数あるアニメ映画のなかには、トラウマ級の内容のものもありました。ホラー作品のような分かりやすい怖さではなく、一見楽しそうな映画に見えて「こんなに怖いの!?」と驚くような作品もあります。心構えをしていないところに不意打ちでやってくるので、下手なホラーよりずっと恐怖を感じてしまうかもしれません。
劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』キービジュアル (C)つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス「深き魂の黎明」製作委員会
【画像】え…っ?「液が…」 こちらが映画『メイドインアビス』みんなのトラウマ「プルシュカ」と「カートリッジ」です(3枚)
ほんわかとしたビジュアルに騙されるな!
数あるアニメ映画のなかには、明らかに絵柄からして「大人向け」で、さらにトラウマ級の恐ろしい作品もいくつかあります。ただ、そういった分かりやすい恐怖系の作品ではなく、一見「トラウマ」とは程遠そうなアニメ映画が、急に「闇」を見せてくる瞬間ほど怖いものはありません。
たとえば『クレヨンしんちゃん』の劇場版シリーズでいえば、2006年公開の『伝説を呼ぶ 踊れ!アミーゴ!』はトラウマ製造作品として有名です。ただほかの劇場版シリーズも負けておらず、特に『爆睡! ユメミーワールド大突撃』には大人でも戦慄するようなシーンがありました。
同作は「夢」を主なテーマとしており、劇中で春日部の人びとが悪夢に苛まれる「集団悪夢シンドローム」が発生します。その元凶ともいえるゲストヒロイン「サキちゃん」の悪夢は、かなりショッキングなものでした。
はじめはサキちゃんママとの思い出が紡がれていくのですが、夢の途中でいきなり母親がおぞましい姿に形を変えるのです。その恐ろしさは、みんなのトラウマで知られる『伝説を呼ぶ 踊れ!アミーゴ!』の風間くんママを超えるかもしれません。
このように何の心構えもせずに見るとキケンなアニメ映画は、ほかにもたくさんあります。言わずと知れた細田守監督の傑作『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』も、意外とこの手の話題に名前が挙がりがちな作品です。『ONE PIECE』劇場版第1作目と同時上映された同作は、わずか40分という尺のなかで当時の子供たちやアニメファンに大きな衝撃を与えました。
その最大の要因は、やはり「ディアボロモン」の存在でしょう。最初はネット上で産まれた「クラモン」というかわいらしいデジモンだったのですが、どんどん進化を繰り返して禍々しい姿へと変貌していきました。そして最終局面で映し出される、増殖を繰り返した無数のディアボロモンたちの絶望感は、忘れがたいでしょう。
大人たちの関与できないところで何かとんでもない事態が起こっているということを、ディアボロモンのビジュアルが圧倒的な説得力で物語っていたように思えます。
また、子供から大人まで楽しめるジブリ作品にも、ところどころで怖かったり不気味だったりするシーンが描かれています。なかでも子供の頃に見たトラウマ作品としてよく名前が出てくるのが『千と千尋の神隠し』です。
「カオナシ」を筆頭に恐ろしい異形の存在がいろいろと出てくる作品ではありますが、そもそも異世界に迷い込み、頼れるはずの両親と離別するという導入部は、どこか子供の根源的な恐怖や不安を描いたような物語の始まりでした。
かわいらしい絵柄ながら、あまりの内容に年齢制限がかけられたのが、大人でも観るのに勇気が必要なアニメ『メイドインアビス』の劇場版です。同作は人間の少女「リコ」と、ロボットみたいな少年「レグ」が「アビス」と呼ばれる大穴を冒険していくファンタジーで、かわいらしいキャラクタービジュアルは「トラウマ」描写があるような作品にはとても思えません。
しかし大穴を進んでいくにつれて冒険はどんどん過酷になり、思わず目を背けてしまいそうになるような描写も登場します。そして2020年の劇場版『メイドインアビス 深き魂の黎明』では、さらに「度し難さ」が強化され、レイティングも公開直前に「R15+」に指定されました。
もちろん「ボンドルド」と呼ばれるマッドサイエンティストの所業が大体悪いのですが、恐るべき生態を持つ原生生物たちも、レイティングの上昇に寄与していた印象です。特に冒頭に出てくる「クオンガタリ」と呼ばれる生物の繁殖行動は、アニメーションで色が付いて動くことでさらに衝撃的になっていました。