甥っ子にリトルカブを貸したら廃車になって返って来た……そんな衝撃的な経歴のバイクを修理する様子が、YouTubeで公開されています。動画は記事執筆時点で18万視聴を突破、2300件を超える“高評価”が寄せられています。
投稿したのは、YouTubeチャンネル「スーパーカブ専【ひろくんch】」のひろくんさん。個人の趣味でバイクのメンテナンスなどを行っています。
叔母さんが甥っ子に貸していたリトルカブ
今回の動画は、依頼主である叔母さんが甥っ子に貸していたリトルカブの修理依頼。地方大学に進学した甥っ子に足かけ6年貸していたのですが、この春めでたく卒業したとのこと。それはいいのですが、返って来たリトルカブは車体は真っ黒で錆だらけ、エンジンがザリザリする状態だったとのこと。軽トラックに積んでショップを回りましたが、キックを踏むなり新しいバイクを勧められたといいます。
「すぐ新しいバイクを買う気持ちになるなら、わざわざ軽トラックに積んで修理を聞きに行ったりしないのに……」と悲しむ依頼主さん。「このままだとあまりにもリトルカブがかわいそう」と、ひろくんさんに助けを求めて来たそうです。
故障箇所の調査
早速、故障箇所を調査していきます。一見きれいなリトルカブですが、タンクの横にエンブレムがなく、リアキャリアが黒色、マフラーガードが付いていることを考えると1998年式のリトルカブと判断できるそうです。
エンジンの音を確認するためにキックしてみると足にザリザリ音が伝わってきます。オイルを確認してみるときれいなので、こちらは交換してあるようです。
ギア、バッテリー、鍵、タイヤ、スタンド、シートと個別に確認して、問題点を分析。キャリアの裏やシートの下がきれいなことから、返って来た後に一生懸命洗車した様子が伺えます。
一通り調査して浮かび上がった問題点は(1)エンジンからジャリジャリ音(たぶんピストン、シリンダー)、(2)鍵がONで抜ける(キーシリンダー)、(3)前後タイヤに亀裂(なぜか後ろが1991年のタイヤ、チェーンもダルダル)、(4)センタースタンド欠損(交換)の4つ。タイヤはチューブを含めて交換することにして、その他必要そうな部品も発注をかけます。
キーシリンダーの修理
部品を注文している間に、キーシリンダーを修理していきます。鍵自体はそれほどすり減っておらず、タンクやヘルメットロック、ハンドルロックはスムーズに動きます。
これらの条件からメインのキーシリンダーだけが悪いと判断し、ヘッドライト側から分解して外していきます。
このリトルカブは1つの鍵でタンク、ヘルメットロック、ハンドルロックまで作動しているため、もし交換するとなると大掛かりな作業になってしまうとのこと。なんとか今のものを復活させるため、分解を試みます。
途中何回が指先を負傷しながら分解作業を継続。それでも素手でやるのは、素手でないと力の加減が分からないからということです。
なんとか分解して、鍵の状態を確認。キーのプレートがすり減っているため、抜けてしまうと判断します。
交換のために出してきたのは、廃車になったカブから外してあったプレートたち。バイク屋さんじゃないのに、こんなにパーツを持っていることに驚きです。
1つずつ地味に組み合わせて行った結果、1時間30分ほど経過したあたりで、フィットするプレートを発見。ONもOFFもできるようになったので、パーツの錆を落とし、外したときと逆の順序で戻していきます。
ヘッドライトを戻して動作確認をしたら、鍵周りは順調に作動。(2)の問題はクリアできました。
前後タイヤの交換
他の作業を進めやすくするために、先にフロントタイヤを交換します。こちらは2020年のものでしたが、見えない部分が錆びた状態。錆を落とし、タイヤ、チューブ、リムバンドを新品に交換します。
タイヤを取り付ける前に確認したところ、ブレーキシューが薄すぎるので交換することに。「スピードメーターギアは大丈夫のような感じがします」と話します。
ブレーキが届くのを待つ間に、フロントキャリアが付いていた跡をきれいにしていきます。コンパウンドで汚れを落とし、雨水が入らないようにキャップボルトを付けます。
