川田十夢と明石ガクトが語る、視聴者参加型の未来の放送〜TBS Live Multi Studio[Report NOW!]

LMSを活用する街中宝探しの可能性

LMSが視聴者参加型のコンテンツ制作だけではなく、新たなインタラクティブコンテンツの可能性も示唆する。川田氏はかつて彼が作ったAR宝探しが活用できるのではないか、と語る。

©川田十夢

川田氏:

実は、宝探しをやりたくて、TBS番組の「徳川埋蔵金」にあやかって、AR技術で宝を隠せるシステムを作るというアイデアがあるんです。実際、仕組みを作って「電脳のメリークリスマス」というイベントを開催し、街中をスキャンできる機能を開発しました。ある場所にPayPayの電子マネー5,000円を隠して、視聴者がそれを探し出すというものです。

視聴者は参加しながら、自分のカメラで撮影し、その映像が生中継されます。これを全国規模でやったら面白いなと思っています。六本木の交差点なんかで、街をスキャンして歩きながら、反応している場所を見つけたら、画面をタップするだけで進行できるんです。

これをクリスマスにやったことがあって、参加者がたくさんいました。反応する場所があると、すぐにその地点をタップして進行でき、参加者は5,000円をもらえるという仕組みです。このやり方が面白いのは、スマホだけで完結する放送が可能になる点です。

©川田十夢

明石氏:

このアイデアを活かすのは、実況動画だと思います。いろんな方向から放送とつながる技術を使って、視聴者参加型の番組を作れるんじゃないかなと思っています。放送作家だった鈴木おさむさんがテレビ番組の一番の傑作は「ミイラの開封」番組であるとおっしゃったのも分かります。

埋蔵金も同じロジックで、何が起きるか分からない「生の時間」を観ていることがみんなを惹きつけるポイントです。結局、何かが見つかるまで、みんながその瞬間をずっと見ていたいという、視聴者がその時間に没入するようなコンテンツが求められているのだと思います。

川田氏:

「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」で最初に家庭用テレビで放送された映像を捉えたもの、あれが原点で、そのニュアンスが、LMSで実現できるんだと思います。しかも、もっとミニマムな形で、日々のミリ単位の出来事を流していくような形です。ネットフリックスのような配信の世界では、無限にアーカイブが溜まっていくのが強いですよね。

他方、テレビの強みって何なのかというと、やっぱり僕は「ライブ」の強みだと思っていて、生の強みじゃないかなと。

奇しくも、今の動画業界はライブブームですよね。ライブ配信が流行っていて、TikTokもそうだし、Twitchのようなゲーム配信の世界やVTuberの世界も全部ライブです。確かに、そちらの価値が今注目されていますが、テレビのライブの強みをどう引き上げていくか、そういったところに向き合うことで、すごく価値があるんじゃないかと思ってます。

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放送業界に革命をもたらす可能性を秘めた新しい技術


LMS(Live Multi Studio)は、放送業界に革命をもたらす可能性を秘めた新しい技術であり、視聴者参加型のコンテンツ制作を可能にするツールであることがディスカッションを通して浮き彫りになった。

川田氏と明石氏が示したアイデアは、従来の放送の枠を超えるものであり、視聴者がクリエイターとして参加できる未来の放送形態を描いている。

視聴者特派員、何が起きるか分からない「生の時間」を見続ける番組の可能性は、放送業界の新たなスタンダードとなる可能性を秘めている。

藤本氏は最後に「テレビの強みは『ライブ技術』があるので、ぜひこのLMSを活かして、AR三兄弟に弟子入りさせてもらいたい」と発言した。

今後、テクノロジーを活用した新たなソリューションを生み出すこととともに、業界の枠を超えて人材の交流を行うことも、放送メディアの進化に不可欠であることを感じさせる。新たな人材交流やクリエイターとの協力は、放送メディアの未来をさらに広げる鍵となるだろう。