〈早期退職者の後悔〉「今は毎日お金の心配ばかり…」地方公務員を50歳で退職…定年までの15年間の「自由」を選んだ男性の苦悩

「毎日お金の心配ばかり」 

安定した収入を失い、手元の資産を切り崩して生活費に充てる日々。早期退職してから1年半、お金への不安は尽きることはない。

「退職してから毎日、お金の心配ばかりしています。

一応、80歳までは生き残るマネープランとなっていますが、これは将来、公的年金を予定通りもらえることを前提としています。国の年金制度自体が10年後ぐらいに改悪されることも十分考えられるので絶対安心ということはありません。

クラウドソーシングの仕事を始めましたが、収入は微々たるもので、悠々自適な生活を送れているわけではありません。倹約しなければいけないので、気軽に他人に奢ってあげたり、金銭的に援助してあげたりはできないですね」

早期退職をしたことに後悔や前職への心残りはないのか。率直に問いをぶつけてみたところ、

「あと2~3年、退職を我慢してもう少し蓄財してからでも遅くなかったかな…と思わないでもないです。ただ元の公務員の世界に戻りたいかというと、全くそうではないし、前職に関しては未練はないです。

後任は上手く仕事をこなしているのかな、と気になることもありますが、退職後は一度も連絡がないので、知る由もありません…」

SNSやネットニュースを見ていると、若い人たちが早期退職やFIREを目指す傾向が強くなっているが、田中さんはその流れに危機感も感じている。

「気持ちは分かりますが、早期退職やFIREは決してゴールではなく、その先にも長い人生があります。自分の場合、何度もライフプランを練り直したり、シミュレーションを繰り返して、かなり計画的な早期退職ではありました」

計画性のない人や節約できない人には早期退職は難しいそうだ。さらに田中さんは、早期退職をしてもう一つ気付いたことがあったという。

「孤独に耐性のない人も早期退職には向いてないですね。何のコミュニティにも属さないので、人間同士の交流が全くなくなります。どうやら人間は、他人と喋らないと精神的にキツいようです。

うちは妻と猫がいてくれて本当に助かったと、今では思っています」

早期退職は十分な人生と資産のプランニングをしてから、よく考えて実行に移すのがよさそうだ。

取材・文/木下未希 集英社オンライン編集部