反対側もサクッと交換……と思ったら問題発生。穴の中に折れたボルトが残っているのです。考え出したのは、家具を買ったときに付いてきた六角の棒を溶接して回す方法。棒を細くし、穴の周りを保護して溶接してみます。
何回か繰り返してもうまくいかず、ドリルで穴をあける方法に変更。こちらもうまくいかず、溶接を盛りまくって外すことに成功しました。
摘出に成功したひろくんさんはうれしそう。作業をしながら「『こんなボルトくらいほっとけばいいじゃん』という人もいますけれどね……」と話し出します。「ボルトが奥に残っていてもバイク的には問題ないけれど、オーナーさんの気持ち的に奥歯に何か詰まったような感じになる。どちらかというと、オーナーさんの気持ちを修理したい」と続けます。
周りがきれいになったらステーの錆が目につくようになったので、外してサンドブラストをかけ、手入れをしていきます。ステーを付ける所の塗装剥がれが気になるため、塗料を用意してタッチアップ。その他の剥がれた所も塗っていきます。
後日ブレーキが届いたので動きを確認し、周りの汚れを落として付けていきます。ホイールを元に戻して前輪周辺のメンテナンス完了です
後輪のタイヤを外してきました。1991年のタイヤは応急処置的に付けたものと推測し、問答無用に交換します。スプロケットが異常に錆びているので確認したら、なぜかスタンダードカブの41丁のスプロケットが付いていました(リトルカブは39丁)。
チェーンも錆々なのでこちらも交換。ダンパーゴムやベアリングはきれい、ブレーキは良さそうですがアームが動かないので中のグリスアップが必要そうです。
タイヤを交換しようとしたら、酢昆布のような謎の匂いに苦しめられることに。リムバンドと錆が一体化した状態でしたが、こちらもはがしていきます。
錆を磨いてリムバンド、チューブ、タイヤを交換します。スプロケットを待つ間に確認した結果、エンジンの問題点は(1)圧縮高め、(2)ゴロゴロ音が気になる、(3)かかるけど異音&止まる、ということが分かりました。
純正のスプロケットは注文しても届かないので、別メーカーのものを使うことにします。古いものを外して、新しいものに交換し、車体に戻していきます。
センタスタンド&外装
センタースタンドはオーナーさんが予備で持っていた物を使うことに。錆びているのでサンドブラストをかけて塗装します。リアキャリアなどの黒い部品も全て錆を落とし、ウレタン塗装をしていきます。塗装が終わった部品は見違えるほどきれいに。こちらは修理が終わるまで干しておきます。
エンジンの修理
車体側の問題はほぼ解決したので、エンジンの修理にかかることに。エアクリーナー、キャブ、エンジンをばらしていきます。キャブが外れたのでオイルを抜こうとしたら、ここで異変が。液体のはずのオイルがマヨネーズのように乳化していたのです。
動画はここで終了しており、エンジン修理の様子やエンジンオイルが乳化する仕組みは次の動画で紹介しています。オーナーさんから甥っ子さんの追加情報も届いたようで、バイトをしながら学費と生活費を払っていたこと、「愛車だけど、使い倒していいからバイトに学問に励んで何が何でも卒業するように」と、壊れるのを覚悟してリトルカブを貸した経緯、学生寮の仲間もバイクを使っていたらしいことが明らかになります。
コメント欄には「自分が大切にしてるカブがボロボロになって帰ってきたのはさぞ苦しかったと思います」「オーナーさんのリトルカブが元気になる事を願ってます」「カブを愛していらっしゃる気持ちが、動画から伝わって来ました」といった声が。「『オーナーの気持ちを修理する』名言です」という書き込みもありました。
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画像提供:YouTubeチャンネル「スーパーカブ専【ひろくんch】」
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