尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による「非常戒厳」宣布の全容が、徐々に明らかになってきた。

 尹氏に非常戒厳を進言したとされる黒幕の金龍顕(キム・ヨンヒョン)前国防相(12月5日に辞任)は8日、内乱罪で告発され、すでに検察に身柄を拘束されているが、同氏は大統領とソウル市にある名門・私立沖岩(チュンアム)高校の同窓で、尹氏より1年先輩。さらに高校の後輩・李祥敏(イ・サンミン)氏(8日に辞任)も、戒厳令進言の権限を有する行政安全相として、このクーデターで重要な役割を果たしていたことがわかっている。

 そんな中、新たな黒幕として名前があがっている人物がいる。18日に地元警察により内乱などの容疑で逮捕された「占い師」のノ・サンウォン氏だ。

 韓国情勢に詳しいジャーナリストが説明する。

「報道によれば、ノ氏は陸軍士官学校で3年先輩にあたる金前国防相と親しい間柄にあり、朴槿恵(パク・クネ)政権では情報司令官を務めていたという。ところが陸軍情報学校長だった2018年に部下の女性を酒席に誘い身体接触をするなどしたとして、強制わいせつ容疑で逮捕。軍事裁判所で懲役1年6カ月を言い渡され不名誉除隊したあと、19年頃から京畿道安山市で占い師を始めたようで、12月3日の非常戒厳宣言の際にも、この占い店にいたと言われています」

 現地メディアは、ノ氏が「占い師」をしていたのは、古びたアパートの地下にある一室で、扉には「卍」のマークがあり、玄関先には占いに使われる魚の乾物やアワの穂などが雑然と置かれていた、と伝えている。

 金前国防相と親しいノ氏がどんな形で今回のクーデターに関与したかについては今後の取り調べを待つしかないが、地元メディアにより彼らがこのアパート近くで「密談」していたことも明らかになっている。

「実は、その場所というのが、占い店がある最寄り駅近くのハンバーガーチェーン『ロッテリア』だったというんです。警察は、ノ氏が戒厳令宣布の2日前の12月1日、この店でハンバーガーを食べながら軍幹部と戒厳令について謀議した疑いがあるとして調べていることから、韓国紙では『ハンバーガー店会合』との見出しで大々的に報じています」(同)

 そんなこともあってか、さっそくSNS上ではそのロッテリアが「戒厳の聖地」としてクローズアップされ、《国がひっくり返る一大事を、秘密の場所じゃなく、ファーストフードで話し合うなんて軽すぎないか?》《情報駄々洩れだろ?戒厳をどれほど軽く考えていたのかが分かる》《韓国の情報管理なんて所詮その程度ということ?》等々のコメントが続出。

 さらには尹氏が日本びいきだったことから《やっぱり司令官たちがマクドナルドやバーガーキングじゃなく、ロッテリアを選んだ理由は日本企業だから》《日本が大好きな気持ちが込められている》といったコメントも噴出。追随するように一部ユーザーがジョークで《ロッテリアが新製品を『“蟹厳(戒厳)”バーガー』発売!国を丸ごと飲み込む味》と書き込みロッテリアが対応に追われるなど、騒動は場外でもとんだ広がりをみせることになっている。

灯倫太郎

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