世界で30万人以上!パリ2024大会ボランティア、応募殺到の理由

「ボランティアを続けたい」。貴重な経験と絆を胸に未来へ

ーーアレクサンドルさんは実際にボランティアの活動を見る機会はありましたか? ボランティアたちの活動から、どんなことを感じましたか?

アレクサンドル:私自身も毎日色々な会場に行き、ボランティアたちと行動を共にしました。私が感じたのは大きな喜びと感謝の気持ちです。大会の会場はすばらしい雰囲気に包まれていました。ボランティア同士の一体感はもちろん、選手、観客とも積極的にコミュニケーションをとり、拍手、ダンスなどで大会を大いに盛り上げてくれました。


ボランティアはみんな笑顔で活動し、自分たち自身が大会を楽しんでいる雰囲気にあふれていた ©Haruo Wanibe/PK

個人的にもたくさんのボランティアスタッフと話す機会がありましたが、皆口々に「この素晴らしい経験をする機会を与えてくれてありがとう」と言ってくれました。しかしお礼を言うのはこちらのほうなのです。運営側の予想をはるかに上回り、最高の雰囲気を作り上げてくれました。私もこの経験を一生涯忘れることがないでしょう。

ーー実際に活動したボランティアたちからの反応、参加選手たちからのボランティアに対する反応で、どんなことが心に残っていますか?

アレクサンドル:選手たちはみんな異口同音に、ボランティアたちの献身や日々のサポート、その笑顔に支えられたと言ってくれました。

ボランティアたちとのやりとりでは、とても印象深い言葉があります。大会終了後に、ボランティアプログラムに関する動画を制作したのですが、その動画を締めくくってくれたあるボランティアの女性の言葉をそのまま引用しましょう。

「ボランティアの仲間たちへ。私は皆さんのことはよく知りませんが、皆さんのことが大好きです。そしてこの愛は生涯消えることはないでしょう。私たちは大会のボランティアとして忘れがたい貴重な経験をし、それを共有しました」

この言葉はとても深く私の心に残りました。ボランティアたちはそれぞれ異なる場所から集まり、知らない者同士が1つの目標に向かって力を合わせました。その経験と得られた絆は何にも変えがたく、まさに我々がこのボランティアプログラムを通じて作り上げたかったものだからです。


©Haruo Wanibe/PK

白熱する競技の合間で、モップをかけてコートの状態を整えるボランティア。彼らの活動なしでは選手たちの活躍の舞台は成り立たない ©Haruo Wanibe/PK

ーーパリ2024大会ボランティア活動は、フランスにどんなインパクトを残したのでしょうか。パリ2024大会ボランティアのレガシーは何だと思いますか?

アレクサンドル:まず1つ目は、このオリンピック・パラリンピックを盛り上げてくれたということでしょう。大会期間中、選手、観客、すべての人々が幸せな祝祭の中にいて、まるで時が永遠に止まったかのようでした。ボランティアたちは人々を笑顔にし、忘れがたい思い出を残してくれました。
2つ目は先ほどお話ししたように、今回の参加者たちが、この先もボランティア活動を続けていきたいと思っているということです。加えて、今回は応募しなかった人々も、大会を見てボランティア活動を前向きにとらえ、今度は自分も挑戦しようという気持ちになっているはずです。

今回のボランティアプログラムはその多様性を示し、そしてそれがうまくいくことを十分に証明しました。異なる国や文化、年齢、社会のカテゴリーなど違いがある人々が集まって、それぞれの役目に邁進し、力を合わせて大会を成功に導きました。
ボランティアで培われた経験がさらに意味を持つようにと考えて、国やパートナー企業と協力しながら、パリ大会のボランティアに参加したことを証明するデジタルのバッジ(証明書)を全員に発行しました。ほかのボランティア応募や、将来の就職活動などでのアピールにつながるでしょうし、彼らの高い能力を、ほかでも活かしてほしい、未来につなげてほしいと考えています。


パンフレットなどの配布ブースで活動するボランティア。ここで接した子どもたちの体験が、未来につながっていくはずだ

「DNA」と例えるほど、ボランティア文化が根付いているフランス。パリ大会ではフランス国内に留まらず150カ国から参加者が集まり、ボランティア活動における出会い、仲間との一体感、エネルギー、絆、といった生涯忘れない貴重な体験を得たことが、アレクサンドルさんの言葉からも伝わってくる。社会を支え、また人生にかけがえのないものをもたらすボランティア。フランスでこれからどのように盛り上がっていくのか、同じくオリンピック・パラリンピックを経験した日本からも注目したいところだ。今大会のようなストーリーが伝播するにつれて、日本国内でも今後ますますボランティアが盛り上がりを見せていくのではないだろうか。

text by Yuka Miyakata(Parasapo Lab)
photo by Haruo Wanibe