朝日小学生新聞にて1986~2019年まで33年にわたって連載された、尼子騒兵衛著作の長寿漫画「落第忍者乱太郎」が原作のテレビアニメ「忍たま乱太郎」(以下「忍たま」)。昨年、放送30周年を迎えた同作は、乱太郎、きり丸、しんべヱを始めとした忍者のたまご=“忍たま”たちが通う忍術学園の一年は組をメインに、明るく愉快な毎日を描いた学園コメディだ。本稿では、32年目を迎えたいま改めて振り返る「忍たま」の魅力、そしてかつて「忍たま」を観ていた大人世代にこそ知ってほしい、劇場版の見どころに迫っていく。
【写真を見る】長寿アニメ「忍たま」が愛され続ける理由&劇場最新作の見どころを最短予習! / [c]尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会
■子どもから大人まで虜にする「忍たま」が愛され続ける理由
ここまで「忍たま」が人気の理由は?と問われたら、「誰が観ても楽しめるストーリー」「親しみやすいキャラクター」「登場人物たちが紡ぐ関係性」と多くのファンが答えるだろう。まず「忍たま」と言えば、なんといっても個性豊かなキャラクターたちが魅力だ。誰もが知る3人組だけでなく、「忍たま」には愛すべきキャラクターたちが大渋滞している。
一流の忍者を目指し忍術学園に通う乱太郎 / [c]尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会
タイトルロールである乱太郎(声:高山みなみ)は、本名を猪名寺乱太郎(いなでららんたろう)という10歳の少年。家は先祖代々由緒正しいヒラ忍者という環境に生まれ育った彼は、両親の期待を背に、一流の忍者を目指して、忍術学園に入学した。ぼさぼさ頭と、ひどい乱視のためにかけている丸メガネが特徴の彼は、素直で元気な性格から多くの人に愛されている。
ドケチでお金に目がないムードメーカー、きり丸 / [c]尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会
その友達、摂津のきり丸(せっつのきりまる/声:田中真弓)。戦で家を焼かれ、家族を亡くしたという幼くして悲しい過去を背負いながらも、アルバイトをしながらたくましく生きている。小銭が大好きで「タダ」、「安い」という言葉にはとことん弱く、商売上手でもある。忍術学園の長期休みには、は組の教科担当教師でもある土井先生の家でお世話になっているため、他のクラスメイトよりも土井先生との絆は強い。
しんべヱ(右)は、大貿易商の息子で食いしん坊な性格! / [c]尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会
そして、乱太郎のもう一人の友達である福富しんべヱ(ふくとみしんべえ/声:一龍斎貞友は、堺の豪商の息子で、太い眉毛と笑顔がチャームポイントの癒し系キャラ。食べることとダジャレが大好きで、硬い髪と石頭、粘着力のある鼻水で、仲間のピンチを救うこともある。
一年は組の担任で、兵法や火薬のスペシャリストである土井先生こと土井半助 / [c]尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会
そんな彼らを温かく指導するのが、一年は組の教科担当教師である土井半助(どいはんすけ/声:関俊彦)。生徒たちからの信頼は厚く、なかでも、休み中に同居しているきり丸とは家族のような深い絆で結ばれている。そんな土井先生の優しさや笑顔に魅了され、憧れを抱く子どもたちも続出。シリーズ屈指の人気キャラだ。
ファンから絶大な人気を集める六年生たち / [c]尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会
ほかにも、乱太郎たちの先輩である上級生たちも大人気で、とりわけ、穏やかで面倒見が良く忍たまたちのお兄さんのような存在の善法寺伊作(ぜんぽうじいさく/声:置鮎龍太郎)や、戦うのが大好きな武闘派の食満留三郎(けまとめさぶろう/声:鈴木千尋)といった六年生たちが紡ぐ友情物語は、幼いころから「忍たま」を推し続けているファンを魅了してやまない。
