激動の時代を駆け抜けたアイドル・中山美穂『All Time Best』から彼女の功績を振り返る

1985年にTBSドラマ「毎度おさわがせします」にて14歳で芸能界デビューし、同年にアイドルとしてもスポットライトを浴びた中山美穂。

「花の85年組」と呼ばれるアイドルたちの中でも一際目立つ存在であり、数々のトレンディドラマへの出演や、当時の音楽番組の最高峰「ザ・ベストテン」への出演など、昭和から平成に掛けての激動の時代を駆け抜け、一時代を築いたまさに究極のアイドルであった。

レコード、そしてCD全盛期の80年代半ば~90年代半ばの中山美穂の楽曲は、昭和アイドルのみならずJ-POPを語るうえで欠かすことはできない曲ばかりがズラリと並ぶ。今回は54歳という若さでこの世を去った中山への哀悼の意を込めて、2020年にリリースされた40曲入りのベストアルバム『All Time Best』に収録されている楽曲の中から厳選した曲を、当時の反響や世相も交えながら、彼女の歌手としての功績と軌跡を振り返ってみたい。

「色・ホワイトブレンド」


1986年、資生堂の春のキャンペーンソングに起用された、彼女のキュートな魅力が堪能できるポップソング。当時の中山美穂といえば、ドラマ『毎度おさわがせします』や、映画『ビーバップ・ハイスクール』のツッパリ・不良路線の印象が強かっただけに、そのイメージを覆すような春の息吹を感じるアイドルらしいこの曲は、男性だけでなく女子中高生をはじめとした同性への支持が広がるきっかけにもなった。作詞・作曲はシンガーソングライターの竹内まりやが担当。一度聴いたら覚えてしまうメロディアスでコケティッシュなフレーズは流石の一言だ。

「ツイてるね ノッてるね」


松本隆&筒美京平という日本を代表する黄金コンビが手掛けた、BPM160という当時としてはかなり速いテンポで繰り出されるディスコナンバー。初期の中山美穂を代表する1曲であり、この曲で第28回日本レコード大賞の金賞を受賞している。この曲は資生堂の秋のキャンペーンソングとなっており、自身が主演のドラマや歌番組「ザ・ベストテン」の出演など、彼女を見ない日の方が珍しくなりはじめた頃だった。

「WAKU WAKU させて」


中山美穂×松本隆×筒美京平の黄金トリオの傑作との呼び声も高い、「ツイてるね ノッてるね」の打ち込みダンスサウンドをさらに洗練させた洋楽チックなユーロビート歌謡。16歳の少女が歌うにはかなり刺激の強い歌詞が並ぶが、それがまた中山の魅力を押し上げていると言っていいだろう。ちなみにこの曲のPARTY VERSIONが、当時ブームだった12インチシングルとして再度リリースされている。このような動きも1980年代後半ならではだ。

「CATCH ME」


中山美穂が初めてオリコンシングルチャートで1位を獲得した記念すべき1曲は、数多の名曲を手掛けた角松敏生がプロデュースした、1987年発売のギラギラなダンスチューン。この楽曲のジャンルであるユーロビートという単語が定着しだしたのもこの頃で、グルーヴィーなサウンドに分厚いシンセの音、勢いのある冒頭の掛け声など、楽曲の節々からバブル期のド派手な雰囲気を感じ取ることができるだろう。クールな表情で歌い踊る彼女の姿は当時17歳とは思えないほどに艶があり、この曲から徐々に大人っぽい楽曲が増えていくことになる。

「You’re My Only Shinin’ Star」


中山美穂の歌声をじっくり堪能できるメロウなバラードナンバー。元々は1986年発売の3rdアルバムに収録されていた楽曲だったが、ファンからの人気の高さもあって1988年に再レコーディングのうえシングルカットされ、その勢いのまま第30回日本レコード大賞で金賞を受賞する。自身が“中山美穂”役として出演し彼女の愛称・ミポリンが定着したきっかけのドラマ『ママはアイドル!』の挿入歌で歌われたことも話題となった。

