【セリフの尺に悪戦苦闘した収録】
―実際にムファサとタカの声の演技をしたときのことを教えてください。
右近「僕はずっと歌舞伎の世界で動きと言葉を連動させて演技をしてきたので、声だけの仕事は難しかったです。特に大変だったのは、アメリカの俳優さんのセリフの尺に合わせて秒数をチェックしながら演技しなければいけないこと。ずっと秒数を凝視していたので、数字が怖くなってしまって、外を歩いていても、人の会話の長さが気になり、どれくらいの秒数で話しているんだろうと考えてしまいました」
松田「僕も苦労しました。でも何度も演じるうちにセリフを覚え、身振り手振りも大きくなって、思わず膝を叩いちゃって、その音が大きすぎてNGになったこともありました」
右近「わかる。僕も慣れてくると身振り手振りがついて話すようになりましたね。ゲンゲンの言うように音を立ててはいけないので、裸足になって声の収録をしていました」
(広告の後にも続きます)
【孤独なムファサと無邪気なタカ】
―おふたりが声を担当したムファサとタカの魅力を教えてください。
右近「ムファサは孤独なんです。その孤独を拭って生きる力につなげていくのがムファサ。あるシーンでムファサは “子どもの頃の故郷の香りがする” というのですが、僕はそのセリフが大好きなんです。埋まらないムファサの孤独が感じられて心に沁みるんですよ。でもムファサは、みんなを信じて、みんなの力を引き上げることで、孤独を拭い去っていく…。歌舞伎の世界も似ていて、歌舞伎役者も孤独になりやすい瞬間がある。でも俳優それぞれの個性が集まったとき、力と温かみが生まれる。共通点があるからこそ、僕はムファサに共感できたんだと思います」
松田「スカーになる前のタカはとても無邪気で、思いついたことはすぐ言葉にする可愛いヤツなんです。ムファサに対して、大きな存在だとリスペクトする気持ちをたくさん持っています。自分も芸能界の先輩方に対して尊敬する気持ちがたくさんあるので、そういう気持ちをタカに重ねて演じました。そこは自分に似ているし、演じてますますタカが好きになりましたね」
―そんな可愛いタカがスカーになるという……。
松田「いろいろな負の感情が蓄積されてだんだんスカーになっていくのですが、演じているときにセリフや音楽や表情で “あ、もうタカの中にスカーがいる” と思う瞬間がありました。僕はそんな変化するタカの感情を噛み締めながらも楽しんでタカを演じました」
―もうムファサとタカにピッタリですね。それぞれムファサっぽい、タカっぽいと思うところはありますか?
右近「ゲンゲンの魅力は “可愛げがあるところ” そこがタカっぽいですね。僕は次男気質で、周囲に可愛がってもらってきたけど、30代になり、後輩ができて “可愛いな” と思うようになりました。そんなときにゲンゲンと出会ったから、ゲンゲンは可愛い存在として最強だし、タカにぴったりだと思います」
松田「最強の兄貴が芸能界にできました! ケンケンはムファサであり、僕の兄貴です(笑)。お兄ちゃんというより兄貴って感じなんですよね。ホントに飲みに行きたいです!」
右近「わかった。じゃあ、今日行こうか!(笑)」