2021年にHKT48を卒業した後にバラドルとして注目され始め、今やテレビで見ない日はないというほどのブレイクを果たした村重杏奈。11歳からアイドルとしての活動を始めた村重だが、当時はアイドルとして日の目を浴びることはできなかったと話す。そんな彼女が苦難の10代を振り返りながら、芸能活動を支え続けてくれた家族に対し思うこととは…。

厳しくも愛をもって育ててくれた両親

「アイドルを目指したのは出来心なんですよ！」

アイドルデビュー当時を振り返り「目立つのが好きだったから、挑戦してみたかった」と話す村重。

山口県玖珂郡で生まれた彼女は、4人兄妹の長女として育った。母親の村重ヤナさんはロシア人で、当時は娘の芸能界入りを反対していたのだそう。

「ママは破天荒なところもあるけど、性根は安定志向な人。うちは両親とも大学に行っていなかったから、ママは私をどうしても大学に行かせたがっていました。

だから小学校の時は勉強漬けでしたよ。公文も6年間通ってたもん（笑）。サボると怒られるし、厳しく育てられたと思いますね」

しかし、村重本人はアイドルへの憧れを捨てきれず、父とともになんとか母・ヤナさんを説得してオーディションに参加。

念願のHKT48に選抜されるも、アイドルとして活動していた十数年の間には、アイドル活動を辞めたいと思ったこともあったという。

「アイドル時代は活動が思うようにいかなかったこともあり、反抗期には両親に何度も“もう辞めたい”と伝えました。

だけどパパとママからは、芸能活動を始めた時から一貫して“一度始めたなら中途半端にするな”と言われ続けました」

両親は口癖のように、村重に『自分でやると決めたことを簡単に辞めたら、ロクな大人にならない』と言って聞かせてきたのだとか。

「少しでも応援してくれる人がいる限り、あきらめることは許さないと言われていました。

パパから背負投げをされるほどのケンカもして、家出だってしました。1時間で帰ってくるけど（笑）。

ケンカしても最後にパパが、“杏奈は世界で一番可愛いんだから”と言ってくれるんです。

その言葉がなかったら、今の私はいなかったと思う。私にいつか子どもができたら、両親と同じように子どもに教えたいって思います」

26歳、恋より仕事を頑張る理由は「パパよりいいメンズがいないから」

村重を励まし続けた父は、彼女いわく“究極の親バカ”。

家族仲がいいことでも知られる村重だが、父との未出のエピソードも語ってくれた。

「アイドルを卒業した年のクリスマスに、急遽仕事にキャンセルが出てひとりで過ごすことになってしまったんですよ。

恋人もいないし、暇してそうな友達もいなくて、パパに“クリスマスをひとりで過ごすことになっちゃった”と電話したんです。

ひとりじゃ寂しいとか、誰かとケーキが食べたかったとか、そんな気持ちを吐き出したかっただけなんですけど、パパからの返事はなんと『今行くから待ってろ！』だったんですよ（笑）。

電話をしたのは夜の21時過ぎで、もう新幹線でも東京までは行けない時間だったのに、パパは助手席にママを乗せて、山口から東京まで車で来ちゃったんです。

しかも、着いたのは次の日のお昼。

正直、次の日まで待って始発で新幹線に乗った方が早く着いたと思うんですよね（笑）。

だけどいても立ってもいられなくて、車で来てくれた。その後は家族で食事して、ケーキも食べて、いつも通り楽しいクリスマスにしてくれたんですよ」

父はヤナさんをロシアまで追いかけてプロポーズするほどの熱い漢だと自慢気に話す村重。

彼女自身も大きな愛を感じており、今は「パパよりもいいメンズがいないから結婚できない」のだそう。

「だって、ここまでしてくれるメンズいなくないですか？」と村重は終始楽しそうに家族の話をするのだった。

後編では「今は恋よりも仕事を頑張りたい」と話す彼女に、“仕事”と“新たな挑戦”について話を聞く。 

PROFILE 村重杏奈（むらしげ・あんな）●1998年7月29日生まれ。2011年から2021年までHKT48として活動。父親が日本人、母親がロシア人で４姉弟の長女である。現在はバラエティ番組を中心に多方面で活躍し、2025年1月24日公開予定の映画『悪鬼のウイルス』で映画初主演を務める。

取材・文／ミクニシオリ