2024年度(1月~12月)に反響の大きかったインタビュー記事ベスト10をお届けする。第1位は、宝くじで3億2000万円当選した男性の激変した人生を聞いた記事だった(初公開日:2024年11月7日)。誰もが一度は憧れる、宝くじの高額当選。今回、顔出しで登場する久慈六郎さん(仮名・58)は、ロト6で3億2千万円が当たり、人生が激変したひとりだ。それまで「楽しみといえば月に1度のキャバクラ通いぐらいで、はっきりいって人生の負け組でした」と話す久慈さんの人生はどう変化したのか?
当選後、部屋の床に2千万円を敷き詰めて…
2005年にロト6で1等3億2038万円に当選した久慈六郎さん(58)。当時、久慈さんは38歳(彼女いない歴5年)。社員8人の小さな会社に勤め、給料は税込みで月27万円。
「楽しみといえば月に1度のキャバクラ通いぐらいで、はっきりいって人生の負け組でした。ロト6は、当選するまでは、毎週千円くらいずつを3年ほど買い続けてました。
買い始めた動機は、なんとなく。買い方は直感とパソコンソフトを参考にするのが半々でしたね」(久慈さん、以下同)
そんな久慈さんの運命が変わったのが、2005年1月13日のこと。
「宝くじのホームページに登録してたので、抽選日にはいつも自宅のパソコンにメールが送られてくるんです。それで帰宅後にチェックしたら、『おい、当たってるよ!』って。1等を引き当てたのは、〈8、27、30、31、38、42〉で、すべて会社や当時の自分の年齢に関係する数字でした。
たぶん、どこかのチャンスセンターで、千円分くらいを買ったと思います。この夜はもう嬉しくて嬉しくて、握りこぶしで何度もガッツポーズをして、興奮して朝まで眠れませんでした」
ただし、幸せの絶頂をかみしめると同時に、早くもさまざまな心労に襲われたという。
「まずは当選券をどうしようかと思って。普段は財布に入れてるんですけど、落としたりカツアゲされたらどうしようって。かといって、家に置いておいたら、火事で燃えたりするかもしれないし。
さんざん悩んだ結果、1周まわって部屋の机の引き出しに入れておくことにしました。窓なんか簡単に蹴破れるボロアパートなんですけど、だからこそ逆に泥棒も入らないだろうと思って」
そして約1週間後、近くのみずほ銀行の支店に当選券を持ち込んだ。カウンターで「宝くじの件で」と伝えると、応接室に通されて、なにやら偉い人がぞろぞろとやってきたという。
「僕は、緊張でガチガチでした。でも、その場でお金ってもらえないんです。券が本物かどうかを本店で確認するらしくて、その日は預り証を発行してもらって退散しました。それで、数日後に連絡があって、改めて支店に出向き、入金された通帳をもらいました。
感想ですか? 最初は全額口座から下ろして、部屋に敷き詰めてみようかと思ったんですけど、それはやめて2千万円だけ下ろして敷き詰めましたね」
根が貧乏性の久慈さんは、突然、手にしたあぶく銭の使い方がまったく思いつかなかったという。
「使い道が思いつかないので、最初のうちはとりあえず眺めていました。その後は、大金を使ってみたい自分と、冷静になれよって説教する自分とがせめぎあっていたんですが、ようやく買った高価なものが、330万円のロレックスでした」
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ロト6当選を誰にも言わなかったワケ
高額当選などしてしまうと、ついつい人に言いふらしてしまいたくなるものだが、久慈さんはロト6に当選したことを誰にも話さなかったという。
「だって言ったら、命狙われちゃうじゃないですか。それに、急に派手な生活に変えちゃうと、会社の人とかにバレちゃいますから。
一度、会社にロレックスをしていったら、社長から『お前、安月給でよくこんな時計買えるな』って言われたので、『友達の香港土産のコピー品です』とかいってごまかしてました。そんな感じでとにかくお金を持ってないように演じてました」
だがその後、久慈さんの金遣いが徐々に荒くなっていくのに、そう時間はかからなかった。
夜な夜な、歓楽街を“パトロール”するようになり、外国人パブや高級クラブで散財。「月に1回のキャバクラ通いが楽しみ」だった男が、気づけばシャンパンタワーに興じていた。
「僕はもともと全然モテなかったんです。男子校出身だし、勤め先はおばちゃんばっか。それが、ちょっとお金の匂いがし始めると、みんなが寄ってくるようになって。
それまで自分なんかに見向きもしなかった保険のセールスレディが、急に色目を使ってくるものだから、そりゃ楽しくなっちゃいますよね。それで、うっかりマンションを買い与えてしまったり(苦笑)。飲み屋のオネーチャンにも、お金目当てでだいぶタカられました」
一方で、当選から三か月後に匿名で始めたブログがメディア関係者の目にとまり、週刊誌に取り上げられたり、テレビ番組に呼ばれることもしばしば。
「最初は、ロト6の当選話が面白いかなと思って、気軽に書き始めたんです。そしたらコメント欄に『氏ね』とか『妄想』とか『自宅をばらす』とか書かれてかなりへこみました。
女性からと思われるメールもたくさんきたんですが、たいていは『ご飯を食べに行きませんか』とか『お金を貸してください』といったお金がらみのものばかりでしたね(苦笑)」
だが、そこは“持ってる男”。このブログが書籍化されると4万部のヒットに。さらに2008年には、この書籍を原作に、テレビ朝日系列でドラマ化されることに。主演はなんと、反町隆史だった!
「僕の役を演じるのが反町さんで、主題歌はEXILEさんですよ。調子に乗るなっていうほうが無理ですよね。飲み屋とかに行ってオネーチャンに『これ、俺なんだよ』って言ったりしちゃって(笑)。書籍も売れて印税は入ってくるし、『先生、先生』ってちやほやされて。当時はまさに人生の絶頂でしたね」
だがこの幸せも、そう長くは続かなかった…。(後編に続く)
取材/集英社オンライン編集部