列島に衝撃走ったドウデュースの本番2日前、まさかの出走取消…風雲急を告げる混戦模様の有馬記念で注目される「主役候補」は?

 2024年の総決算、グランプリレースの有馬記念(GⅠ、芝2500m)が12月22日、中山競馬場で行なわれる。

 今年の主役は、本レースのディフェンディングチャンピオンであり、今秋は天皇賞(GⅠ)、ジャパンカップ(GⅠ)をともに劇的な追い込みで制したドウデュース(牡5歳/栗東・友道康夫厩舎)…のはずだった。しかし、本馬は20日に右前肢跛行のため出走取消という、ショッキングな報が届いた。レース後に予定されていた引退式も取り止め、来週中には種牡馬としての繋養先となる社台スタリオンステーションへスタッドインする予定だという。

 筆者も落胆したひとりなのだが、「Show must go on.」というように、それでも競馬は続いていく。頭を切り替えて、ドウデュースに代わる主役候補をピックアップしていこう。
  まず一番に取り上げたいのは、今年の日本ダービー馬であるダノンデサイル(牡3歳/栗東・安田翔伍厩舎)だ。

 皐月賞(GⅠ)を跛行のためスタート直前に競走除外となったあと、9番人気で迎えた日本ダービー(GⅠ)は、スタートで押してポジションを取って4番手をキープ。その後は内ラチ沿いで折り合ってレースを進め、直線では1頭分あいた最内のスペースからを突き抜けた。

 このレースセンス、操縦性の高さはテクニカルなコースにぴったりで、京成杯(GⅢ)の優勝で中山は克服済み。シンエンペラー(牡3歳/栗東・矢作芳人厩舎)がジャパンカップ(GⅠ)でドウデュースからクビ差の2着となったように、3歳のトップホースであれば古馬と互角の競馬ができるという評価も可能であり、そのうえ鞍上が経験豊かな大ベテランにして、今もトップクラスの読みと騎乗技術を誇る横山典弘騎手とくれば、狙わないわけにはいかない。

 次々と前に入られて位置取りが悪くなったうえ、距離も向かなかった菊花賞(GⅠ)こそ6着に敗れたが、その後の臨戦過程は順調で、「これまで経験したことがないほどタフなレースになると思うが、それに対応できると思える準備をしてきた」と安田調教師。ドウデュースが抜けた有馬記念であれば、胸を張って主役の重責を担う存在になり得る。 次に挙げたいのは、昨年の本レースでドウデュースと競り合いを演じて2着に食い込んだスターズオンアース(牝5歳/美浦・高柳瑞樹厩舎)である。

 言わずと知れた一昨年の牝馬クラシック二冠馬。それ以降は勝ち鞍がないが、秋華賞3着、大阪杯2着、ヴィクトリアマイル3着、ジャパンカップ3着と、GⅠ戦線で常に勝ち負けに加わってきた能力はやはり一級品。今年は春のドバイシーマクラシック(GⅠ)で、外へもたれる癖を出して8着に敗退。約8か月の休養を挟んで出走したジャパンカップは大外枠を引きながら直線半ばまで粘って、見せ場十分の7着(0秒6差)とした。

 引退レースとなるここへ照準を絞って、ジャパンカップをステップレースとした気配は濃厚。前々で競馬ができる強みもあり、川田将雅騎手の連続騎乗もプラス材料だ。2019年には有馬記念を引退レースとしたリスグラシュー(牝、当時5歳)が2着を5馬身もぶっちぎって勝利を挙げたシーンもまだ記憶に新しく、歴戦の牝馬に一撃を期待しても決して無茶とは言えまい。
  実績では推し量れない魅力を感じさせるのは、米国遠征帰りのローシャムパーク(牡5歳/美浦・田中博康厩舎)。

 並みいるGⅠホースのなかに入るとGⅡ、GⅢ勝ちしかない本馬が見劣るのは仕方ない。しかし、今春には大阪杯でタイム差なしの2着としたことから能力の高さは証明しており、11月のブリーダーズカップ・ターフ(GⅠ)ではアイルランドの強豪レベルスロマンスを後方から一気の末脚でクビ差まで追い詰め、シャフリヤール(牡6歳/栗東・藤原英昭厩舎)を3着に降した豪脚は目を見張るものだった。

 本馬の中山実績は〔3・0・1・1〕と上々で、田中調教師は「中山でのパフォーマンスはいいと思っている。前走で新しい面を見せてくれたので、それを再現してくれれば」と期待を寄せる。前進気勢が強いがゆえに、「乗り難しい馬」(田中調教師)というローシャムパークだが、逆に流れに乗れたときの爆発力には目を見張るものが存在する。その意外性には一票を投じる価値があると見る。

 この三頭の推し順で言えば、あくまで独断だがダノンデサイル>スターズオンアース>ローシャムパークの順にしたいと考えている。 新たな「主役候補」としては前述した3頭を挙げたが、今年の豪華メンバーは相手として評価できる馬にも事欠かない。

 セントライト記念(GⅡ)、菊花賞(GⅠ)を連勝中の上り馬アーバンシック(牡3歳/美浦・武井亮厩舎)。2年連続してブリーダーズカップ・ターフで3着に食い込むなど、大崩れがない2021年の日本ダービー馬シャフリヤール。GⅠ未勝利ながら、豪州のコックスプレート(G1)で2着するなど、海外G1で3度の2着を記録しているプログノーシス(牡6歳/栗東・中内田充正厩舎)。エリザベス女王杯(GⅠ)で2馬身差の圧勝を遂げ、二つ目のタイトルを手にしたスタニングローズ(牝5歳/栗東・高野友和厩舎)。大阪杯でGⅠ初勝利を挙げたあとも堅実な走りを続けるベラジオオペラ(牡4歳/栗東・上村洋行厩舎)。いずれもポテンシャルは無視できない領域にある。

 さらに大穴候補を1頭挙げるなら、秋の2連敗で急激に評価を落としているレガレイラ(牝3歳/美浦・木村哲也厩舎)だ。昨年のホープフルステークス(GⅠ)を制し、今春は牡馬とクラシック戦線で戦ってきた経験があっただけに秋の凡走は陣営にとって不本意なもの。しかし木村調教師は、「斤量54㎏という優位性を生かして立ち回らせたい」と大舞台での逆襲を諦めていない。アタマはないまでも、「複穴」に一考してみたい存在である。
  豪華絢爛のメンバーが揃ったドリームレース、有馬記念。ドウデュースの出走取消でにわかに風雲急を告げる混戦模様となったが、新たな主役候補か、はたまた波乱を起こす穴馬か。まさに楽しみが尽きない一戦となりそうだ。

文●三好達彦

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