「死刑がなくなってほしい。誰にもこんな経験をしてほしくない」“麻原彰晃の娘”が語る、オウム真理教の教祖を父にもつということ【2024 インタビュー記事 7位】

父が逮捕された年齢になって思うこと

ーー今、お父様に対して思うことはありますか?

穏やかに幸せでいてくれたらいいなと思いますね。父が笑っているといいなって。私はずっとお父さんのことを大切に思っていたよって伝えてあげたいです。父の人生がどうだったのかというのは父にしかわからないから、受け入れるしかないかなって。

ーー逮捕されたあとも、接見禁止のためお父様とはほとんど会えなかったんですか?

10年近く会えなくて。それで10年ぶりに会ったときには、もう誰かわかってくれない状態だった。父が外的刺激に反応しない「昏迷状態」にあるって精神科医の先生が言っていて、突然、大きい声で叫んでも、びっくりもしない。パーンと手を叩いても反応しない。だから話もできなかったし、名前も呼んでもらえなかったし、コミュニケーションは取れなかったですね。

ーー事件のことも聞きたかったですか?

いいことも悪いこともどんなことでも聞きたかったですね。今、私は父が逮捕されたときの年齢なんですよ、ちょうど。だからもっと対等な目で、前は子どもだから甘えきっていたけど、今は大人と大人で話せるから。

ーー麗華さんの著書『止まった時計』の中で「オウムは救済だという一方的な価値観の押しつけによって多くの人の権利を奪いすぎました」という風に書かかれていましたけども、どのような考えがあれば教団は事件を起こさずに済んだと思いますか?

どんな理由があっても他人の権利は侵害しちゃいけない。絶対に踏み越えちゃいけない一線がある、ということを理解していれば違ったのかなと思いますね。何を信じても自由だけど、行動するときに相手の権利を侵害することであったらやっちゃいけない。そういう信仰とか内的なものと、行動を分けないといけなかったと思います。

ーー加害者家族の方で苦しんでいる方がたくさんいらっしゃると思うので、最後によかったらそういう方に向けてメッセージをいただければと思います。

とても苦しくてつらくて、孤独で、相談できる人が誰もいない状況にあると思います。その状況で諦めてしまわずに、誰でもいいから助けを求めてほしいです。私も理事をしている一般社団法人「共に生きる」もありますので、相談していただければなと。きっと今が一番つらい。これからちょっとずつ、よくなっていくと信じていきましょう。

取材/たかまつなな/笑下村塾

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