「本当にあるんですね」「これをやれる人間が普通にその辺を元気に生きてると思うと……」SNSで驚きの声が多く寄せられているのは、夜逃げされた部屋の写真だ。いったい何が起こったのか、部屋の管理人に話を聞いた。
3年ほど住んだ後に夜逃げ
夜逃げされた部屋を公開したのは、アパートを4棟、計26戸を所有しているクワタさん。
〈うちはペット禁止なんだが・・・それに何だこの残置物は。夜逃げの時は大体こんな感じ〉とつづりながら、写真付きでXに投稿したそのポストは、なかなかにショッキングな画像のインパクトも合わさり、230万以上のインプレッションを獲得するほどの大バズをした。
部屋には電子レンジやテレビが置かれたままで、人が住んでいた形跡をしっかりと残している。しかしその一方で、ぼろぼろに破れたダンボール、排泄物が処理されていない猫用のトイレ、ベランダに放り出されたソファーなど、同時に廃墟のような雰囲気も放っている。
ネット上ではこの部屋に対して怒りや驚きの声があがっている。
〈こう言う奴らが増えすぎてて部屋借りるハードル上がってるんやろなー〉
〈こういうのがあるから入居者が保険とか入らないといけなくなって家賃高くなる〉
〈知合いの知合いが全く同じことをやられて、引き取った猫が今うちに居る〉
〈生活してて飛んだってより、何か拐われたって感じにも見える〉
〈猫だけはこの先幸せになりますようにと祈らずにはおれない〉
いったいどんな人が住んでいて、なぜ夜逃げされてしまったのだろうか。大家のクワタさんが取材に応じた。
「今回夜逃げされた部屋は、小田急線相模原駅近くのアパートで、間取りは1Kの約16平米、家賃は管理費込みで2.9万円です。3年くらい前から住んでいた方が逃げてしまったようですね。基本的にアパートの管理は管理会社に任せているので、私自身は住んでいる方に会ったことはありません。
契約書を確認したところ、男性の方で、日本名と外国名が混ざったような名前です。数カ月前に、管理会社から家賃が滞っている部屋があるとの話を聞き、その時点で“察して”いたんですが、案の定、こんなことになってしまいました」(クワタさん、以下同)
実はクワタさん、借主から夜逃げされることが初めてではなく、これまでも1~2年に一度くらいのペースで夜逃げされているという。
3カ月以上の家賃滞納があった場合に、強制退去の手続きができるようになるため、そこで管理会社の人が部屋に乗り込んだところ、夜逃げが発覚する……というパターンが多いようだ。
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夜逃げされて黒字になるレアパターンも?
「今回の件がいままでと違っていたのは、ペット不可の物件にも関わらず、ペットを飼っていた痕跡があったことですかね。臭いとかが酷いと消毒するのにお金がたくさんかかるので厄介です。ただ、今回はそういった臭いのシミ付きなどはなく、そこは一つ、安心できるポイントでした」
夜逃げされたあとの部屋については、通常の部屋と同様にクリーニングして次の住人に貸すことになるのだが、そこで問題になるのが、残された家具だという。
「ゴミは粗大ゴミで出さなければいけないのですが、その手続きを業者に頼むと5桁(万円)クラスの費用がかかるので、自分で行なっています。幸い、今回のアパートの近くには友人が住んでいたので彼に頼むことができました」
なんとも手間がかかる夜逃げ後の処理。その一方で、夜逃げされてしまって逆に“黒字”になるパターンも存在しているというから驚きだ。
「以前、家具はそのままでキレイな部屋のままに夜逃げされたことがあります。残された物品につきましては、期間内に持ち主が取りに来ない場合は大家の所有物となるので、そのまま部屋を軽くクリーニングして、“家具付き物件”として貸し出しました。
夜逃げされた場合の家賃滞納分は加入している保証会社が代わりに払ってくれ、その分がマイナスになることもなく、さらにお見舞金ももらえるので、すぐに次の入居人が決まったために黒字になったという感じですね」
とはいえ、部屋がキレイなまま夜逃げされるなんて例はごくまれで、たいていはドアが壊れていたり、ガラスが割れていたり、たばこの臭いが染みついていたりなどで、保証会社から保険金が出たとしても赤字になり、その分を自ら補填しなければならないそうだ。
夜逃げとは違うが、過去には住んでいた人が孤独死していたケースがあり、原状回復のために100万円ほどの費用がかかったそうだ。
しかし、こうも夜逃げが頻発するならば管理会社にもっと厳しく入居審査をしてほしいと思ってしまうが、そう簡単にできない事情もある。