人気マンガ『ONE PIECE』の主人公「ルフィ」が見せた新たな能力には、戸惑いの声も見られます。しかし、『ONE PIECE』初代編集者の発言から紐解くと「戦い方が変わった」という表面的な変化の向こうに、連載開始から変わらないルフィの本質が見えてくるかもしれません。
画像はニカ化したルフィが表紙の「ONE PIECE ワンピース 20THシーズン ワノ国編 piece.51」(エイベックス・ピクチャーズ) (C)尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション
【画像】え…っ? 「ちょっとフザケすぎかな…」こちらが完全に「目が飛び出ちゃってる」ニカ化ルフィです
ニカ化しても変わらない「ルフィのかっこよさ」って?
人気マンガ『ONE PIECE』(著:尾田栄一郎)では、「ワノ国編」の終盤で主人公「モンキー・D・ルフィ」の食べた「悪魔の実」である「ゴムゴムの実」が、「ヒトヒトの実 幻獣種 モデル:ニカ」の別名を持つことが明らかになりました。「ギア5」で「ニカ化」したルフィは、自由自在に敵を翻弄して戦うという、これまでとは大きく変化した戦闘スタイルを見せ、あれから2年以上が経っても戸惑いを隠せないファンも多いようです。
ネット上では、最近のルフィのコミカルな戦い方について「バトルシーンでふざけてるのがルフィっぽくなくていやだ」「『ゴムゴムの実』っていう、一見強くなさそうな能力で勝利していく姿がよかったのに…」などの声があがっています。さらに「ニカの時は別の人格が憑依しているみたいで、これまでのルフィとは変わってしまったみたいで辛い」と、性格も普段のルフィとは少し違っていると感じたファンもいるようです。
これらの意見は、単にルフィの戦闘スタイルが変化したということにとどまらず、物語の当初から持っていた彼の性格や、キャラクターとしてのアイデンティティのようなものが変わってしまったのでは? というファンの不安からくるものかもしれません。しかし、本当にルフィは変わってしまったのでしょうか。
『ONE PIECE』の公式サイト「ワンピース.com」に掲載された2017年のインタビュー記事では、初代編集者である浅田貴典さんが、ルフィの好きなところについて「ルフィって弱い人間が勇気を振り絞って一歩踏み出したことを評価して、承認してくれるんです。弱いやつのために戦うだけだと、結局弱いやつは弱いままなんですよね。それだと、与えられているだけで、心は救われない。そういう哲学的な部分が貫かれているところが好きです」と語っていました。
記事のなかでは例として、「海軍将校」になりたいと思いを持ちながら、海賊「金棒のアルビダ」の雑用係としてこき使われていた「コビー」が、アルビダに反抗する初期エピソードがあげられていました。他にも、「魚人島編」で塔のなかにこもっていた「しらほし」が、魚人島を助けるために奮闘したところも思い出されます。
記憶に新しいのは、「ワノ国編」で「光月モモの助」が国を取り返すため、宿敵「カイドウ」に立ち向かったところです。ここでもルフィはモモの助を鼓舞しながら、見事カイドウを倒しました。
そして「エッグヘッド編」では、ニカ化したルフィが、父の「バーソロミュー・くま」を想う「ジュエリー・ボニー」に「いくぞ!!あいつらぶっ飛ばしてェだろ!?」「やれるさ お前の能力よくわかんねェけど!!」と、声を掛けています。結果、ボニーは自らの「トシトシの実」の能力を使い、自身もニカのような姿に変身できました。ルフィのおかげでボニーが「自由な未来」を体現できた場面は、多くのファンに感動を与えています。
このように物語を振り返ってみると、浅田さんのいう「弱い人間が勇気を振り絞って一歩踏み出したことを評価して、承認してくれる」ルフィのかっこよさは、序盤から最新の展開までブレていないことが分かります。ニカ化したコミカルな戦い方をしているのはそれが「現状いちばん強い戦法」だからで、ルフィは今も昔も変わらず「自分の信念に従って行動する海賊」なのではないでしょうか。