赤坂アカと横槍メンゴのタッグによる漫画「【推しの子】」。2020年に週刊ヤングジャンプにて連載がスタートした本作は今年11月に完結、テレビアニメ化されただけでなく舞台版も制作されるなど、メディアミックスで人気を拡大中だ。Amazon Prime Videoにて独占配信中の実写ドラマも、想像以上のクオリティの高さで肯定的な声を多く集めており、その続きとなる実写映画『【推しの子】-The Final Act-』が12月20日に満を持して公開された。
『【推しの子】-The Final Act-』は公開中 / [c]赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・東映 [c]赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・2024 映画【推しの子】製作委員会
伝説的アイドル、星野アイの子どもとして主人公が転生するファンタジックな設定とショッキングな描写も厭わないサスペンス要素、芸能界という複雑な世界に切り込むほかに類を見ない斬新なストーリーが特長の「【推しの子】」。その実写ドラマ&映画化となる本プロジェクトにおいて、ルビーこと星野ルビーを演じているのが齊藤なぎさだ。
■アイドルから俳優へ。活躍の場を広げる齊藤なぎさとは?
【写真を見る】アイの子ども、アクアとルビーは成長し、それぞれ芸能界へと足を踏み入れていく(「【推しの子】」) / [c]赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・東映 [c]赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・2024 映画【推しの子】製作委員会
推しのアイドルだったアイ(齋藤飛鳥)の息子、アクア(櫻井海音)として転生した雨宮吾郎(成田凌)が、母親を殺した犯人を追い、復讐に身を捧げていく姿を描く本作。ルビーは、アクアの双子の妹で、亡き母アイのようなアイドルになることを目指す少女。アイドルグループ「B小町」で不動のセンターを務めた母のあとを追い、新たな仲間と共に新生「B小町」を結成する。
普段は裏表がなく天真爛漫なルビーだが、前世で慕っていた「せんせ」こと吾郎の死を知り、芸能界にいる黒幕を探しだして復讐するという目的を抱いてからは一変。そこには、純真無垢にアイドルを目指していたルビーの姿はなく、両目に“暗い星”を宿すように。映画では、前世の因縁や過密すぎるスケジュールによって精神が限界を迎え、明るくない面も見せることになる。
そんなルビーを演じる齊藤といえば、2017年に指原莉乃プロデュースのアイドルグループ「=LOVE」のメンバーとして芸能界デビュー。2023年1月にグループを卒業して以降は俳優として目覚ましく活躍している。大きな目と透き通るような肌でビジュアルを絶賛されがちな齊藤だが、その美貌の裏にはストイックな努力あり。「写真に映った自分にショックを受けたり、遺伝子検査で人より太りやすい体質だということがわかったりして、これはちょっと絞らなきゃいけないな」と思ったことをきっかけに、食事制限をしているのだそうだ。特に、そのことが話題になったのはグループ在籍中に出演したドラマ「明日、私は誰かのカノジョ」での役に向けて3〜4kg落としたとのエピソード。「運動しても食べたら太ってしまうんです。本当に人より吸収しやすくて。なのでとにかく食べ物には気をつけました」と話していた。
■解像度の高さが光る、齊藤なぎさの演技力
ストイックさは外見だけではない。これまでにアイドルとしてグループで活躍していた齊藤が俳優としての名を一気に上げた出演作といえば、上述した「明日、私は誰かのカノジョ」だろう。
齊藤は自分の体を売ったお金でホストに通う“ホスト狂い”の高橋優愛(ゆあてゃ)役を好演。ニコニコとした明るく、イマドキな一面を持ちながらも、少し深いところまで知ると闇が深い役だ。特に印象的だったのは、担当ホストであったハルヒ(藤原樹)との本気の喧嘩シーン。それまではどちらかといえば、キレイで触れられないような存在であった齊藤が感情をむき出しにし、自分よりも体格のいい男性に食ってかかる様子は見ていて驚いた。
さらに、ホストをきっかけに友だちになった真矢萌(箭内夢菜)が「ホストに通うことをやめても、いまのまま友だちでいてほしい」と言おうとしたところでの、冷めきった顔はたまらない。相手を蔑むような呆れた表情は、アイドルとしてステージに立つ齊藤からは絶対に引きだせない表情だったからこそゾッとした視聴者も多いだろう。
主人公あこ子の親友で、あざとかわいい充希を演じた『あたしの!』 / [c]幸田もも子/集英社・映画「あたしの!」製作委員会
また、11月に公開された映画『あたしの!』では、「好き!」をストレートに伝えられて、好きな人にも親友にも本音を隠さない主人公、関川あこ子(渡邉美穂)の親友であり、学校一の人気イケメン、御共直己(木村柾哉)をめぐって恋のライバルにもなる谷口充希役に抜擢されたことでも記憶に新しい。齊藤が演じた谷口という役は、少し控えめでおとなしいキャラクター。その一方、好きな人にはしっかりとアプローチをするあざとくて抜け目のない一面も持ち合わせている。主人公のあこ子がすぐに恋のライバル認定をするのではなく、「あれ?もしかして充希も同じ人を好きなのか?」、「これは天然でやっているのか、それともアプローチのためなのか?」と半信半疑になるようなあざとさのグラデーション具合が絶妙だった。
恋に恋する女子高生、小春を演じた『恋を知らない僕たちは』 / 映画『恋を知らない僕たちは』Blu-ray&DVD2025年2月14日(金)発売発売・販売元:松竹[c]2024「恋を知らない僕たちは」製作委員会 [c]水野美波/集英社
このように振り返ると「明日、私は誰かのカノジョ」、『あたしの!』、ほかにも『交換ウソ日記』(23)、『恋を知らない僕たちは』(24)と漫画原作の映画やドラマに多く出演している印象。それは、漫画に出てくるような圧倒的なかわいらしさを持ち合わせながらも、実写化した時に決してわざとらしくなりすぎない、3次元の世界でも成立するキャラクターとして違和感なく演じられるからではないだろうか。
ルビー、かな、MEMちょによって結成された新生「B小町」(「【推しの子】」) / [c]赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・東映 [c]赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・2024 映画【推しの子】製作委員会
そう考えると、今回の『【推しの子】』におけるルビー役の抜擢にも納得だ。特にドラマ版を見ていると、細かい所作に、本人がアイドルだった経験が生きているように感じる。伝説的なアイドルだったアイの娘として、母親に引けを取らないアイドルとしての資質をきちんと表現している印象だ。また、キラキラとした一面が多く見られたルビーだが、映画版ではそうではない暗い一面も覗かせることになるだろう。芸能界で成長しながら変わりゆくルビーを、高い役への解像度を持って成立させている齊藤なぎさに、ぜひとも注目してほしい。
文/於ありさ