総合スーパーはもはや時代遅れか…イトーヨーカドーとイオンが苦戦する中、それでも業績好調のスーパーは?【2024 ビジネス記事 5位】

出店形態を変化させるライフコーポレーション

チェーン展開は本部主導であるため、年功序列の硬直的な組織になりがちだ。ヒエラルキーが形成されて、上層部が決めたことを現場スタッフが粛々と進めるという運営体制になりやすい。

消費者の需要が旺盛な時代であれば、効率運営の観点からこのやり方は正しいといえる。しかし、消費者の選ぶ幅が広がって集客力を失っている場合、買い物客や地域の動向を知り尽くした現場スタッフの意見のほうが理にかなっていることもある。

ユニーは買収後、本社の商品本部、営業本部、営業企画本部をまとめて営業本部傘下とし、組織をフラット化して人員を1/3に圧縮した。これにより、社内の風通しがよくなって現場の声が通りやすくなった。顧客優先主義の組織体制を作ることができたのだ。

さらに権限を店舗側に委譲し、売価権限、陳列方法の権限、ポップの権限、売り切りの権限を与えている。その結果、店舗独自の売場戦略を構築しやすくなった。これであれば、顧客動向を見て販売方法を変えるPDCAサイクルを高速化することができる。

ユニーはチェーンストアでありながら、地域密着型の店舗へと生まれ変わることができた。
これとやや似ているのが、ライフコーポレーションだ。ライフは2023年3-11月の小売事業の売上高が5804億円、セグメント利益が195億円だった。営業利益率は3.4%だ。同事業は2021年2月期から2023年2月期まで、3期連続で利益率が3%程度で推移している。収益性が安定した会社だ。

ライフは出店コンセプトにおいて「地域密着」を何よりも重視しており、大型の総合スーパー、衣料品の取り扱いがあるスーパーとの複合型、食料品主体のスーパーマーケット、都心の小型店と、出店形態を多様化させている。基本的に駅前を中心に出店しているが、その場所で消費者が何を求めているのか、見極めているのだ。

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スーパーマーケットは顧客第一主義の時代に

関東圏の郊外型スーパーマーケットも明暗が分かれている。

埼玉県川越市に本社がある「ヤオコー」は、34期連続の増収増益を達成している。2024年3月期も6%程度の増収、同0.3%増と今期もかろうじて営業増益となる予想だ。営業利益率は長らく4%台で安定している。成長、健全性ともに関東圏のスーパーマーケットの中ではトップクラスだ。

埼玉県鶴ヶ島市に本社があるベルクも好調だ。こちらは31期連続の増収である。「ベルク」の営業利益率もヤオコーと同水準で推移している。

冴えないのが、東京都立川市に本社がある「いなげや」だ。今年11月にイオンの連結子会社となる予定のスーパーマーケットである。

一定のエリアに集中的に出店するドミナント戦略を主軸とし、郊外型のロードサイド店を展開するという基本戦略においては、いずれの3社ともに似通っている。

違いは顧客との向き合い方だ。

ヤオコーの売場はメリハリが効いている。「北海道フェア」や「豊洲まつり」など、こだわり派の顧客に向けたコーナーもあれば、「厳選100品」と銘打って徹底的に値下げを行う企画も設けている。消費者がわざわざヤオコーに足を運ぶ理由を作っているのだ。ベルクは、直輸入商品の拡大・強化に努めて商品力を高めた。また、値上げ局面において「相対的な安さ」を訴求して“お得感”を醸成している。

郊外型スーパーは、生鮮食品を取り扱い始めたドラッグストアが強力なライバルになりつつある。品揃えと価格による差別化は、これまで以上に激しくなった。今の時代に対応する企画力、商品力、訴求力が必要になる。

いなげやも子会社サンフードジャパンと商品の共同開発を行っている。しかし、総菜のキット化による味の均一化、省力化を図るなど、顧客よりも効率化に目が向いた取り組みが多い印象を受ける。

スーパーマーケットはチェーン展開による経営効率に目が向いていたが、今や顧客や地域特性にあった店舗展開を行うという、ある意味“原点回帰”をしていると考えて間違いないだろう。

取材・文/不破聡