“サムライ”について対談し、まるで修行のような試し斬りに挑戦する動画がYouTubeで反響を集めています。刀や侍に興味がある海外の視聴者からもさまざまな反応が寄せられました。
動画が投稿されたのはGeeXPlus(ギークスプラス)所属のユーチューバー アニメマンのYouTubeチャンネル「The Anime Man」(@TheAnimeMan)。アニメマンさんが日本のアニメについての動画や、日本人へのインタビューなどを発信しています。
今回は、剣術家「藁斬り抜刀斎」(@warakiribattosai)さんとの対談。普段、試し斬りや日本刀に関する動画を中心に投稿している藁斬り抜刀斎さんへ、海外の人が持つサムライに関する疑問を投げかけたり、実際に試し斬りのやり方を教えてもらうことで“サムライ”への理解を深めていきます。
海外の人が疑問に思う“サムライ”の謎
最初に“サムライ”についてさまざまな質問を投げかけるアニメマンさん。以前から疑問に思っていたという「武士と侍の違い」について尋ねてみると、それは「イコール」なのだと藁斬り抜刀斎さん。ただ武士はお殿様の家来のことで、侍は武士の1つだとのことです。
また、武士の二本差しは江戸期からで、他にも刀を差していた商人や浪人と区別するためでもあったそうです。そこで「二刀流」についても尋ねられると、なんと藁斬り抜刀斎さんは動画で挑戦してみたことがあったとのこと。二刀流といえば宮本武蔵が有名ですが、実際にやってみるととても大変だったといいます。
さらに、漫画『ONE PIECE』に登場するゾロのような「三刀流」についても試したことがあるそうですが、「口にくわえたやつは何の役にも立たない」と成立しなかったことを教えてくれました。模擬刀を使ったそうですが、ポーズを取るだけでも大変そうですよね。
真剣の美しさにうっとり
そして、いよいよ短刀を見せてもらうことに。刀鍛冶の「HoyKey 一刀両断TV」(@HoyKeyTV)さんが作った「おそらく造り」という切っ先の長い特殊な造りのものだそうです。藁斬り抜刀斎さんに短刀を抜いてもらうと、その美しさにアニメマンさんからは感嘆の声がもれました。
「日本の刀は剣界隈の中で1番切れ味が鋭いというのは本当?」というアニメマンさんからの質問へ藁斬り抜刀斎さんは、「切れ味は1番良いのでは」「500年経ったものが今作ったかのように残ってるって日本刀くらいじゃないですか」と語りました。波紋、反り、肌、鉄の表情といった全ては日本人独特の美が大切にされたものだとのこと。日本刀の作り方の特徴は「まわりが硬い鉄で、真ん中に柔らかい鉄が入ってることなんです。それで折らず曲がらずよく切れる」とわかりやすく説明してくれます。
刀で切られると、痛くない?
もう一振り、短刀を作った刀鍛冶のお兄さんが作ったという刀を抜いてもらうと、「目がキラキラしてる」と指摘されるほどわくわくした表情になったアニメマンさん。刀についている紐は下緒といい、現代では袴に付けて刀が抜けないようにするものですが、昔は便利紐として罪人を縛るために使ったりもしていたそうです。
それから藁斬り抜刀斎さんが普段メインで使っているという刀も持ってみると「重!」とびっくりするアニメマンさん。「怖かっただろうねえ。実際にこんなものを持って襲われるっていうのは」と正直な感想を述べると、藁斬り抜刀斎さんからは「でも、刀で切ると、痛くないんですよ」と驚きの回答が。過去に2度、間違って自身を斬ってしまった経験を語り、「わかんないんですよ、最初、切れたのが」と振り返ります。道場が血だらけだったことで自身の状況に気が付いて病院へ行き、10針も縫ったそうです。
チャンバラごっこでこてんぱんに
対談が終わると、いよいよ実践に入るアニメマンさん。道着に着替え、まずは皮で巻いた竹を刀に模してチャンバラごっこに誘われます。「私をぶっ殺すという感じで」とニコニコと告げる藁斬り抜刀斎さんに挑んだアニメマンさんは、実戦だったら大変なことになっていただろうというほど、こてんぱんにやられてしまいました。
それから、今度は模擬刀を持って、刀を鞘から抜く練習と納める練習へ。難しいのは納める方だとのことで、指を刀身の近くに置くため少しためらってしまったアニメマンさん。「まだ模擬刀だから大丈夫だけど、これを真剣でやるの怖すぎるな」と述べつつ、きちんとやり遂げてしまいました。
続いて、足を真横に開いて腰を落とすと同時に刀をおろす「真っ向斬り」。斜めに切り下ろす「袈裟斬り」や、下から上に切り上げる「逆袈裟斬り」、斬ったあと刀についた血を振り払う「血振り」を習っていきます。初めて挑戦するアニメマンさんの表情は、緊張しながらもとても真剣。練習を重ね、「血振り」をして「刀を納める」という流れの動作をやってのけました。アニメマンさん、とてもうれしそう!
