現地時間12月19日、米スポーツ専門局『ESPN』の“NBA TODAY”の番組内で、2025年の「ネイスミス・バスケットボール・ホール・オブ・フェイム(以降、殿堂)」の候補者が発表された。
北米委員会とインターナショナル選手委員会、女子委員会から初ノミネートされたのはカーメロ・アンソニー(元デンバー・ナゲッツほか)やマルク・ガソル(元メンフィス・グリズリーズほか)、ロバート・オリー(元レイカーズほか)、アマレ・スタッダマイアー(元フェニックス・サンズほか)、スー・バード(元WNBAシアトル・ストーム)、マヤ・ムーア(元WNBAミネソタ・リンクス)といった豪華な面々。
そのなかで、2022年にNBAを離れたドワイト・ハワード(元オーランド・マジックほか)も初ノミネートされた。この発表に本人はXで「おっと、これは驚いた」とリアクションしている。
今後は「NBAオールスター2025」の開催地カリフォルニア州サンフランシスコのベイ・エリアで2月14日に最終候補が発表され、4月5日にNCAAトーナメントのファイナル4(準決勝)が開催されるテキサス州サンアントニオで殿堂入りメンバーが決定する。
まだ殿堂入りが決まったわけではないが、ハワードはそれに十分値するキャリアを送ってきた。
2004年のドラフト全体1位指名でマジックに入団すると、208cmの高さと驚異的な身体能力を武器にリーグを席巻。3年目の2006-07シーズンにオールスターに初選出、平均17.6点、12.3リバウンド、1.90ブロックの成績でオールNBA3rdチーム入りを果たし、翌シーズンからオールスターとオールNBAチーム、オールディフェンシブチームの常連となった。2008-09シーズンからは3年連続で最優秀守備選手賞(DPOY)に輝いている。
DPOYはルディ・ゴベア(ミネソタ・ティンバーウルブズ)、ベン・ウォーレス(元デトロイト・ピストンズほか)、ディケンベ・ムトンボ(元アトランタ・ホークスほか)が歴代最多タイとなる4度の受賞を誇るものの、3年連続で輝いたのはハワードのみだ。
NBAキャリア18シーズンで、オールスターとオールNBAチームに各8度、オールディフェンシブチームに5度名を連ねたほか、5度のリバウンド王、2度のブロック王にも輝いた。2020年にはレイカーズで優勝も経験したが、輝かしいタイトルのほとんどはマジック時代のものである。
なかでも2007年からスタン・ヴァン・ガンディHC(ヘッドコーチ)が指揮官に就任すると、マジックはハワードを中心とした布陣で2008-09、2009-10に2シーズン連続で球団史上2位の59勝23敗(勝率72.0%)を記録。2009年にはNBAファイナルまで勝ち上がった。
今月17日に公開された自身のポッドキャスト番組『Above The Rim with DH 12』で、ハワードは恩師への思いをこう口にしていた。
「スタン・ヴァン・ガンディのおかげだ。彼が俺のことを導いてくれたんだ。最初の頃こそ、彼は俺を引き立てようとせず、ふくれっ面をしていた。けど、そこから彼は俺の能力に応えてくれたんだ」「彼は俺のことを最高の方法で生かしてくれた。彼には俺がどんな選手になれるのか、どこまで上りつめることができるのか見えていたんだ。それもあって休む間も与えてくれなかったし、俺自身もずっと頑張ってやってきた。俺にチームを背負って立つようにと伝えてくれたし、俺に落ち度があれば説教もしてくれた」
マジックで5シーズン指揮を執り、ハワードをリーグ最高級のビッグマンへ仕立て上げたヴァン・ガンディは、2019年の時点でマジックの地元メディア『The Orlando Sentinel』へハワードの殿堂入りをプッシュしていた。
「もし彼が殿堂入りできないなら、とんだ茶番だし、信じられないにもほどがある。彼は5回もオールNBA1stチームに選出され、最優秀守備選手賞には3年連続で輝いた。アロンゾ・モーニングやディケンベ・ムトンボといった殿堂入りセンターたちと比較しても、ドワイトは素晴らしい実績を残しているのは明らかだ」
NBAの75周年記念チームに落選したとはいえ、ハワード本人も自身のNBAキャリアに誇りを持っている。2022年夏に米メディア『Bally Sports』のブランドン“スクープB”ロビンソンから殿堂入りについて聞かれた際には次のように話していた。
「それは自分1人で決められることじゃない。でもいつか自分が(殿堂入りに)ふさわしいと承認を得る日が来ると思っている。その日まで、俺は向上を続けて笑顔を絶やさず、人生を楽しんでいく。俺の経歴はすでに自分で言う必要がないほど凄いものなんだ。バスケットボールをプレーする機会を手にすることができてハッピーだね。そして自分がもの凄い仕事をやってきたんだと思っている」
あれから約2年半。ハワードは殿堂入りする機会を手にした。マジック時代の全盛時に攻守両面で見せた暴れっぷりは歴代有数の支配力があり、マジックをタイトルコンテンダーへ押し上げてたことを考えれば、この男が初年度で殿堂入りを飾ったとしても決して驚くべきではない。
文●秋山裕之(フリーライター)