ユーミンが“優れた声を持っている"と評する歌い手「男性はスガくん、女性は平原綾香、ikuraちゃん、松田聖子と…」【松任谷由実×武部聡志】

ユーミンにとって武部聡志とは

――40年以上ライブで共演してきて、由実さんにとって武部さんはどんな存在ですか?

ユーミン いつも出発点に帰れる感じ。キャリア的には、出発点はもっと前なんだけれど、結婚の頃にリセットして、セカンドブレイクした辺りが私のキャリアでいちばん大事な時期だったし、武部さんとはその時に出会ったから。武部さんに会うと、いつもあの頃を思い出せる。そこからスタンスも何も変わっていない気がするよね。

武部 やっぱり東京人独特の距離感があってね。土足で踏み入るようなことはしないから。

ユーミン かと言って、冷たいわけではないし。1970年代後半に私たちがやっていたことが、J-POPのエキスだと思うんだよね。

武部 うん、その礎を築いた人だから、ユーミンは。

ユーミン あのね、ゲームの発明者みたいなところがある気がする。同時にプレイヤーとしても、いまだに闘っているというか。

――武部さんにとって、由実さんはどんな存在ですか?

武部 僕は永遠にユーミンのファンですよ。まだ思春期だった頃、中高生の時にユーミンの音楽を聴かなかったらプロになっていなかったと思うし、これだけ一緒に仕事をしてきても毎回刺激をもらえる。ずっとファンでいられるアーティストなんです、ユーミンは。

ユーミン ありがたいことです。でも私たちは登山家のパーティーみたいな感じだから。2018年の「TIME MACHINE」ツアーの時かな、70歳になったら70公演しようって話していたけれど、それも夢みたいな話ではない。

――じゃあこれからも一緒に山を登り続けていく、と。

ユーミン いつまで続けられるかわからないけれど、ずっと一緒だと思いますよ。

武部 これからもよろしくお願いします。

ユーミン いや、こちらこそです(笑)。

取材・文/門間雄介 撮影/伊藤彰紀 
武部聡志ヘアメイク/下田英里 松任谷由実ヘアメイク/遠山直樹 

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ユーミンの歌声はなぜ心を揺さぶるのか 語り継ぎたい最高の歌い手たち

著者:武部 聡志 取材・構成:門間 雄介

2024年11月15日発売1,155円(税込)新書判/256ページISBN: 978-4-08-721340-9

日本で1番多くの歌い手と共演した音楽家が語る
かつてない“究極のボーカル論”――。

真の「優れた歌い手」は何が凄いのか?
音程やリズムが正確な「うまい歌い手」であっても、それだけでは時代も世代も超えて人々の心を揺さぶる「優れた歌い手」ではない。
彼らはテクニックではなく、もっと大切なものを音楽に宿しているのだ――。
1970年代から音楽界の第一線でアレンジャー・プロデューサーとして活躍し、日本で一番多くの歌い手と共演した著者が、松任谷由実や吉田拓郎、松田聖子、中森明菜、斉藤由貴、玉置浩二、MISIA、一青窈など、優れた歌い手たちの魅力の本質を解き明かす。

【目次】
はじめに
第一章 松任谷由実
第二章 吉田拓郎
第三章 時代を変えたパイオニア
第四章 80年代アイドル
第五章 男性ボーカル
第六章 女性ボーカル
第七章 歌い手を生かすプロデュース術
第八章 未来を託したいアーティスト
おわりに
歌い手年表と武部聡志の仕事歴