「連絡もらうのも迷惑です」“アラ還”で発達障害を宣告され、仕事も友人も失った男が2024年の最後にみつけた「希望」

試行錯誤の日々を過ごす2024年末

ある知人編集者は、ひさしぶりに連絡したにもかかわらず、こちらの苦境を知り仕事をふってくれた。

単発のアルバイトを紹介してくれる友もいた。「きっと、なんとかなるよ」と励ましてくれる長年の仕事仲間もいた。

本来なら、その人たちに感謝すべきなのに、勝手に自暴自棄になりかけていたのだ。

フォーラムで知り合った女性がこんなアドバイスをくれた。

「いちいち他人に障害があると告げない方がいいですよ。ただ、こんなことが苦手ですと伝えるだけで人間関係が楽になりますよ」

なるほど、と思った。

診断を受けてから僕なりに発達障害について学んでいたが、この障害を持つ人は共感力が低く、コミュニケーション能力に問題があるという。

思い当たるフシは多々あった。離れていった友人たちも、会社や家庭でいろんな悩みを抱えていただろう。

なのに、僕は相手の近況について聞きもせず、一方的に言いたいことをまくし立てていた。

だから、引かれてしまったのかもしれない。

生活を立て直すための具体的なプランは見えてこないが、今後はこれまでよりも他人の気持ちを思いやるようにしようと決心した。それができなければ、何も始まらないとも思った。

こんなこと還暦になって気づいているようでは遅い。目の前のことに手一杯で心の余裕がない状態で、自分の態度を矯正できるか自信はないのだが……。

でも生きていくためにはやるしかないし、そのことが今も力になってくれている友人知人の恩に報いることにも繋がるはずだ。

そう思うと少しだけ気持ちが前向きになった。飲酒量も徐々に減っていき、最近は全く飲まない日も増えた。

飲んでない日の翌日は胸痛が起こらない。そんな日は体も軽い。

それでも、まだ日没近くなると心細くなり、時々、酒を飲んでしまう日もあるが、最悪の時期に比べれば頻度は減っている。

将来について心配ばかりするのはやめて、今できることだけに集中しようと思いつつも、試行錯誤の真っ只中にいる2024年の年末であった。

文/桑原カズヒサ