位/37歳)は、今秋引退したレジェンド、ラファエル・ナダル(スペイン/38歳)に対抗した数少ないプレーヤーの1人だ。中でもフォニーニが2セットダウンからナダルに大逆転勝利を収めた2015年の全米オープン3回戦を覚えているファンは多いのではないだろうか。
ストローク力の高いフォニーニは、ナダル特有の強力なスピンボールにもしっかり対応し、ツアーでは18回対戦して4勝を挙げた。時に“ナダルキラー”とも呼ばれるイタリアテニス界の名手は、スペインメディア『Relevo』のインタビューに答え、中でも劣勢をひっくり返した全米の試合は特に印象に残っていると語る。
「ナダルにはリオ・オープン(クレー/ATP500)やバルセロナ・オープン(クレー/ATP500)でも勝った。勝数は本当に少ないからよく覚えている。でもやっぱりニューヨーク(全米)での勝利が一番印象的だったかな。その時はたしか僕がフェデラー(スイス/引退)の次に2セットダウンからナダルに逆転で勝った選手となり、四大大会では初めてのことだったと思う」
最近トリノでナダルの広報担当と話をしたというフォニーニはこう続ける。
「その時にこんなことを言われたよ。『今だから言えるけど、あの全米の君との試合でラファは苦しんでいた』とね。僕が覚えているのはナダルを応援しに来たタイガー・ウッズ(アメリカ/ゴルフ元世界1位)が最初の2セットを終えたところでナダルの勝利を確信して席を立ち、『次のラウンドでまた来るよ』と言ったことだ。だからあんな偉大なテニス選手に勝ったことが自分にとって何を意味するのか、言葉で説明するのは難しい。その日はたまたま僕に運が向いたのだろうと思うけどね」
ちなみにナダルを破った計4試合のうち、フォニーニが四大大会に次ぐマスターズで初優勝を遂げた19年の「モンテカルロ・マスターズ」(クレー/ATP1000)準決勝だけは比較的楽に勝てた感じがしたという(スコアは6-4、6-2)。だがその他の試合はどれも非常にタフで、翌日には疲れ果てて動けなくなるほどだったと明かした。
「モンテカルロで勝った時以外、彼との試合が終わると立っていられないほどだったし、次の日は死んだように疲れ果てていた。毎回そんな感じだった。モンテカルロの時は『負けるくらいなら腕を切り落とした方がマシだ』と思いながらプレーしていた。本当に大変だったよ」
とうとうナダルもツアーを去り、毎度激しい打ち合いを繰り広げた両者のバトルはもう見られない。フォニーニも一抹の寂しさを感じているのではないだろうか。
文●中村光佑
【動画】フォニーニがナダルを36 46 64 63 64で破った2015全米オープン3回戦のフルマッチ映像
【連続写真】胸の張りで腕を加速するフォニーニのフォアハンド、30コマの『超分解写真』
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