「ポテト食う気なくした」日本マクドナルドに“炎上CM”の制作意図と見解を直撃…生成AIとの向き合い方が今後のカギに【2024 ビジネス記事 2位】

2024年度(1月~12月)に反響の大きかったビジネス記事ベスト5をお届けする。第2位は、生成AI技術を使ったCMが話題となった日本マクドナルドに直撃した記事だった(初公開日:2024年8月23日)。CMが物議を醸すことが多い日本マクドナルドが、またもネット上で注目を浴びている。昨今、話題の生成AI技術をCMに取り入れたことで波紋を広げているようだ。

「嫌いになりそうだから中止して…」マクドの最新CM

マクドナルドでは8月19日から30日にかけて、マックフライポテトのM・Lサイズを特別価格の250円で販売するキャンペーンを実施。このCMを制作するにあたって白羽の矢が立ったのが、AIクリエイターの架空飴氏だ。

架空飴氏が用いているのはコンピューターに指示を出すことで、自動で画像などを制作してくれるツール、生成AI。この数年で一気に普及したこの技術を駆使し、自身のSNSに美少女のイラストを数多く投稿している。

今回のマックフライポテトのCMでは、いつもの架空飴氏のテイストに合わせて、多くの美少女がさまざまなシチュエーションでポテトを持っている様子が映し出されている。

だが、この“AI動画”に対して、SNS上では否定的な声が飛び交い、マクドナルドの公式Xに対して〈不自然で気持ち悪いですね…〉〈ポテト食う気無くしたわ〉〈何の芸術性も創作性もない、嫌いになりそうだから中止して…〉〈なんでマックがAIを使っているのですか?問題点を認識していないのですか?〉といったコメントが多数書き込まれた。

生成AIを使用した広告や商売は、これまでにも数多く問題になっている。その大きな理由の一つが、生成AIがクリエイターの仕事を奪ってしまうこと。長い時間をかけてクリエイターが丁寧に絵を描く一方で、生成AIではボタン一つで絵が生み出されてしまう。

また、生成AIはネット上の無数のデータを取り込んで学習しているため、全世界のクリエイターのパクリ・盗作なのではないかという論争もある。

実際に今年4月には、海上保安庁がAIイラストを使用したリーフレットを制作したところ、「生成AIを使うことは著作権侵害にあたるのではないか?」との批判が相次ぎ、リーフレットの配布と掲載を中止するまでに至った。

5月には、衣料品チェーンストア「しまむら」が、AIファッションモデル「Luna(るな)」を発表。「芸能人を起用するのと違って、不祥事やスキャンダルを気にする必要がない!」と一部では名案だとも評されたが、やはりこちらも、誰かの顔データを取った上に、実在のモデルの仕事を減らしているとの声が寄せられた。

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日本マクドナルド広報からメッセージ 

さらに6月には、ポケットモンスターのカードゲーム、通称“ポケカ”のイラストコンテスト「Pokémon Trading Card Game イラストレーションコンテスト 2024」で、生成AIを使用したと思われる数多くのイラストが、1次審査を通過する事件が発生。世界中のXで炎上した。その後、該当の作品は失格扱いになり、代わりの作品が追加で審査を通過している。

このように、生成AIがきっかけで炎上・物議を醸し続けた例はあげればキリがない。そんな背景がある中で今回、日本でも有数の巨大企業「日本マクドナルド」が堂々とこれに手を出したことで、ネット上で大騒動になったのだ。

 日本マクドナルドといえば、昨年9月には家族3人でハンバーガーやポテトを食べる手描きアニメーションのCMを打ち出して話題に。この多様性が叫ばれる時代に、男女の夫婦、一人の娘という家族を“幸せ”と描いたことで、「昨今の過剰な配慮に意義を唱えた!」と、こちらは世界的に大絶賛された。

また、これが商業デビューだという新人のイラストレーターを起用したことも、「マクドナルドはクリエイターの味方だ」と評価されていた。こういった経緯もあって、今回の生成AIを使用したCMには、がっかりした人も一定数いるようだ。

いったい、どんな意図があって今回のCMを制作したのか。また、ネットの炎上についてどう感じているのか。日本マクドナルド株式会社広報部に質問を送ると、以下の返答があった。

「マックフライポテトMLサイズを250円でお楽しみいただける本キャンペーンは、小腹が空いたときや、少し頑張った日のご褒美などさまざまなシーンで、マクドナルドの人気メニュー『マックフライポテト』を多くのお客様におトクにそしてお気軽にお楽しみいただきたいとの想いを込めたキャンペーンです。

多くのお客様にマックフライポテトM・Lサイズ250円キャンペーンをお知らせしたいとの想いから制作いたしました。

ご覧になった方に、お楽しみいただけたかどうか、どのようにご覧いただけたか、日々確認させていただいております。私たちがお伝えしたいメッセージを大切にしつつ、ご覧になった方々のさまざまなお声も参考にさせていただき、マクドナルド商品の魅力をお伝えできる広告物の制作に努めてまいりたいと存じます」