キャッチアップ接種の期限はもうすぐ
最後に、キャッチアップ接種の期限が迫っていることについて聞いた。
「子宮頸がんから自分を守る方法には、ワクチンと検診の二つがあります。現在、対象年齢である12歳から16歳までの女子に加えて、私のように対象年齢で接種を逃した人には、キャッチアップ接種として無料で接種できるようになっています。ただ、期限が迫っていて、標準的なスケジュールでは1回目の接種を今年の9月末までにしなくてはいけないんです。
子宮頸がんは若い人に多いがん。ステージⅠでも、子宮を全部摘出しなければならないケースがありますと話すと、前向きに検討したいという声を多くいただきます。自分ごととして捉えることで、どうすべきかが見えてくるはずなので、早めに検討してほしいと思います。
HPV感染は、男性の陰茎がん、男女共通の中咽頭がん、肛門がんなどを引き起こすことがあるということも、もっと知られてほしいですね」
(※編集部注 2024年11月27日に開かれた厚労省の検討会で、キャッチアップ接種の期限を2025年度まで延長する方針が示されました)
国内で子宮頸がんにかかる女性は毎年約1.1万人。主な原因となるHPVは、男性も女性も、性交渉のある人のほとんどが感染すると言われている。患者は20歳代から増えはじめ、30歳代までにがんの治療で子宮を失ってしまう(妊娠できなくなってしまう)人も、1年間に約1,000人いる。子宮頸がんは決して珍しいがんではない。
同世代や未来がある若者に、子宮頸がんで苦しむ人を出したくない。
中島さんの実体験からの声を聞いて、自分ならどうするか…と考えてみてほしい。周囲の人と子宮頸がんやワクチンについて話す機会を持ってみてはどうか。
【豆知識】
WHOは全世界における子宮頸がん排除(撲滅)の達成を掲げ、次のように具体的な方策を示している。2030年までに各国が下記の90-70-90%の目標を達成すると、来世紀中に子宮頸がんの撲滅(排除)が見えてくる。このうち日本が達成できているのは今のところ治療の部分のみだ。
・15歳までの少女90%にHPVワクチンを接種
・35歳までに女性の70%が高性能スクリーニング検査を受け、45歳までに再度行う
・頸部疾患と特定された女性の90%が治療を受ける我が国のHPVワクチンの定期接種については、エビデンスの蓄積とともに重篤な副反応とワクチンとの因果関係はないとされ、差し控えられていた積極的勧奨が再開された。現在では小6から高校1年生の女子に定期接種の通知が届く。現在のところ男子は公的接種の対象ではないが、一部の自治体では助成するケースも出てきている。
取材・文/及川夕子
(※1)キャッチアップ世代 対象となるのは誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日生まれの女性
(※2)HPVワクチンには、2価、4価、9価の3種類がある
(※3)HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/dl/yobou150819-2.pdf