いよいよ試し斬りに挑戦!
こうしてついに、外で試し斬りの練習が始まります。まずは藁斬り抜刀斎さんの実演を見つめるアニメマンさん。とても美しい動作で、軽々と簡単そうに2度斬り抜いて見せました。「意外と音もしないんですね」と言うアニメマンさんへ、試し斬りは下手な人が切ると「ザシュ」というような大きな音がするとの回答が。藁の切り口も見事に真っ直ぐでなめらかです。
アニメマンさんもさっそく挑戦してみると、なんと一振り目でちゃんと切り抜くことができました。初めてなのにすごい!
それから、佐々木小次郎の技として有名な「燕返し」にも挑戦。袈裟斬りと逆袈裟斬りを続けるこの技、なかなかうまくいかずに20テイクほど撮ったとのこと。そして何度もあきらめず繰り返し、やっと成功! 思わず「武蔵、打ち取ったりー」と叫ぶアニメマンさん。フォームを変えるときに重心が前後に揺れることが問題っただそうで、見た目よりもずっと難しいと述べました。
5つの藁を並べて……最後の大技に驚き
最後の大技は、5つ並べた藁を一気に切り抜くというもの。ゆっくりと藁に近づいた藁斬り抜刀斎さんは、迫力のある掛け声とともに見事、5つの藁を切り抜いてしまいました。それを見たアニメマンさんは「すげえ」ともうあまりのすごさに笑ってしまいながら拍手。「できるかなあ」と少し不安そうな様子も見せました。
アニメマンさんは3つの藁で挑戦することになりましたが、やはりこれは難易度が高すぎたのか、1本も斬り抜けないという結果に。何度も繰り返し、藁を1つ減らして2つに挑戦することにしましたが、それでもなかなかうまくいきません。ここでの問題は、斜め下に振り下ろさなければならないところを、恐怖心から横に振ってしまうことだとのこと。藁斬り抜刀斎さんの指導と励ましを受けながら、ついに2つの藁を一気に切り抜くことに成功しました。やった!
成功を喜ぶアニメマンさんは、「来る前はサムライはかっこいいものと思っていたんですけど、それが100倍に増しましたね」とコメント。藁斬り抜刀斎さんもアニメマンさんについて「筋は良かった。最初から切れたし」と褒め、「今日は体験というよりも修行でしたね」となんだかアニメマンさんに対して弟子のような気持ちを持ってしまったようです。動画の途中からまるで師弟のような絆も感じられましたね。
「すばらしい教育的経験」と世界中からコメント
今回の動画について「いつも動画ではさまざまな人に会い、さまざまな経験をしているものの、今回は間違いなく他に類を見ない経験だった」とアニメマンさん。動画のコメント欄ではさまざまな言語で「この文化から遠く離れたアメリカにいる僕にとって、これはすばらしい教育的経験だった」「藁斬り抜刀斎さんは、とてもカリスマ的」「この動画は世界中のオタクの夢だね」などと感想が並んでいます。
YouTubeチャンネル「The Anime Man」(@TheAnimeMan)では、他にも「ローランドと対談」「1日修行僧として過ごす」「不可能な“ジョジョ立ち”に挑戦」など日本に興味がある海外の人だけではなく日本人にとっても興味深い動画が公開されています。
動画提供:The Anime Man(@TheAnimeMan)さん
その他の動画「ローランドと対談」「1日修行僧として過ごす」「不可能な“ジョジョ立ち”に挑戦」
動画提供:The Anime Man(@TheAnimeMan)さん