タソガレドキ忍軍の忍び組頭、雑渡昆奈門。部下から信頼されている / [c]尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会
また、乱太郎たち忍術学園と敵対する、ドクタケ城の城主・木野小次郎竹高(きのこじろうたけたか/声:土師孝也)やドクタケ忍者隊首領・稗田八方斎(ひえたはっぽうさい/声:間宮康弘)、タソガレドキ忍軍組頭・雑渡昆奈門(ざっとこんなもん/声:森久保祥太郎)やその部下・諸泉尊奈門(もろいずみそんなもん/声:代永翼)といった、忍術学園外の忍者集団との交流も見どころの一つ。普段は敵対しているが、時には忍術学園の面々と協力し合ったりと、多面的な関係性を描くところも、子どもから大人まで愛されている要因のひとつだ。
■圧倒的人気を誇る土井先生と、キャラクターたちが紡ぐ絆
みんなの人気者である土井先生は、他のキャラクターたちとの関係性も深い / [c]尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会
なかでも、土井先生は様々なキャラクターと深い絆を結んでいることが、その圧倒的な人気を支えている理由となっている。共に一年は組の生徒たちを見守り、土井先生の命の恩人とも言える実技担当教師・山田伝蔵(やまだでんぞう/声:大塚明夫)との信頼関係や、その息子でもあるフリーの忍者・山田利吉(やまだりきち/声:岡野浩介)との友情、そして、きり丸との家族のような絆を通して、それぞれの視点からの「土井先生」像が描かれることにより、キャラクターが持つ多彩な魅力が浮き彫りとなるのだ。こうしたキャラクター像の描き方が実現できるのも、30年を超える長い時間をかけて魅力的な登場人物を丹念に描きだし、確かな関係性を物語の上で表現してきた「忍たま」ならでは、と言えるだろう。
山田先生の息子である利吉との兄弟のような絆も尊いポイント(テレビアニメ「忍たま乱太郎」) / [c]尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会
そして、忘れてはならないのは、“実はすごすぎる”豪華声優陣の共演ぶりだ。乱太郎には「名探偵コナン」の江戸川コナンや『魔女の宅急便』(89)のキキで知られる高山みなみ、きり丸には「ONE PIECE」のルフィ、『天空の城ラピュタ』(86)のパズーでお馴染みの田中真弓、しんべヱには「ちびまる子ちゃん」のお母さん、「クレヨンしんちゃん」のマサオくんを演じる一龍斎貞友と、国民的キャラクターを長年にわたり演じ続けるベテランが名を連ねる。
一年は組の実技担当、山田先生。厳しいが生徒や息子に深い愛情を持っている / [c]尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会
さらに土井先生を、昨年大ヒットした『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(23)の鬼太郎の父、「鬼滅の刃」の鬼舞辻無惨と幅のある演技が魅力の関俊彦、山田先生を、テレビアニメ「ブラック・ジャック」のブラック・ジャックや「ルパン三世 PART6」の次元大介と、渋く落ち着きのある声で知られる大塚明夫が演じているほか、保志総一朗、神奈延年、置鮎龍太郎、森久保祥太郎、代永翼ら、もはや“声優陣の夢の共演”といっても差し支えないほどの顔ぶれを一挙に楽しめるのも「忍たま」の強みのひとつだろう。
■様々なフィールドで人気を獲得!「忍たま」の歩みを振り返る
1993年にスタートしたアニメ「忍たま乱太郎」 / [c]尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会
1993年にスタートしたテレビアニメを皮切りに、1996年、2011年に公開された劇場版アニメと、2011年、2013年には加藤清史郎主演で実写映画が公開されたほか、舞台化した2.5次元ミュージカルなど、様々なフィールドで展開する「忍たま」ワールド。テレビアニメは1話10分と短く、子どもが安心して観ることができるようマイルドな描写が徹底されており、誰からも受け入れられるシンプルなデザインのキャラクターたちが明るく楽しい物語を紡いでいる。
