ツボ②【損失回避】失敗したくない心理
昔ヒットした安心感が購入動機に繋がっている
垂水 2つ目は「損失回避」です。買物での失敗や損を回避したいといった心理を、こう表しています。今の時代は、なるべく損をしたくない、失敗したくないという気持ちがすごく強まっているように感じます。若い世代に多いと言われますが、30~40代にも広がっていると思います。そんな風潮だからこそ注目されたのが、レトロ系や復刻系のモノです。今年はそんな昔懐かしいものを目にすることが多かった印象があります。
40年ぶりに復活した明星食品の「青春という名のラーメン」
初代デザインを踏襲したカシオの「G-SHOCK」
──確かに、40年ぶりに復活した明星食品の「青春という名のラーメン」、初代デザインを踏襲したカシオの「G-SHOCK」、50周年記念のルービックキューブなどいろいろありますね。
垂水 コンビニでは、昔のパンやスイーツが何種類も復刻されています。
50周年記念のルービックキューブ
──レトロ系や復刻系の人気と「損失回避」はどう繋がるのでしょう?
垂水 レトロ系や復刻系には可愛いとか面白いといったイメージがあると思います。それだけでなく、生活者の心理の根底には、昔のモノは失敗しなさそうなイメージが強く根付いているのではないでしょうか。なぜなら、昔の商品が復活する場合、それは当時流行っていたモノであることが大前提だからです。生活者はそれを理解していて、「復刻なら買って失敗しないだろう」という気持ちになるのではと思います。
──ただの復刻ではなく、アップデートして復活するケースが多いですね。
垂水 それも生活者に安心感を与える要因になっていると思います。昔売れたものが、今の時代に合わせてよりよくなって登場ということですから。
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ツボ③先回り・察知──高機能より多機能な商品
幅広く使える機能がユーザーニーズにマッチ
垂水 3つ目は「先回り・察知」。万が一を見越した丁寧な梱包や関連商品が近くにあるなど、様々な配慮が行き届いているというニュアンスです。なかでも2024年は“先を見越した、様々な配慮”を持つ商品が目立ったように思います。具体的には、メーカー側がニーズを見つけて「通常の使い方に加えて、新しくこういった使い方もできます」と提案する商品と言えるのではないでしょうか。
──湖池屋の「ランチパイ」がそれですね。ランチにもおやつにも食べられる新提案をしています。ちなみに、高機能な商品とは違いますか?
垂水 ある程度求められていると思いますが、そこまでの機能は必要とされていないかなと。それよりも、例えば今まで2つ必要だったものが1つで済むといった、多機能さを備えた商品が受けている印象を持っています。
湖池屋の「ランチパイ」
──イノベーターの「フロントオープン型のスーツケース」がまさにそうです。PCバッグとスーツケースが1つになったようなデザインです。
垂水 そういった商品は簡単・便利ですし、なるべく生活をシンプルにしたいという最近の志向とも合致しているのではないでしょうか。
イノベーターの「フロントオープン型のスーツケース」
──メーカーの提案がユーザーに刺さるものだったことも勝因ですか?
垂水 それはもちろんです。
──その意味では「キリンビール 晴れ風」も当てはまりそうです。購入金額の一部が自動的に寄付される施策が若い世代に支持されたんです。
取材・文/金山靖
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