Credit: canva

トカゲには、私たちにはない優れた能力がたくさんあります。

垂直の壁をスルスル登る能力だとか、環境に溶け込むカモフラージュの能力は特に目を引きます。

しかしその中で最もクールなのは「切れた尻尾を再生できる能力」でしょう。

トカゲは身の危険を感じると、自らの尻尾を切り離して、スタコラサッサと逃げ去ります。

その後、トカゲは切断面から再び尻尾を生やすことができるのです。

では、切れた尻尾は何回まで再生させることが可能なのでしょう?

尻尾の再生に限度はあるのでしょうか?

 

目次

トカゲは適当に尻尾を切っているわけではない切れた尻尾が「再生」する秘密とは?理論的には無限だが、実際のところは…?

トカゲは適当に尻尾を切っているわけではない

トカゲは天敵に襲われたりして身の危険を感じると、尻尾を切り離します。

切れた尻尾は数分の間クネクネと動き回り、天敵が尻尾に気を取られている隙に、トカゲはその場を後にするのです。

このようにトカゲが自らの尻尾を切り離す行動を「自切(じせつ)」と呼びます。

まずは、この自切のメカニズムについて見てみましょう。


切り離されたイシガキトカゲの尻尾/ Credit: ja.wikipedia

実はトカゲは適当な場所で尻尾を切り離しているわけではありません。

尻尾には切り離しやすくなっている場所がちゃんとあるのです。

トカゲの尻尾は私たちの背骨と同じように、小さな椎骨がいくつも連なってできており、その真ん中あたりに紙の切り取り線のような切れ目が入っています。

これを「脱離節(だつりせつ)」と呼びます。

脱離節の部分では、骨も筋肉もスパッと切り離しやすいようになっており、トカゲが危険を感じて強いストレスを受けると、それがスイッチとなって自切機能が作動するのです。

また、トカゲの尻尾切りを実際に見たことがある人は、切断面からほとんど血が出ていないことに気づいたかもしれません。

私たちであれば、指の一本でも切断すると大量に出血してしまいますよね。

ところがトカゲの尻尾では、切断面の筋肉がすばやく収縮して出血を止めることができるのです。

では、今度は切れた尻尾を再生するメカニズムについて見てみましょう。

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切れた尻尾が「再生」する秘密とは?

トカゲの尻尾の切断面を観察していると、筋肉がゆっくりと盛り上がってくるのがわかるでしょう。

これが尻尾の再生の始まりです。

どうしてトカゲは切れた尻尾を再生できるのか?

この鍵を握っているのは、筋肉に含まれる「幹細胞」です。

幹細胞とは「さまざまな細胞に変身できる能力(分化能)」と「自分と同じ機能を持つ細胞をコピーできる能力(自己複製能)」を兼ね備えた便利な細胞のことを指します。

幹細胞はヒトにも存在しており、皮膚や血液のように、一個一個の細胞の寿命が短く、絶えず入れ替わり続ける組織を保つために幹細胞が働いて、失われた細胞分を常に補充しています。

そしてトカゲの尻尾においては、切断面に形成される「芽(ブラステマ)」という組織に幹細胞が集まって、細胞の分化と複製を行い、新しい尻尾を作り出していくのです。


尻尾の再生には「幹細胞」が鍵/ Credit: canva

種類にもよりますが、ほとんどのトカゲは1〜2カ月ほどで尻尾を再生させます。

ところが再生した尻尾は完全に元通りになるわけではありません。

というのも再生された尻尾の中では、硬い骨までは作り直すことができず、代わりに軟骨が形成されるため、形が少々歪(いびつ)であったり、サイズが小さかったり、色や模様が変わることがよくあるのです。

また尻尾が中途半端な形で部分的に切断されたり、再生の過程で神経が異常に活発化したりすると、複数本の尻尾が同時に再生されるケースもあります。

ここまでトカゲの尻尾の「自切」と「再生」の仕組みについて見てきましたが、では最後に、トカゲは何回まで尻尾を再生できるのでしょうか?