指をスポスポと塩ビのパイプに出し入れる男性。ときにはパイプの端を叩いて、聞こえてくるのは「きらきら星」のメロディ…… 何ともめずらしい方法で音楽を奏でる模様がSNSで話題となりました。

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 話題の主は、日用品楽器ユニット「kajii」、音楽ユニット「あの空によせて」として活動するアーティストの創さん。身の回りのあらゆるものを材料に、これまでに150種類以上のオリジナル楽器を独学で製作しています。

 今回話題になった楽器は、「SPOT(スポッと)」と呼ばれるオリジナル楽器です。膝丈くらいの高さのシンバルスタンドに固定された丸いテーブル状の板に、蓮の花のような同心円状の穴を30個空け、長さの異なる塩化ビニール製のパイプを下向きに差し込んだ構造になっています。

 創さんのXポストでは、この楽器を使って「きらきら星」を演奏する様子が。板の穴に指先を出し入れした際の「スポッ」という音や、板を細かく叩くことでパイプを振動させて出す「ビャンビャン」という音を組み合わせ、リズミカルかつ透明感のある不思議な音色を作り出していました。





 創さんに話をうかがうと、製作期間は実験や設計1日、実制作2日の計3日。材料はホームセンターで購入できる素材を使っており、「板の穴あけやカット、塩ビのカットと接着、面取りくらいでかなり簡単に作れます」とのことです。一見、とてもシンプルな構造に見えますが、意外な部分の設計に苦労したのだそう。

 「実は創作楽器は『台(の設計)』が難しいんです。今回の楽器はシンバルスタンドで高さを出しているのですが、一点留めのため、回転しやすいのが弱点です。ただ、演奏では逆にそれを活かして転調させてみました」(創さん)







 単純にスポスポと穴に指を出し入れするだけかと思ったら、実際の演奏にもかなりのコツが必要だといいます。創さんいわく、「パイプの穴に素早く指を入れて抜く動作がそもそも難しい」のだとか。

「一定のテンポでなかなか音を出せません。ミス率も高く、指を痛めやすいです。他の方に弾いてもらった際も皆さんなかなか音が出なかったので、指にピッタリ合ったパイプ径を見つけるのがまず大事だと思います」(創さん)

 簡単そうに見えて、美しく弾くためには高度な技術やセンスが必要な“スポスポ楽器”「SPOT」。来年には創さんの手掛けたオリジナル楽器を展示するイベントの構想があるそうで、開催が決定すれば、実際に触れるようにしたいとのことです。

 「曲に必要な音だけ作って横一列に並べ、順番にスポスポやれば曲になる装置を作ってもいいかなと思いました」と、今後のアイデアを語る創さん。主宰する日用品楽器ユニット「kajii」のウェブサイトでは、他にもさまざまなオリジナル楽器の製作工程を見ることができる他、全国各地で子ども向けの参加型演奏イベントを開催しています。

<記事化協力>

創@自作楽器さん(@kajiisou

<参考>

日用品楽器ユニット「kajii」

音楽ユニット「あの空によせて」

(天谷窓大)

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 天谷窓大 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2024122104.html