「Rosa」


中山美穂の楽曲の中でもかなり異色なラテンハウス歌謡。ダンサブルで情熱的なサウンドと、難解でありながらも所々のフレーズが耳に残る本人作詞のリリックが特徴的で、有線放送を中心にロングヒットを記録したこともあって、ノンタイアップながら1991年の「NHK紅白歌合戦」でも披露された。バックダンサーを従えて妖艶に踊り歌う中山の姿が印象に残っている人も多いことだろう。

「遠い街のどこかで…」


クリスマスシーズンの定番ソングにもなっている、遠距離恋愛の相手を想う暖かなラブバラード。当時の恋愛ドラマブームの中心を担ったフジテレビ月9枠の主題歌であり、クリスマスが近づくと街のあらゆる場所で流れるくらい、今でも様々な世代に愛されるヒット曲である。スッと入ってくるメロディと、優しげな彼女の歌声がじんわりと心に沁みわたる。

「世界中の誰よりきっと」


中山美穂とWANDSによるコラボレーション楽曲で、発売後20日で売上100万枚を突破し、最終的に180200万枚以上を売り上げた超がつくほどのヒットソング。これぞ織田哲郎と呼ぶべき素晴らしいメロディも相まって数々の賞を総なめにしており、今でも彼女の代表曲として真っ先に挙げられることが多い。中山美穂のビーイングプロデュース楽曲という観点からも貴重な1曲である。

「ただ泣きたくなるの」


1994年、23歳の頃にリリースしたしっとりとした空気感に包まれる名バラードで、愛しさがあふれ出しているような沁みる歌声と、サビの綺麗なファルセットが印象的だ。独身女性から結婚する友達へ贈る曲でもあり、当時はこの曲が結婚式で歌われることも多かった。ダウンタウンの浜田雅功と初共演したドラマ「もしも願いが叶うなら」の主題歌にもなっており、単独では初となるミリオンセラーを記録するなど、記憶にも記録にも残る1曲となっている。

今回9曲をピックアップして紹介したが、「JINGI・愛してもらいます」「Witches ウィッチズ」「Mellow」など中山美穂の代表曲は数多く存在する。シティ・ポップブームなど昔の曲が再評価される昨今、栄光輝かしい中山の楽曲たちも時代とともに語り継がれていくことだろう。

2025年3月19日に、「ザ・ベストテン」の歌唱シーンを中心にまとめたBlu-ray5枚組をデジタル・レストアとサウンド・マスタリングで永久保存版として発売することが発表された。元々は来年の歌手活動40周年記念としてリリース予定だった作品で、これが追悼作品となってしまうのは悔しいところだが、日本中から愛された中山美穂の楽曲を耳に焼き付けてもらいたいと願う。

Release information





中山美穂『All Time Best』

【収録内容】

[DISC-1]

01.「C」

02.生意気

03.BE-BOP-HIGHSCHOOL

04.色・ホワイトブレンド

05.クローズ・アップ

06.JINGI・愛してもらいます

07.ツイてるね ノッてるね

08.WAKU WAKUさせて

09.「派手!!!」

10.50/50

11.CATCH ME

12.You‘re My Only Shinin’ Star

13.人魚姫 mermaid

14.Witches ウィッチズ

[DISC-2]

01.ROSÉCOLOR

02.VIRGIN EYES

03.Midnight Taxi

04.セミスゥィートの魔法

05.女神たちの冒険

06.愛してるっていわない!

07.これからのI LOVE YOU

08.Rosa

09.遠い街のどこかで・・・

10.Mellow

11.世界中の誰よりきっと

12.幸せになるために

13.あなたになら・・・

[DISC-3]

01.ただ泣きたくなるの

02.Sea Paradise–OLの反乱−

03.HERO

04.CHEERS FOR YOU

05.Hurt to Heart ~痛みの行方~

06.Thinking About You ~あなたの夜を包みたい~

07.True Romance

08.未来へのプレゼント

09.マーチ カラー

10.LOVE CLOVER

11.A Place Under the Sun

12.Adore

13.君のこと

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