2024年度(1月~12月)に反響の大きかったビジネス記事ベスト5をお届けする。第1位は、CoCo壱番屋などを運営する会社の新社長になった22歳の女性のインタビュー記事だった(初公開日:2024年5月23日)。CoCo壱番屋などのフランチャイズを都内を中心に27店舗展開し、400名以上のスタッフを抱える株式会社スカイスクレイパーの新社長に抜擢されたのは、なんと22歳の女性アルバイト。15歳から接客しかしてこなかったアルバイトスタッフがなぜ社長に選ばれたのか? なぜ古参の社員たちはこの人選を受け入れることができたのか? そこには外食チェーンが目指すべき王道があった。諸沢莉乃新社長と広報担当者に話を聞いた。
フリーターから22歳で社長に成り上がり!
――5月1日に就任され、お話をうかがう本日は社長2日目です。実感はどうですか?
諸沢莉乃社長(以下、諸沢) 通勤電車から「気は抜けない」と緊張しています。ただ2年前に社長の打診を受けてから準備はしてきましたし、バイトや社員といった分け隔てがあまりない会社なので、そこまで大きなギャップはありません。
今日は社長風の格好で来ましたが、いつもは7年前にバイト代を貯めて買ったリュックを背負っていつでもお店で働ける格好でいます。
――社長をオファーされるまでの経緯を教えてください。
諸沢 高校1年生のときにCoCo壱番屋のアルバイトに応募して、自宅の近所だった弊社の店舗に採用されたのが最初です。そこから接客の仕事にすっかりハマって部室のようにお店に入り浸るようになり、高校2年生のときにはCoCo壱番屋チェーンの全国接客コンテストに出場しました。
高校卒業後もアルバイトスタッフを続け、20歳のときに、全国の店舗から選ばれる接客スペシャリストに認定されました。当時はまだ全国で15名だけで、私は最年少で16人目でした。そのお祝いの席で創業社長で現会長の西牧から社長のオファーをもらったんです。
――お小遣い稼ぎのアルバイトにそこまでハマれたのはなぜだったのでしょうか。
諸沢 アルバイトは、私にとっての部活、青春でしたね。放課後17時〜21時の勤務でしたが、毎日シフトに入っていました。入っていなくても休憩室に遊びに行ったり、カレーの匂いがする仲間たちと近くのイオンに遊びに行ったりしていました。オフの日に集まってディズニーも行ったなあ。
通っていた高校は風紀が乱れているというか、ルーズな雰囲気でちょっと肌に合わなかったんですが、仕事では気持ちよく挨拶してよく働くと評価してもらえるので、とにかく楽しかったです。思えば、自分が大切にしたいことと、弊社が大切にしていることが一致していて、気がつくと同じ感覚を持った仲間ができていたんですね。
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天職は身近にあった
――高校卒業後、バイト仲間が辞めて行く中で、なぜ諸沢さんはお店に残ったのですか?
諸沢 西牧への恩ですかね。弊社では自社アプリで日報を書いて、コメントし合うことでコミュニケーションを図っていますが、社長だった西牧も毎日読んでくれていて、心配なときはお店まで話に来てくれたんです。
――高校卒業後に社員にはならなかったのですか?
諸沢 私には誰かのために動きたいという目標があって、それでボランティアを始めたんです。なのでアルバイトのままでした。
ボランティアでは募金活動などに参加しましたが、人との関わり方が間接的で、やりたかったことと一致しませんでした。私は相手が喜んでいる顔が直接見たい、私と出会ったことで人が変わる瞬間を見たいんだなと気がついて。
ボランティアには求めていたものがなく、進学をしなかったことを後悔して落ち込んでいたとき、バイトの日報から私の変化を感じ取って西牧が話を聞きに来てくれたんです。それで「身近な人のために働くのも素敵なんじゃない、そのためにお店を使っていいよ」と提案してくれて、こんなに近くにやりたいことがあったんだなとスッキリしました。
私は10代のころに具体的な夢がなくて、それがコンプレックスだったのですが、職業だけではなく「どうありたいか」も夢なんじゃないかと気がついたんです。ちなみに、西牧の夢は「モテたい」だったそうで(笑)。実際それで人を助けているから、それはそれでいいのかなと思って。