2011年には、加藤清史郎が乱太郎を演じた実写版『忍たま乱太郎』も公開し話題に / 『忍たま乱太郎』 発売中 DVD5,170円(税込) 発売元:電通/アミューズソフト 販売元:アミューズソフト [c]2011実写版「忍たま乱太郎」製作委員会
その一方で、2.5次元ミュージカルである通称「忍ミュ」は2010年1月の初演以来、大人気シリーズへと成長。初期には、荒牧慶彦、佐藤流司、陣内将ら、現在の2.5次元ミュージカル界を牽引する人気の若手俳優陣が出演していたこともあり、大人の女性ファンから圧倒的な人気を獲得した。特に、乱太郎たちの先輩にあたる六年生の人気はアニメ版のみならずミュージカル版でも驚異的で、新旧キャストが集結した「六年生単独ライブ」も開催されているほどだ。
2010年にスタートし、現在まで高い人気を誇る「ミュージカル忍たま乱太郎」 / [c]A/N・EP [c]MNS
■大人世代にこそグッとくる。劇場版ならではの見どころ
そんな国民的アニメシリーズの最新映画が『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』だ。映画化にあたり復刻した同名小説を原作に、シリーズ屈指の人気キャラである土井先生を中心とした、いつもと違う「忍たま」が描かれる。
土井先生に勝負を挑む諸泉尊奈門。かつての惨敗を根に持っており… / [c]尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会
土井先生をライバル視し、ことあるごとに勝負を挑んでくるタソガレドキ忍軍の忍者、諸泉尊奈門との決闘のあと、土井先生は消息を絶ってしまう。忍術学園の教師や上級生の捜索が始まるなか、きり丸は偶然、土井先生が置かれた状況を知ることに。そんな折、土井先生捜索中の六年生の前に、土井先生に瓜二つのドクタケ忍者隊軍師、天鬼が現れる。
稗田八方斎とともに、忍術学園打倒と天下統一のため任務をこなす天鬼 / [c]尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会
誰もが楽しめるファミリー向けタイトルとして愛されてきた「忍たま」だが、本作では、いつもの優しくて穏やかな土井先生とは別人のような天鬼が、太刀を手に六年生に襲いかかるといった、シリアスなシーンも盛り込まれている。また、土井先生ときり丸の関係にもフォーカスを当て、彼らの絆をドラマチックに描きだしていく。
家族のような絆で結ばれた土井先生ときり丸 / [c]尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会
なかでも、土井先生が姿を消したことを知るきり丸の姿や、きり丸のために、土井先生救出に向け一年は組が団結する場面に、映画館で号泣するファンが続出するはず。また、土井先生と並ぶ人気キャラクターであるフリーの忍者・山田利吉はもちろん、凸凹な面がありながらも連携して土井先生捜索に奮闘する六年生といった、学年・学園を超えたキャラクター達が出演するなど、ファンにはたまらないストーリー展開が待ち受けている。
さらに、人気アイドルグループ「なにわ男子」が、時代を超えて愛される名曲「勇気100%」を担当するだけでなく、新曲「ありがとう心から」を主題歌として提供。また、声優としても本編に参加するといった劇場版ならではのコラボレーションも実現。原作者・尼子騒兵衛考案による完全オリジナルキャラクターで忍術学園の卒業生である桜木清右衛門(さくらぎせいえもん)を大西流星、若王寺勘兵衛(なこうじかんべえ)を藤原丈一郎がそれぞれ演じる。
果たして、土井先生は忍術学園に戻ってくることができるのか!? / [c]尼子騒兵衛/劇場版忍たま乱太郎製作委員会
そんな「忍たま」の13年ぶりとなる待望の劇場版アニメ『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』が、いよいよ12月20日より公開!作品に出逢った時から推し続けているファンはもちろん、成長するに従って卒業した大人たちをも巻き込んだブームの到来が予想される「忍たま乱太郎」シリーズ。30年以上も愛され続ける「忍たま」の魅力がたっぷりつまった劇場最新作を、ぜひスクリーンで確かめてほしい。
文/中村実香