NASCARに反トラスト法訴訟で反旗翻した23XIとFRM、2025年の参戦を保証する判決で”大勝利”

 23XIレーシングとフロントロウ・モータースポーツ(FRM)は、NASCARとそのCEOであるジム・フランスを相手取って反トラスト法(独占禁止法)違反訴訟を起こしたが、12月18日の判決で2025年の参戦が確約された。

 バスケのレジェンド、マイケル・ジョーダンが共同オーナーを務める23XIレーシングとFRMは、新しいチャーター(出走権)契約をめぐってNASCARと対立。契約への署名を拒否し、訴訟を起こした。

 23XIとFRMは、NASCARが透明性なく運営され、競争を抑制し、「チームオーナー、ドライバー、スポンサー、パートナー、ファンを犠牲にして不当に利益を得る」方法でスポーツをコントロールしていると非難している。

 訴訟により23XIとFRMのシリーズ参戦も危うくなっていたが、今回の判決で反トラスト法違反訴訟が継続される間、2025年シーズンの契約維持の仮処分を受けた。

 この裁定は来年に限ったものであり、今回の訴訟の原因となった2025年チャーター契約の争点となっている部分は、法廷闘争が続いている間は強制力を持たないとしている。またチャーター契約の解除条項についても判決で言及されている。新チャーター契約の解除条項は、契約後にチームがNASCARに対して反トラスト法違反の訴えを起こすことを防ぐことができるような内容となっているのだ。

 裁判所の命令は以下の通りだ。

「裁判所はここに、2025年のNASCARカップシーズン中のみ、以下のように限定的な仮差し止め命令を下す:被告(NASCAR)およびその代理人、使用人、従業員、弁護士、および被告と積極的に協働または参加しているすべての者は、原告(23XI/FRM)がすべてのチャーターチームに適用される2025年チャーター契約条件のもと、すべてのNASCARカップレースにそれぞれ2台のレースカーを参戦させることを許可しなければならない」

「ただし、2025年チャーター契約第10.3条における「解除」の文言は、本訴訟における原告の請求を解除または禁止する範囲において強制力を持たないものとする」

「さらに、NASCARは原告による2つのスチュワート・ハース・レーシングのチャーター購入の承認を拒否することを暫定的に差し止める。このチャーター購入は、他のチャーターチームと同じ条件で、2025年のNASCARカップレース全てに出場するために原告が使用する権利を持つが、この場合も本訴訟における原告の請求に対する解除の文言の適用を例外とする」

「両当事者の間でこの紛争が自主的に解決されない場合、2026年のNASCARレースシーズン開幕前に原告の請求に関する裁判を終了させることを定めた事件管理スケジュールが裁判所によって設定される予定である」

 23XIとFRMの代理人を務めるジェフリー・ケスラー弁護士は、このニュースに次のように反応した。

「我々は、判事が我々に有利な仮差し止め命令を認めた本日の決定を歓迎する。裁判所の判決により、23XIとフロントロー・モータースポーツは来年のカップシリーズにチャーターチームとして既存のマシンで参戦することができる。また、この判決により、NASCARは両チームがスチュワート・ハース・レーシングから3つ目のチャーターを購入することを承認し、2025年シーズンにこれらの車両もチャーターチームとしてレースに参戦することを認める必要がある」

「我々の主張の強さには自信を持っており、レースがチーム、ドライバー、スポンサー、そして最も重要なファンに利益をもたらす方法で、より競争的で公平なスポーツとなり、繁栄できるよう戦い続ける」

23XIの共同オーナーであり、3度のデイトナ500勝者であるデニー・ハムリンは、判決後より率直に『YESSSSSSS!!!!!!!』とSNSに投稿している。

 仮差し止め命令が認められるためには、原告(この場合はレースチーム)は差し止め命令による救済がなければ回復不可能な損害を被る可能性が高いことを証明しなければならなかった。

 11月8日に行なわれた仮処分申請で両チームは敗訴したが、その理由として裁判官は、チャーターを失うことで回復不可能な損害が生じることを証明できなかったと指摘した。その後、23XI/FRMは控訴を申し立てたが、状況の変化により控訴を取り下げ、新たなアプローチで仮処分申請を再提出することを選択した。裁判所にチャーターを認めるよう求めるのではなく、2025年チャーター契約のもとで解除条項を除いて競争することを認めるよう求めたのである。

 なお、この訴訟は11月に最初の差し止め命令を却下したフランク・D・ホイットニー判事から、現在はケネス・D・ベル判事の手に移っている。

 今回の判決により、23XIとFRMは現在進行中のスポーツに対する反トラスト法訴訟が解決するまでチャーターを維持することができる。また、23XIとFRMはすでに撤退したスチュワート・ハース・レーシングからそれぞれ3つ目のチャーターを購入することができ、NASCARはそれを承認しなければならない。

 今回の判決でもうひとつ興味深いのは、裁判所が 「NASCARは関連市場(アメリカ国内のプレミア・ストックカー・レーシング・チームの市場)において独占的/独占的権力を有している」と認定したことだ。

 F1とインディカーはNASCARにとって代替ではなく、「NASCARはどのレースチームがストックカーレースの最高峰で戦えるかを完全にコントロールしており、事実上100%の市場シェアを持っている」と述べている。これは、NASCARが違法な独占企業であると非難する反トラスト法訴訟のチームの主要な主張を支持するものだ。

 判決はまた、争点となっている解除条項に関して次のような疑問を投げかけている。

「独占企業は取引の条件として、独占企業が独占禁止法に違反しているというすべての主張から解放されることに合意することを当事者に要求することができるか。答えはノーである」

 裁判所はまた、最初の差し止め請求が失敗に終わったのとは対照的に、差し迫った損害の可能性が「差し迫ったもの」に変化したことが証明されたと判断した。彼らは、チャーターを失いオープンチームとして参戦した場合、23XIのドライバーであるタイラー・レディックの契約が無効となり、ライバルチームへの移籍が可能になることを挙げている。23XI/FRM傘下の他のドライバー数名も、契約の不確実性について同様の懸念を表明している。チャーターの欠如は、主要パートナーであるモンスター・エナジーやラブズ・トラベル・ストップスとの関係にも影響を及ぼすだろう。

 NASCARはこの決定を不服とすることも可能で、その場合は2025年シーズン開幕前に審理が行なわれることになる。