〈韓国動乱〉妻はカルト崇拝に株操作、その伯母はユーチューバーにバラマキ…尹大統領“暴走戒厳令”は身内のスキャンダル潰しだった? 復帰したらまた戒厳令も…

国政運営に行き詰まった末に、反対派政治家らを粛清する「政権クーデター」を起こした韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領(64)。12月3日夜の戒厳令宣布による実権掌握の試みは数時間で失敗し、14日には国会で弾劾訴追案が可決され権限が取り上げられた。だが内乱容疑での逮捕をかわせば再び大統領に復帰する目は十分あり、また戒厳令を企てる可能性すらある。そんな大統領を動かすのは、“カルト”にはまった疑いがある金建希(キムゴンヒ)夫人(52)だ。

罷免には9人の裁判官のうち6人以上の賛成が必要

「尹大統領が12月3日夜に突然発表した戒厳令は、約2時間半後の4日午前1時ごろ、国会に駆けつけた190人の国会議員の賛成で戒厳解除要求案が可決されたため、法的効力を失いました。

軍は国会に200人以上の陸軍の最精鋭部隊を投入し議決阻止を図りましたが、現場の将兵は、体を張って議事堂入りを阻止しようとした野党の議員秘書らを暴力的に排除することもなく、可決後は撤収しました」

そう話す全国紙の国際部デスクは、「軍による権力奪取や民主化運動弾圧が繰り返された韓国では1987年の民主化を経て、軍が市民に銃を向けることは許されないという考えが軍の中にも浸透していました。権力の不当な行使は許さない社会の意識の反映でしょう」と、その背景を指摘する。

戒厳体制の確立に失敗した尹氏は猛烈な世論の非難を浴びる。

300議席の国会で192議席を占める野党は、200人の賛成で成立する大統領弾劾訴追案を国会に提出。一度は与党「国民の力」が団結して可決を防いだが、野党側が14日に試みた2回目の採決では世論にたじろいた与党から造反者が出て204人の賛成で弾劾訴追案は可決され、大統領権限は停止された。

国会前に押し寄せた数十万人の退陣要求集会の参加者は喜びを爆発させた。だが尹氏は終わったわけではない。

「憲法裁判所は180日以内に大統領を罷免するかどうかを決めます。罷免には9人の裁判官のうち6人以上の賛成が必要です。

ところが現在、憲法裁の裁判官は3人が欠員です。罷免には在籍判事全員が賛成しなければなりませんが、裁判長格の判事と他の一人は保守派です。国会が野党主導で3人の欠員を充足させても罷免になるかどうかは予断を許しません」(ソウル特派員)

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伯母の牧師が「ユーチューバーのために金をまいた」

一方、捜査も順調とは言いがたい。

「今回の戒厳令は、戦時などに限られた宣布条件を満たさず、戒厳時も許されない国会制圧を図った点で違憲、違法の内乱だとの見方が大勢を占めています。
最高刑が死刑の内乱罪は大統領の不逮捕特権も適用されず、“内乱の首魁(親玉)”と呼ばれている尹氏は逮捕されるでしょう」

そうソウル特派員は話す。実際、軍幹部や国会封鎖を試みた警察庁長官らの逮捕が連日報じられている。だが捜査の現場は尹氏の断罪を目指す側と、尹氏の“親衛部隊”との攻防の場になっている。

「内乱罪の捜査権は警察にあります。警察は今回、高官捜査の専門組織『高位公職者犯罪捜査処(高捜処)』と国防省との3者で共同捜査態勢を取り内乱容疑を調べています。ところが、内乱罪の捜査権がない検察が、職権乱用罪の捜査だとして軍高官の逮捕や関係先の家宅捜索を行なったのです。

それはなぜか。尹氏は検事総長出身の検察一家のトップです。検察は親分を守るため、証人の口止めや証拠隠滅を図った疑いがあり、18日になって事件を公捜処に引き渡しましたが証拠がどれだけ荒らされているか分かりません」(韓国政府筋)

憲法裁の判断によってはありえる尹氏の大統領権限復活を止めるには、判断の前に内乱罪で逮捕、起訴する必要がありそうだが、その捜査も妨害を受けてきたわけだ。尹氏が再び権力を持てば、世論も国会もついてこない中で国政の麻痺は必至。そうなれば再度戒厳を企ててもおかしくない。

尹氏は警察側の出頭要請を拒み、捜査に徹底抗戦の構えだ。その尹氏はなぜ12月3日に戒厳令に突っ込んだのか。

「尹氏は数ヶ月前から戒厳令に言及していたことが最近分かってきましたが、12月3日は『ソウルの声』というネットメディアが尹氏に大打撃を与える特ダネを午後8時に出したんです。戒厳令の宣布2時間半前のことです」(韓国メディア記者)

特ダネとは大統領夫人、金建希氏の伯母である極右の金恵燮(キムヘソプ)牧師が、親戚に「ユーチューバーたちの管理を後ろで私が全部やってる。3億7000万ウォン(約3700万円)使った。だれがタダで動いてくれる? 今考えると、尹錫悦を大統領にするために、神様は私を牧師にしたんだよ」と話したことを暴いたもので、音声も公開された。

2022年の大統領選で尹候補に有利な世論を作るためユーチューバーに金をまいたという内容だ。事実なら公職選挙法違反で、尹氏は大統領の当選無効もあり得る。

「戒厳令の準備は数日前に始まっていましたが、この報道が出ると知ったことが引き金になったのかもしれません」