MotoGP2024年シーズン終了後に明らかとなったKTMの経営危機問題。彼らはさらなるリストラと、傘下企業の売却を進めている。
多額の負債を抱えたKTMは現在経営再建に向けた動きを進めているが、12月17日には、MVアグスタの売却が明らかにされた。
KTMの親会社であるピエラー・モビリティAGは、2022年11月にMVアグスタの株式の25.1%を取得。2024年3月には、同社の株式の過半数を取得した。
しかしこの経営危機の中、MVアグスタの株は売り出されることに。オーストリアの裁判所が明らかにしたところによると、KTM側が保有するMVアグスタの株式の全てとなる50.1%が売却されることになるという。
なお管財人はすでにKTM再建に向け、MVアグスタ・サービスの全株式の売却を行なっている。
売りに出されるMVアグスタの株に関しては、元オーナー側が再び会社の経営を取り戻すことに関心があるとも言われている。
なおMVアグスタも今回経営危機に陥っているKTM同様に過剰生産に悩まされていて、倉庫には2000台に及ぶ在庫が積み上がっていると見られている。そのため、需要の減少に合わせて生産は縮小される予定だ。
MVアグスタの業績悪化はイタリアの従業員にすでに影響を及ぼしていて、組合は会社側との連帯協定を結んで給与削減に合意している。
■ピエラー・モビリティの所有構造再編へ
さらにピエラー・モビリティは所有構造の再編に向けても動き出している。今週彼らは、シティグループ・グローバル・マーケット・ヨーロッパへと再編を委託したと明らかにした。
その声明では次のように説明されている。
「ピエラー・モビリティAGは現在潜在的な戦略的投資家や金融投資家との協議を行なっている。一方は既存のパートナーであり、もう一方では新規の戦略的投資家や金融投資家との協議を実施中だ」
「このプロセスを全ての利害関係者の利益のために、構造的かつ透明性のある形で行なっていくために、シティグループ・グローバル・マーケット・ヨーロッパが本日この投資プロセスの委託を受けた」
「この投資プロセスの狙いは投資家がピエラー・モビリティAGの必要とするキャッシュの増資や、金融取引へ参加することだ。これらのキャッシュリソースは、ピエラー・モビリティグループや、特にKTM AGを強化するために使用される」
しかしKTMには更に問題が起こりつつある。オーストリアの報道によると、オーストリア金融当局が情報開示規則を遵守していたかどうかの調査を開始したことが分かった。これは特に5月から11月にかけて行なわれた業績予想の修正と経営陣の交代に関するものだ。
上場企業は内部情報を直ちに公開し、全ての市場参加者が同時に入手できるようにしなくてはならず、違反した場合には罰則が適用される。当局側はピエラー・モビリティに対して、この件に関する説明を求めている状態だ。
■さらなる人員削減も進行
そしてKTMはさらに人員削減を進めるようだ。すでにKTMは750人の解雇を進めていたが、ORFの報道によると、2024年内にさらに50人が職を失う見込みとなっている。
なおKTMに対しては12月の賃金が以前約束されていたような、クリスマス前までの支払いが行なわれていないことから、オーストリア北部労働会議所からは、KTMに対するさらなる「信頼の喪失」があったと言及されている。
そして最初の債権者の会合が12月20日に地方裁判所で開催される。その後破産管財人によって報告書が提出され、KTM AGとその子会社2社(どちらも自己破産を宣言)が、事業を継続できるかどうかを判断することになる。