「40年住んでたおじいさんが退去しました」投稿された空き部屋の写真に心ザワつく人続出「エモい」「グッとくる」「え、事故物件感‥」気になる、おじいさんの行方は【2024 変な部屋記事 1位】

2024年度(1月~12月)に反響の大きかった変な部屋記事ベスト5をお届けする。第1位は、Xのポストを見た人がザワザワとした部屋の写真にまつわる真実を解き明かした記事だった(初公開日:2024年4月1日)。「40年住んでたおじいさんが退去しました。」歴史を感じる和室の部屋の写真とともに投稿されたこのポストは、X上で大きな反響を集めた。いったいおじいさんはその後、どこへ行ったのだろうか。

40年住んだ部屋から退去したおじいさんの行方

3月29日、かなり年季が入った部屋の写真とともに、〈40年住んでたおじいさんが退去しました。〉という短い言葉がX上に投稿された。このポストは瞬く間に拡散。多くの人の胸を締めつけたようだ。

写真に写った部屋の中にはもの一つないが、使い込まれたその様子から、人が長年住んでいた形跡はある。すでに荷物をすべて運び出し、部屋主は退去していったようだ。

床一面に敷かれた畳には大きなシミがついており、色もだいぶ変色している。畳だけではなく、壁も窓ガラスも、なにもかも色あせているが、窓から差し込む光に照らされるその部屋は、どこか趣があり、長い歴史を感じさせる。

このポストは2000万以上のインプレッションを集めるなどSNS上で大反響を呼び、Xユーザーたちから〈このポストだけで、ひとつの映画を観たような気分になる〉〈何とも言えない風情というか哀愁というか、エモい気持ちにさせられます〉〈この部屋から日本の40年を一人で見続けてきたんだなと思うと、なんかグッとくる〉など、部屋の画像にストーリー性を感じる声があがった。

しかしその一方で、〈なんだろうこの事故物件感…〉〈どちらに退去なさったのか気になる…〉〈おじいさんが退去した理由はなんだろな〉〈退去ではなく逝去では…〉など、おじいさんのその後を心配する声も相次いだ。

おじいさんのその後について、このポストの投稿主・テツクルさんに直接お話をうかがった。

「逝去とか畳にシミが、とか縁起でもないコメントたくさんいただきましたが、 アパートの老朽化に伴う立退きで、おじいさんは私が用意したオートロック付ワンルームマンションに転居しました。無駄にエレベーターで昇降を繰り返したりして楽しんでるようです。部屋の風呂は狭いとのことで、銭湯通いは続けるそうです。
40年前というと昭和のバブルが始まった頃ですかね。アパートの大家さんも代替りして、おじいさんは誰よりも街の変化に詳しかったです。 転居先もアパートから徒歩で2分。住環境はかなり改善されたので、いつまでも長生きしてほしいです」(テツクルさん)

おじいさんは今も元気で、新しい部屋で不自由なく過ごしてるようだ。40年間住み続けた家から引越しをするのはかなりのストレスにもなるとも思われたが、楽しそうでなによりである。

ところで、賃貸住宅の平均居住期間がどのくらいかはご存じだろうか。

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賃貸住宅で引越しする頻度はどのくらい?

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が2022年に発表した調査によると、単身世帯は平均3年3か月、ファミリー世帯は平均5年1か月であった。

そして少し意外かもしれないが、首都圏のほうが他の地域よりも平均居住期間が長く、首都圏が単身世帯は平均3年6か月、ファミリー世帯は平均5年6か月なのに対して、首都圏・関西圏を除くエリアでは単身世帯は平均3年1か月、ファミリー世帯は平均4年10か月となっている。

これは首都圏の賃貸物件は敷金・礼金が高くて引越しのハードルが高いほか、転職をしても電車などで通勤できる範囲が広いため、わざわざ引越さなくてもいいことが関係しているようだ。

芸能人でいえば、お笑いコンビ・オードリーの春日が、「むつみ荘」という家賃3万9000円の木造2階建てアパートに、結婚するまでの約20年間住み続けていた。

また、お笑いトリオ・安田大サーカスのクロちゃんは、上京以来、15年間同じマンションに住み続けてきた。その理由は金銭面ではなく、引越しをするのが面倒だからというものだったが、2021年にバラエティー番組『水曜日のダウンタウン』(TBS系)内でついに引越し。築63年の物件が、老朽化で取り壊しが決まったための立ち退きで、まさに、今回のおじいさんのケースと同じであった。

しかし、こうして老朽化した物件を取り壊しての立ち退きがスムーズに決まる例ばかりではない。全国では空き家が増えており、その数は1000万戸にせまる。東京都・世田谷区では、土地の価格が高いにもかかわらず、空き家を約5万戸かかえており、その数は日本一だ。

2023年にNHKスペシャルで放送された『老いる日本の“住まい” 第1回 空き家1000万戸の衝撃』では、東京都・中央区に空き家を抱える66歳の男性に密着。ボロボロになった家を放置してしまっている理由について、相続の権利がややこしかったことにくわえて、思い出がつまった家を手放していいのか? という気持ちに駆られたことだと答えていた。

歴史ある部屋には、“エモい”の一言では片付けられない、さまざまな事情があるようだ。

取材・文/集英社オンライン編集部